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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

多種類薬剤を処方された患者への指導管理を調剤報酬で評価すべきか、減薬への取り組みをどう評価するか―中医協総会(3)

2021.10.26.(火)

6種類以上の多数薬剤が処方された場合、薬局では相互作用の確認や患者の生活環境を絡めて「処方内容の適正性」を確認し、患者に時間をかけて服用指導などを行う。こうした点を【薬剤服用歴管理指導料】の引き上げなどで勘案していくべきであろうか。それとも、「薬剤種類数が多い場合の評価」は、ポリファーマシー対策などと方向が異なると考えるべきか―。

あわせて6種類以上の内用薬が処方された患者について、薬局が減薬の提案を医療機関に対して行うことを評価する【服用薬剤調整支援料2】と、提案の結果2種類以上の減薬に結びついた成果を評価する【服用薬剤調整支援料1】とがあるが、両者の算定状況は分離し、「提案しか行わない薬局」と「提案し、減薬に力を入れる薬局」とに分かれてしまっている現状がある。これをどう改善していくべきか―。

10月22日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった議論も行われました。

医療的ケア児・在宅小児患者への薬学的管理をどう調剤報酬で評価すべきか

2022年度の次期診療報酬改定に向け、中医協論議は、この10月から個別・具体的な第2ラウンドに入っています。

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10月22日の中医協総会では、▼がん対策難病・てんかん対策▼アレルギー疾患対策▼調剤―を議題となっており、本稿では「調剤」報酬改革に焦点を合わせます。

調剤報酬改革に関しては、「対物業務から対人業務へのシフト」「ポリファーマシー対策」などをどう調剤報酬で進めるべきかという議論が7月14日の中医協総会で「調剤その1」として行われています。ここでの議論・意見を受け、厚生労働省保険局医療課の紀平哲也薬剤管理官は次のような論点を提示しました。

【かかりつけ薬剤師・薬局の推進】
(1)薬剤種類数が多い場合には「服薬指導の事項が増え内容が複雑になり、説明時間が長くなる」(6種類未満の場合:薬剤情報提供・服薬指導の平均所要時間は1回当たり5.1分、薬歴作成の平均所要時間は3.9分だが、6種類以上ではそれぞれ9.0分・6.3分)ことを踏まえ、【薬剤服用歴管理指導料】の評価をどう考えるか

(2)「薬剤情報の一元的な把握による薬学的管理」の評価をどう考えるか

【重複投薬、ポリファーマシー、残薬等への対応】
(3)保険薬局における重複投薬の解消を推進する観点から、【服用薬剤調整支援料】の在り方につい て、どのように考えるか(6種類以上の内用薬が処方されているケースについて、薬局が減薬を提案し2種類以上減薬が実現した場合の評価である【服用薬剤調整支援料1】(125点)と、6種類以上の内容薬が処方されている患者に対し薬剤の一元管理・重複薬等解消の提案を行うことを評価する【服用薬剤調整支援料2】とがあるが、両者の算定状況は分離してしまっている(両者を合わせて算定している薬局は極めて限定的)

【保険薬局と保険医療機関との連携】
(4)調剤後のフォローアップにより患者の状況等を把握し、保険医療機関に情報提供を行った場合の評価をどう考えるか(インスリン製剤等を調剤した患者に対する事後フォローを評価する【調剤後薬剤管理指導加算】(【薬剤服用歴管理指導料】の加算、月1回30点)、喘息等の吸入薬を調剤した患者に対する事後フォローを評価する【吸入薬指導加算】(同、3か月の1回30点)、抗がん剤等を調剤した患者に対する事後フォローを評価する【特定薬剤管理指導加算2】(同、月1回100点)が設けられているが、医療機関→薬局への事後フォロー指示はそれほど多くない。算定要件のハードルを指摘する声もある)

インスリン製剤を調剤した患者のフォローを評価する調剤後薬剤管理指導加算の概要(中医協総会(3)5 211022)

喘息吸入薬を調剤した患者のフォローを評価する吸入薬指導加算の概要(中医協総会(3)6 211022)

インスリン製剤・喘息吸入薬を処方した患者について、薬局に調剤後のフォローを指示するケースは少ない(中医協総会(3)7 211022)

抗がん剤調剤後の患者フォローを評価する特定薬剤管理指導加算2の概要(中医協総会(3)8 211022)

抗がん剤調剤後の患者をフォローする特定薬剤管理指導加算2のハードル(中医協総会(3)9 211022)



(5)入院患者が退院した後の薬剤使用に関する留意点などを、薬局薬剤師・入院医療機関の医師や看護師などと共同して患者に説明することを評価する【退院時共同指導料】について、薬局での算定状況が芳しくない(2020年6月審査分では91回、前年同月でも164回にとどまる)を踏まえ、現行の算定要件等をどう考えるか(共同カンファレンスへの参加を薬局が希望するケースは一定程度あるが、実際の参加はごくわずかにとどまっており、例えばオンラインカンファレンスをより柔軟に実施可能できないか)

薬局による退院時共同指導料の算定回数は低調である(中医協総会(3)10 211022)



