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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

点数が「DPC<地域包括ケア」時点にDPC病棟からの転棟が集中、健全なのか―入院医療分科会(1)

2019.7.25.(木)

 DPC病棟から地域包括ケア病棟への転棟時期を見ると、点数が「DPC病棟<地域包括ケア病棟」となった時点に集中していることが分かった。今後、「病院ごとに転棟症例の違いがどのようになっているのか」を詳しく分析していく―。

 7月25日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で、こういった点に関する報告が行われました。

7月25日に開催された、「2019年度 第5回 入院医療等の調査・評価分科会」

7月25日に開催された、「2019年度 第5回 入院医療等の調査・評価分科会」

 

点数が「DPC<地域包括ケア」となった時点での転棟は健全な姿か

 診療報酬改定の内容は、最終的には「中央社会保険医療協議会・総会」で決定されます。ただし、その内容は非常に広範なため、分野を絞った調査・分析、技術的課題の整理などを下部組織で行い、それを踏まえて中医協・総会で具体的な改定議論を行うことになっています。

入院医療分科会では、2020年度の次期診療報酬改定に向けて「入院医療」と「DPC制度改革」に関する技術的課題の整理を行っています(従前の入院医療分科会とDPC評価分科会を統合)。さらに、入院医療分科会の下に(1)診療情報・指標等作業グループ(2)DPC/PDPS等作業グループ―の2つのグループを設け、そこで専門的な調査・分析を行うことになっています。

7月25日の入院医療分科会では、▼DPC/PDPS等作業グループにおける議論の状況報告▼2018年度診療報酬改定の影響に関する調査・課題等の整理(地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟など)―を議題としました。

ここでは「DPC/PDPS等作業グループにおける議論の状況報告」に焦点を合わせ、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーションについては別稿でお伝えします。

DPC/PDPS(以下、DPC)については、主に(1)DPC病院の規模とDPC病床割合(2)医療資源投入量が著しく低い・平均在院日数が著しく長い病院の取り扱い(3)DPC対象病棟からの転棟(4)医療の質の確保―の3点について作業グループにおける議論の状況が報告されました。

順番が変わりますが、まず(3)の「DPC対象病棟からの転棟」について見てみましょう。

例えば「胸椎、腰椎以下骨折損傷 (胸・腰髄損傷を含) 手術なし」(160690xx)症例について、DPC病棟に入棟してから何日後に地域包括ケア病棟へ転棟しているのかを見ると、「入院9日目」の転棟が突出して多くなっています。
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この背景には、「DPC点数」と「地域包括ケア病棟入院料の点数」との関係があるようです。DPCでは、診断群分類ごとに、入院期間に応じた3区分の点数が設定されています(在院日数の短い上位25%までの「期間I」、平均までの「期間II」、平均+2SDまでの「期間III」、以降は出来高となる)。「胸椎、腰椎以下骨折損傷 (胸・腰髄損傷を含) 手術なし」(160690xx)については、「期間I」は8日とされ3014点が算定できますが、9日目以降の「期間II」は2271点に算定可能点数が下がってしまいます。

一方、地域包括ケア病棟入院料の点数を見ると、入院から14日までは「入院料2」(DPCでは大規模な急性期病院が多く、入院料2を届け出る病院が多い)では2708点(初期加算150点を含む)、また「入院料1」(200床未満で在宅患者受け入れ割合などの高い病棟)では2888点を算定できます。

このため「点数の下がる(DPC<地域包括ケアとなる)9日目にDPC病棟から地域包括ケア病棟に転棟させる」ケースが多いのではないか、と推測されるのです。

こうした転棟は「病院経営的には理解できる」ものの、「患者の状態にマッチした病棟での入院」という観点では疑問が生じます。病棟の機能分化・診療報酬の設定という観点からすれば、「急性期病棟での濃厚な治療の必要性が薄くなり、地域包括ケア病棟での在宅復帰支援のほうが相応しい」として転棟することが望ましく、こうした転棟が「DPC入棟から9日後に集中する」とは考えにくいのです。

この点、かつての【亜急性期入院医療管理料】においても同様の問題が生じ、【地域包括ケア病棟】では、急性期後患者を受け入れる、いわゆる「post acute機能」以外にも、軽症の急性期患者を受け入れる「sub acute機能」や「在宅復帰支援機能」を併せ持つことが求められるに至りましたが、「点数のみに着目したDPC病棟からの転棟」は解消されていません。

作業グループからは、点数設定方法により「DPC病棟の入棟期間が長くなるケース」(DPCの期間Iが長い場合や、DPC期間IIの点数が高い場合など)、「DPC病棟の入棟期間が短くなるケース」(DPCの期間Iが短い場合や、DPC期間IIの点数が低い場合など)があるとし、今後、「病院ごと」に「DPC病棟から地域包括ケア病棟等に転棟する症例の違い」を詳しく分析していく方針が示されています。

医療資源投入量・在院日数のアウトライヤー病院、カバーする傷病などを詳しく分析

 また(2)は、2018年度の前回診療報酬改定で宿題とされた「医療資源投入量が著しく低い・平均在院日数が著しく長い病院」についてDPCからの退出も考えてはどうかというテーマです。

