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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

2020年度診療報酬改定「基本方針」論議始まる、病院薬剤師の評価求める声多数―社保審・医療部会

2019.9.20.(金)

 2020年度の次期診療報酬改定に向けて、社会保障審議会で「基本方針」の検討が始まりました。

 9月19日には社会保障審議会の医療部会において、かなり具体的な意見の応酬が行われており、例えば「病院薬剤師(医療機関に勤務する薬剤師)の評価充実」を求める声が多数出る一方で、「医療保険制度の持続可能性確保」を強く求める意見も出ています。

9月19日に開催された、「第68回 社会補保障審議会 医療部会」

 

基本方針を社保審で、改定率を内閣で、改定内容を中医協で議論

 2020年度の次期診療報酬改定に向けた議論が中央社会保険医療協議会(中医協)で進んでいます(関連記事はこちらこちらこちら)。ところで、かつて中医協を舞台にした汚職事件が生じた(背景には、中医協の所掌範囲・権限があまりに大きくなり過ぎたことが指摘されている)ことへの反省を踏まえ、2006年度の診療報酬改定から、▼改定の基本方針は社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率は内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中医協で改定内容を詰める―という役割分担が行われています。

 
 厚生労働省保険局医療介護連携政策課の山下護課長は、9月19日に開催された社会保障審議会・医療部会に「2020年度診療報酬改定の基本方針」策定論議を始めることを要請しました。近く社会保障審議会・医療保険部会にも基本方針策定論議開始を要請します(9月27日予定)。

 山下医療介護連携政策課長は、まず2020年度改定を論議する際の「基本認識」として、例えば▼健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現(社会保障制度の持続可能性の確保など)▼医師等の働き方改革の推進(医療従事者の業務負担の軽減や医療資源の効率的な配分など)▼患者・国民に身近な医療の実現(かかりつけ医機能の充実、患者への情報提供や相談・支援の充実など)―が考えられるのではないかと指摘。

 
 さらに、こうしたテーマを実現するために、例えば▼医療機関内における適切なマネジメントやタスク・シフティングの推進▼かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価▼アウトカムに着目した評価の推進▼質の高いがん医療の評価▼地域によって異なる状況を踏まえた病床機能の分化・連携の推進、入院医療の評価▼残薬や重複投薬、薬剤耐性(AMR)、ポリファーマシーへの対応や長期処方時の適正使用等―などを診療報酬で推し進めることが考えられるのではないか、との考えを示しました。

 
 もちろんこれらは「例示」「たたき台」であり、今後の議論を踏まえて、具体的に「重点評価項目」を固めていくことになります。

 こうした「例示」に対し、医療部会委員からはさまざまな意見が出されました。

 その中で特に多かったのが「医療機関に勤務する薬剤師の業務への評価」を求める声です。今村聡委員(日本医師会副会長)や加納繁照委員(日本医療法人協会会長)、小熊豊委員(全国自治体病院協議会会長)ら医療提供者を代表する委員はもちろん、患者・一般国民代表という立場で参画する山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)もこの点を重視した診療報酬改定を行うよう強く要請しました。

 小熊委員は「病院では薬剤師確保に非常に苦労している。薬剤師に聞けば『調剤薬局のほうが、業務も楽で、給与も良い』との答えが返ってくる」と医療現場の実情を紹介。また、加納委員は「自院では院内調剤に変えたところ患者から、『院外処方に比べて早いし、便利で、なおかつ自己負担も安い』と好評である。高齢化が進展する中では、わざわざ院外の薬局に行かなければならない、という仕組みは考え直すべき」と述べ、処方料・処方箋料・調剤報酬の抜本的な見直しが必要であるとの考えを強調しました。

 調剤薬局にとって「非常に厳しい」環境であると考えるべきでしょう。

 
 また、河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)や井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)といった、言わば費用負担者を代表する委員(中医協で言えば支払側)からは「医療保険制度の持続可能性を確保するという視点での診療報酬改定」を強く求める意見が出されました。

河本委員は、「いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめる(つまり医療ニーズが急速に増加していく)2022年に向けて、2020年度の診療報酬改定は非常に重要である。大項目として『持続可能性の確保』を打ち出すべきである」と強調しています。