(6)保険医療機関と保険薬局の連携を強化し、より質の高い医療を提供する観点から、入退院時における保険医療機関と保険薬局の取組の評価をどう考えるか(例えば入院医療機関から、患者のかかりつけ薬局に対して「持参薬の一元的管理」「重複薬の有無などの確認」などを依頼することを評価できないか)

【医療的ケア児の薬学的管理】
(7)医療的ケア児等については、調剤を行う上での薬学的管理に考慮が必要な事項が多く内容が複雑である(調剤の平均所要時間は通常12.4分であるところ、医療的ケア児に対する調剤では137.4分もかかっている)ことを踏まえ、小児患者(医療的ケア児を含め、在宅療養する小児患者)に対する薬学的管理指導の評価についてどう考えるか

【在宅患者訪問薬剤管理指導に係る評価】
(8)在宅患者に対して、当該患者の在宅療養を担う医師と連携した他の医療機関の医師の指示に基づき訪問薬剤管理指導を実施した場合の評価をどう考えるか(在宅患者訪問薬剤管理指導料の届出薬局のうち約36.9%で、在宅医療担当医「以外」の医師による指示で訪問薬剤指導が行われている)

在宅患者訪問薬剤管理指導料を届け出ている薬局の36.9%が在宅担当医「以外」からの指示で訪問薬剤管理指導を行っている(中医協総会(3)12 211022)



このうち(1)は、端的に「薬剤種類数が多い場合には【薬剤服用歴管理指導料】の評価を引き上げてはどうか」という論点と言えます。薬剤師代表として参画する有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は「薬剤種類数が多い場合、相互作用の確認はもちろん、患者の状態や生活環境を勘案して適正な処方内容であるかなどを勘案するなど、保険薬局(調剤薬局)の労力が大きくなる」ことを訴え、評価引き上げを求めています。

多種類薬剤が処方される患者では、指導等に時間がかかる(中医協総会(3)1 211022)



しかし、診療・支払を問わず他の多くの委員からは、「薬剤種類数が増えても、多くの場合には反復継続した処方・調剤であり(いわゆるDo処方)であり手間はそれほどかかっていると思えない」「多剤投与の抑制という方針に逆行する」として、「薬剤種類数が多い場合には【薬剤服用歴管理指導料】の評価を引き上げる」方向には慎重な意見が示されています。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)からは「真面目に業務に携わっている薬剤師であれば、この見直し方向には反対するであろう」旨の厳しいコメントまで出ています。



また(3)の【服用薬剤調整支援料】に関しては、支援料2で「重複解消に向けた提案」を促し、さらに支援料1で「減薬の実現」というアウトカムを評価していることから、「セットでの算定向上→減薬の実現」が期待されていますが、上述のように、実際には「分離してしまっている」、つまり「提案のみしか行わない薬局と、減薬の実現に力を入れる薬局」とに分かれてしまっています。有澤委員は「支援料1と支援料2を整理する」ことで、減薬実現に向けた動きが進むことを期待しています。

この点、支払側の幸野委員や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「オンライン資格確認等システムの稼働と関連して、この10月(2020年10月)から『薬剤履歴の確認』が全国の医療機関・薬局、さらに患者本人において可能となっていることを踏まえ、重複薬解消に向けた評価も見直すべきである」との考えが示されました。しかし、「確認可能なのはこの9月(2020年9月)以降に処方された薬剤に限定される」こと(過去の長期投薬がなされていてもその薬剤は確認できない)、「レセプトデータがベースとなるので、確認可能となるのは最長1か月後となる」こと(重複投薬を事前に防止することは事実上困難)などの限界もあり「重複投薬の防止に向け、薬剤師の力が必要な状況は変わっていない」点に留意しなければなりません。

減薬提案のみ行う薬局と、減薬実現に力を入れる薬局とに分離してしまっている(中医協総会(3)2 211022)

減薬の実現を評価する服用薬剤調整支援料1の概要(中医協総会(3)3 211022)

減薬提案を評価する服用薬剤調整支援料2の概要(中医協総会(3)4 211022)



また診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、(5)の退院時共同指導への薬局参画に関して「退院時に、薬局を含めて情報連携すべきか否かはケースバイケースである。例えば、退院後の患者について在宅医療(訪問診療)を担当する医師が院内調剤をすることもありうる」と、また(6)の入院時の連携に関して「まずは薬局から入院医療機関に対して、当該患者の服用薬剤等に関する情報提供を行うことが筋であろう」と述べ、新たな評価には慎重な姿勢を見せています。



他方、(7)の医療的ケア児・在宅療養する小児に対する薬学的管理指導の評価については、診療側の城守委員、支払側の幸野委員が「手間のかかることは理解できる(評価の引き上げには反対しない)。しかしどちらかといえば『対物業務』の側面が強く、評価手法を検討する必要がある」との考えを示しています。

医療的ケア児への調剤には非常に多くの時間がかかる(中医協総会(3)11 211022)



委員間で意見の乖離が少なからずあり、さらに議論を重ねて改定内容を詰めていくことが必要でしょう。



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