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CT・MRIの共同利用、医療被曝防止に向けたガイドライン活用などを診療報酬でどう進めるか―中医協総会(2)

2019.6.26.(水)

 お伝えしているように、6月26日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、2020年度の次期診療報酬改定に向けた「総論」として、▼医薬品▼医療機器―の効率的かつ有効・安全な使用等をテーマに議論を行いました。

本稿では「医療機器の効率的かつ有効・安全な使用等」に焦点を合わせます。CTやMRIなどの高額医療機器の「共同使用」を診療報酬でどう促進していくかなどが論点となっています。

6月26日に開催された、「第417回 中央社会保険医療協議会 総会」

6月26日に開催された、「第417回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

CT・MRIなどの高額医療機器、共同利用を診療報酬でどう推進すべきか

医療提供体制改革(地域医療構想の実現、医師の働き方改革、医師偏在対策を三位一体で進める)の一環として「高額医療機器の適正使用」が重要テーマの1つに据えられています。

医師偏在対策を議論していた「医師需給分科会」と、地域医療構想の実現に向けて鋭意議論を進めている「地域医療構想に関するワーキンググループ」では、「CTやMRI、ポジトロン断層撮影(PET)などの高額機器の共同利用を推進する」との厚生労働省方針を踏まえ、次のような方針を固めました(関連記事はこちら)。

▽高額医療機器の配置状況を可視化する指標(地域の性・年齢構成を調整した「人口あたり台数」)を設定する

▽国が、「医療機器ごと・地域ごとの高額医療機器の必要台数」(ニーズを踏まえた調整人口当たりの高額医療機器の台数)情報を提供するとともに、医療機器を有する医療機関をマッピング(地図情報として可視化)する。また共同利用(紹介も含む)状況などについても、国から情報提供する

▽医療機器それぞれについて、購入にあたって「当該機器の共同利用計画(紹介を含む)」を作成し、定期的に協議の場(地域医療構想調整会議など)で確認する
地域医療構想ワーキング(2)の5 190130
 
また、この4月(2019年4月)から「医療用機器の効率的配置の促進に向けた特別償却制度」(2019年度税制改正)が設けられ、▼一定の稼働率確保(買い替えの場合)▼共同利用(新規購入の場合)▼地域医療構想調整会議等での確認―を条件としてCT・MRI購入額の12%が特別償却できることになりました(関連記事はこちら)。

高額医療機器の共同利用・効率的利用の推進に向けて、いわば「飴(後者)と鞭(前者)」を設けた格好ですが、その背景には「我が国では人口あたりの▼CTやMRIの設置台数▼CTやMRIの検査数―は諸外国と比較して多いものの、機器1台当たりの検査数は少なく、中には1か月あたり検査数がゼロ件の医療機関もある」とのデータがあります。言わば「CT・MRIの活用が極めて非効率なのではないか」との問題意識です。
中医協総会(2)1 190626

中医協総会(2)2 190626

人口当たりCT等台数が多い地域では、1台当たりの検査数が少なく、「非効率な利用」となっている可能性が高い

人口当たりCT等台数が多い地域では、1台当たりの検査数が少なく、「非効率な利用」となっている可能性が高い

 
さらに、診療報酬でもCT・MRIの共同利用を促進するために、例えば2016年度の診療報酬改定で、【コンピューター断層撮影装置(CT撮影)】や【磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)】について、「共同利用施設で行う場合」を高く評価する(MRIであれば、「3テスラ以上の機器」を用いる場合、通常であれば1600点のところ、共同利用施設で実施した場合には1620点を算定できる)などの手当てが行われました。
中医協総会(2)3 190626
 
このような「共同利用」推進策にもかかわらず、厚生労働科学研究によれば、2018年9月にCT・MRIの共同利用を行った医療機関はわずか6%で、9割超が共同利用を行っておらず、さらに共同利用を行っていない医療機関の半数近くが「今後も共同利用を行う意思はない」と考えていることが分かりました。
中医協総会(2)4 190626
 
こうした状況を踏まえ、厚労省保険局医療課の古元重和企画官は、2020年度の次期診療報酬改定において「医療機器の効率的な利 用をさらに推進する観点から、どのような対応が考えられるか」との論点を提示しました。

上述の厚生労働科学研究では、「共同利用施設での高い報酬算定のための要件(施設基準など)を満たしていない」(例えばMRIであれば3 テスラ以上の機器を保有していない)いないことが、共同利用を阻む1つの障壁となっていることが伺えます。この点を単純に踏まえれば、「共同利用施設における高い報酬」の要件を緩和することなどが1つの方策として考えられそうです。

しかし、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「点数にメリハリをつける」ことを提案しています。共同利用の撮影料を高くし(支払側の主張ゆえ、点数を維持する)、単独利用の撮影料を思いきり引き下げる、ことが考えられそうです。

これに対し診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は、「救急医療や急性期医療の現場では、例えば脳梗塞の疑いのある患者などが搬送されてきた場合など、自施設でCTやMRI撮影を実施し、病変を確認しなければならない。こうした『動かせない』患者へ対応するために、自施設でCTやMRIを保有しておくことの重要性・必要性を十分に考えて議論すべき」と訴えています。

安易に「単独利用の撮影料を思いきり引き下げる」などの対応をとれば、救急医療をはじめとする急性期医療の現場が疲弊してしまいます。これでは医療の質が担保されず、国民が不利益を被ってしまいます。点数設定による誘導は非常に重要ですが、その影響も十分に勘案することが必要です。

医療被曝防止に向けた学会ガイドラインの活用、高度な超音波検査をどう進めるか

また、古元企画官は医療機器の安全かつ適切な使用に向けて、次のような論点も提示しています。

▽我が国では医療被曝(とくにCT撮影)の線量が諸外国に比べて高いことを踏まえ、日本医学放射線学会による「小児の軽度頭部外傷で、頭蓋内損傷リスクが低い場合には(医療被曝のリスクを考慮し)CT撮影を推奨しない」とのガイドラインなどの活用をどう考えていくべきか
中医協総会(2)5 190626
 
▽簡便、低侵襲で、かつ診断に有用な「超音波検査」が高度化・多様化(3D画像での評価や血流の評価が可能な機器も登場している)している現状を踏まえ、評価の在り方をどう考えるか

後者については、例えば「高度な超音波検査実施について、医師・医療機関に一定の要件を課す」(施設基準の設定)ことなどが考えられそうです。

 

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