なお、この点に関連して、2020年度診療報酬改定では、これまでと異なる視点に立つ必要のあることを山下医療介護連携政策課長は指摘しています。少なくとも2012・14・16・18年度の診療報酬改定では、「団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年度」を1つのターゲットとしてきました。後期高齢者の急増に伴い、医療ニーズも急速に増加することから、医療提供体制の見直し(例えば病院・病床の機能分化と連携の推進)、地域包括ケアシステムの構築を診療報酬で下支えしていくことが重要な視点となっていたのです。

もちろん、医療提供体制の見直し・地域包括ケアシステムの構築は「完了」はしておらず、今後もこの視点が重要であることは述べるまでもありません。ただし、厚労省の試算によれば、2025年度以降、2040年にかけて「高齢化のスピードは鈍化していく」一方で、「高齢者を支える若人(現役世代)人口が急速に減少していく」ことが分かっています。これは医療保険制度・医療提供体制をはじめとする社会保障制度全般が「脆くなっていく」ことを意味します。このため「給付と負担の見直し」による保険制度の持続可能性確保はもちろん、少ないマンパワーで効果的な医療サービス提供をしなければなりません。

これを診療報酬面でどう進めていくかも極めて重要な視点となってくるのです。さらに、地域によって「高齢者の増加状況」「若人の減少状況」は大きくことなり、こうした点をどう考えるか(診療報酬は基本的に全国一律)も非常に重要な検討課題となっていきます。この点に関連して小熊委員は「現在の仕組みが続けば、地域の医療提供体制が破綻する。医療提供体制の持続可能性も考える必要がある」とコメントしています。

 
また、学識者である松原由美委員(早稲田大学人間科学学術院准教授)は、「医療機関等がやるべきことを実施した場合に『加算』などで評価される仕組みには従前から大きな違和感を覚えている。『やるべきことを実施する』ことを求めるシンプルな報酬体系を目指すとともに、『やるべきことを実施しない』場合には減算で対応するべきではないか」との考えを示しています。もちろん、現行診療報酬でもこうした考えは導入されており、その拡大を求める声が強くなってきている点はしっかりと受け止める必要がありそうです。

 
なお、中医協委員でもある猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は「通常、12月初旬に基本方針が策定されるが、その頃には中医協論議は相当煮詰まってきている。せめて9月下旬には基本方針を策定すべきではないか」との考えを示しました。上述のように基本方針策定は「あまりに大きくなり過ぎた中医協の権限を分散する」狙いがありますが、最近では「形骸化が著しい」との批判もあります。猪口委員の指摘は、こうした批判をも踏まえたもので、重く受け止めるべきでしょう。

地域医療構想・医師の働き方改革で、地域医療が崩壊しないような工夫を

9月19日の医療部会では、▼医師の働き方改革▼地域医療構想の実現▼特定機能病院・地域医療支援病院の指定要件見直し―に関する現状報告も行われました。

このうち地域医療構想の実現に向けては、まず「公立病院・公的病院等を対象に、診療実績を踏まえた分析を行い、▼診療実績の特に少ない病院▼診療実績の類似する病院が近接している病院―について、機能分化なども含めた広い意味での再編統合を議論し、来秋(2020年秋)までに一定の合意を得る」方向が固められています。

この点について遠藤直幸委員(全国町村会、山形県山辺町長)は「地域医療構想の推進・実現によって、地域医療の提供体制に悪影響が出ないように配慮してほしい」「再編統合の対象となった病院では、医師や看護師が離れていってしまう(退職してしまう)。病院名の公表等については特段の配慮する必要がある」と厚労省に要請しています。

 
また働き方改革に関して小熊委員は「自治体病院を対象にしたアンケート調査では、例えば勤務間インターバルの確保などが極めて難しいとの回答が数多く出ている。働き方改革を実現するには、『医師不足・偏在の解消』『地域医療構想の実現』『住民への医療機関のかかり方見直しに対する協力依頼』などをセットで進めなければならない」と訴えています。

相澤孝夫委員(日本病院会会長)も「働き方改革については、一気呵成に進めるのではなく、地域医療の状況などを1つ1つ確認し、一歩一歩進めていく必要がある」との考えを強調しています。

医師の働き方改革は、個別医療機関での取り組みには限界があり(もちろん、まずこれを進めなければならない)、地域の医療関係者はもちろん、自治体・住民も知恵を出し合い、協力しあいながら進めることが必要です。

 
 
 

 

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