 DPC制度では、データをもとに点数や係数を設定します。例えば、DPC点数は、同じ診断群の症例について、どれだけの医療資源を投入したか(入院日数はどの程度か、検査をどの程度行ったか、医薬品等の投与量はどうであったか、など)を見て設定します。このため、仮に「不適切に医療資源投入量が著しく少ない」ケースが混入すると、DPC点数は低くなり、DPC病院全体で「収益が下がり、投入したコストを回収できない」状況も起こりえます。一方、「医療資源投入量が少ない病院」では、点数と実際の資源投入量との差が「純益」になるため、他病院との間で不公平も生じかねません。

この点、作業グループでは、(a)医療資源【大】・在院日数【長】(b)医療資源【大】・在院日数【短】(c)医療資源【小】・在院日数【長】(d)医療資源【小】・在院日数【短】―という4つの、言わば「アウトライヤー病院」について、「どういった病院が該当し、どういった診療行為が行われているのか」などを詳しく見ていく方針を固めています。
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例えば(d)の医療資源【小】・在院日数【短】には、単科の専門病院が多く該当します。ただし、単科の専門病院と一口に言ってもさまざまであり、▼カバーしている傷病の種類 はどのようなものか▼入院の必要性が低い手術を多く行っているなど、在院日数が短くなる要因はないのか―などを詳しく見ていくことになります。例えば、「『白内障手術症例』を集中的に取り扱う眼科の専門病院」であるのか、「『心筋梗塞』のうち超急性期症例のみを取り扱う心臓血管外科の専門病院であるのか」などを分析していくイメージでしょう。

詳しい分析の後に、宿題となっている「DPCからの退出」ルール等を設ける必要があるのか?設ける必要があったとして、どういった仕組みとするのか?などを検討していくことになります。

DPC病床が少なく、DPC病床割合が小さいDPC病院が2009年度から増加

 一方(1)は、今春の入院医療分科会で示された「DPC病院の中には、DPC病床の割合が小さいケアミクス病院もあるが、これをどう考えるか」というテーマです(関連記事はこちら)。

 DPC病院の状況を眺めると、2009年度から▼DPC病床が200床未満のDPC病院が増加している(2018年度には800病院近い)▼許可病床数に占めるDPC病床数の割合が50%未満のDPC病院が増加している(2018年度には200病院超)―ことが分かります。
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 作業グループでは、こうした病院の特性(例えば単科の専門病院であるのか、など)を詳しく分析していくことになっています。

 ちなみに、DPC病院における単科の専門病院の状況を見ると、▼1つのMDCが70%以上の病院(例えば眼科系疾患症例が全症例の70%以上)は100病院▼うち80%以上の病院は66病院▼うち90%以上の病院は40病院▼うち100%の病院は21病院―あります。これらが、直ちに「DPC制度に馴染まない」とするものではなく、まず、こうした病院の状況を詳しく分析し、その分析結果を踏まえて「DPCへの参加継続が望ましいのか否か」「仮に望ましくないとされたとして、新たなDPCの参加要件をどう考えるのか」という順で議論されます。
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 作業グループにも参画する井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)は「現時点では、良し悪しの議論はしていない。まず現状をデータをもって可視化している段階である」と報告しています。

「医療の質」をDPC病院の要件に加えるべきか、作業グループでは慎重論

 また(4)は、DPC病院において「医療の質」に関する要件を設定すべきか否かというテーマです。「医療の質」向上は、すべての医療機関に求められるテーマで、とくに急性期医療の大部分を占めるDPCでは「非常に重要な命題」の1つと言えます。

 現在でもDPCデータから「医療の質」に関連の深いデータを抽出することができます。例えば、「急性心筋梗塞で病院に搬送され、到着してから90分以内にPCIが実施された症例の割合」を見ると、100%からゼロ%までさまざまに分布しています。迅速なPCIが予後に大きく関連するため、多くの症例に「90分以内のPCI実施」がなされることが期待されます。
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 また「耐性菌対策」が重視される中で、「術後24時間以内に『予防的』抗菌薬投与を停止した割合」を見ると、100%の病院もあれば、60%台にとどまっている病院もあります。漫然とした抗菌薬投与は「耐性菌」発現の確率を高めてしまうため、適切な管理が求められます。
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 さらに市中肺炎症例の重症度を見てみると、入院の必要性の低い「中等症以下」の症例割合が10%を超える(中には20%超)病院もあります。入院治療の必要性の低い患者を入院させれば、▼院内感染▼ADL低下▼認知機能低下―などのリスクが高まってしまいます。
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こうした「医療の質」をDPC病院の要件に定めるべきか否かについては議論のあるところです。これらを要件化すれば、急性心筋梗塞に迅速にPCIが行われ、また不要な入院は減少していいくでしょう。ただし、作業グループでは「有用な指標もあるが、指標で評価できる診療内容が限定的であることなど課題もある。DPC対象病院の要件に適用することは慎重に検討する必要がある」という意見が出ていることが報告されました。今後、作業グループで更なる分析を進めていくことになります。

 
 
 
 なお7月25日の入院医療分科会では、2020年度の次期診療報酬改定に向けて▼新たなDPC準備病院の募集期間を「2019年9月1日から同年9月30日」とする▼既存のDPC準備病院からDPC対象病院への参加申請期間を「2019年9月1日から同年9月30日」とし、移行時期は2020年4月1日とする―ことが了承されています。

   
 
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