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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

遺伝子パネル検査の保険収載に向けた検討進む、C-CATへのデータ提出等を検査料の算定要件に―中医協総会(1)

2019.4.25.(木)

 遺伝子パネル検査が薬事承認され、近く保険収載に向けた検討を行うことになる。その際、「C-CAT(がんゲノム情報管理センター)へのデータ提出」を算定要件にするほか、コンパニオン検査(特定の抗がん剤等の適応を確認するための検査)としてパネル検査を実施する場合には、遺伝子パネル検査としての点数算定を認めないこととする―。

 4月24日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした方針が了承されました。今後、下部組織である保険医療材料等専門組織で、保険収載の要件を満たすかなどを詳しく検証し、中医協で保険収載の可否を判断します。時期は未確定ですが、近く遺伝子パネル検査が保険収載されることになります。

4月24日に開催された、「第413回 中央社会保険医療協議会 総会」

4月24日に開催された、「第413回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

C-CATのデータベース充実が、遺伝子パネル検査の精度向上に不可欠

 ゲノム(遺伝情報)解析技術が進み、「Aという遺伝子変異の生じたがん患者にはαという抗がん剤を、Bという遺伝子変異のある患者にはβとγという抗がん剤を併用投与することが効果的である」などといった情報が明らかになってきています。こうしたゲノム情報に基づいた最適な治療法の選択が可能になれば、個々のがん患者に対して「効果の低い治療法を避け、効果の高い、最適な治療法を優先的に実施する」ことが可能となり、▼治療成績の向上▼患者の経済的・身体的負担の軽減▼医療費の軽減―などにつながると期待されるのです。

 我が国においても、産学官が一体的となったコンソーシアム(共同事業体)を設け、「がんゲノム医療」の推進を目指しています。

 がんゲノム医療の大きな流れは、大きく次のように整理することができます(関連記事はこちら)。

(1)がんゲノム医療を希望する患者に対し、がんゲノム医療中核拠点病院等が十分な説明を行い、同意を得た上で、検体を採取する

(2)検体をもとに、衛生研究所などで「遺伝子情報」(塩基配列など)を分析し、「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT)に送付する

(3)がんゲノム医療中核拠点病院等は、あわせて患者の臨床情報(患者の年齢や性別、がんの種類、化学療法の内容と効果、有害事象の有無、病理検査情報など)をC-CATに送付する

(4)C-CATでは、保有するがんゲノム情報のデータベース(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験情報などの情報をがんゲノム医療中核拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)に返送する

(5)がんゲノム医療中核拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)において、当該患者に最適な治療法を選択し、これに基づいた医療をがんゲノム医療中核拠点病院等で提供する
がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議2 190308
中医協総会(1)4 190424
 
 このうち(1)(2)に関連し、「多数の遺伝子の変異の有無を一括して検出する検査」(遺伝子パネル検査)が開発されてきています。我が国においても▼先進医療B(保険診療と保険外診療(先進医療)との併用が可能)として国立がん研究センター中央病院(NCCオンコパネル、登録は終了)、東京大学医学部附属病院(Todai Onco Panel)、大阪大学医学部附属病院で遺伝子パネル検査を実施▼2種類の検査法(NCCオンコパネル、FoudationOne CDx)について、薬事・食品衛生審議会で有効性・安全性を確認(薬事承認)―という状況です(関連記事はこちらこちらこちら)。
中医協総会(1)3 190424
 
 後者の薬事承認された遺伝子パネル検査について、次のステップとして「保険収載」が考えられます。具体的には、保険収載の要件を満たすかを保険医療材料等専門組織で検討し、後に中医協で保険収載の可否を判断することになりますが、初めての検査技術であり、かつその内容は複雑なことから、具体的な検討を行う前に、中医協において次の2つの方向を確認しました。

(A)算定要件の設定
(B)コンパニオン検査として実施した場合の取り扱い

 
まず(A)では、保険診療の中で遺伝子パネル検査を実施する際には、▼C-CATへのデータ提出▼検査結果の患者への返却体制(CT画像等を患者の求めに応じて渡すように、遺伝子解析結果を患者の求めに応じて渡す体制、セカンドオピニオンなどの際に有用となると感がられ鵜)―を要件(算定要件等)とする方向が了承されました。

前述のように、がんゲノム医療は「個別患者の遺伝子情報・臨床情報をC-CATのデータベースに照らして最適な抗がん剤等を選択する」ものゆえ、データベースの拡充が極めて重要となります。データベースに格納されるデータが質・量ともに充実していけば、導かれる解(最適な抗がん剤等の候補)の精度が高まっていくと期待されるのです。このため、C-CATへのデータ提出(=データベースの拡充)を必須とすることで、保険診療の側面からデータベースの充実にアプローチしていくこととなったのです。中医協でも、診療側・支払側の双方から「C-CATデータベース(がんゲノム情報レポジトリー)の充実が重要である」点に異論は出ていません。

もっとも、遺伝子情報は極めて機微性が高いため、患者自身が「データ提出」や「データの2次利用」(がん研究等に自身のデータを活用すること)を拒むことも考えられます。この場合、結果としてC-CATへのデータ提出等はできなくなりますが、保険請求は可能になる見込みです。詳細については、今後、保険医療材料等専門組織で詰められます。

 なお、遺伝子パネル検査は、比較的高額な検査料が設定されると見込まれることから、対象患者の限定を求める声も支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)らから出ています。▼日本臨床腫瘍学会▼日本癌治療学会▼日本癌学会―の合同ガイダンスでは、後述するように「標準治療終了後の患者」を遺伝子パネル検査の主な対象に位置付けており、これらを参考に「対象患者」が設定されると見込まれます。

コンパニオン検査としてのパネル検査では、パネル検査の高点数算定は認めない

また(B)では、「特定の抗がん剤の効果を事前に予測するために遺伝子パネル検査を行った場合には、遺伝子パネル検査としての検査料は算定できない」という方向を確認しました。

前述の「大きな流れ」に示したとおり、がんゲノム医療は「患者の遺伝子情報・臨床情報をC-CATのデータベースに照らして、最適な治療法(抗がん剤等)を選択する」ものですが、C-CATで最終解を得るものでなく、C-CATからのレポート(いわば効果ありと考えられる抗がん剤候補)を「がんゲノム医療中核拠点病院」の専門家会議(エキスパートパネル)で解釈を行ったうえで最終解(最適な抗がん剤)を見出します。

現在、がんゲノム医療中核拠点病院は11か所整備され、今年度中(2019年度中)にがんゲノム医療拠点病院を30か所程度整備する予定で、いずれにもエキスパートパネルが設置されますが、そのキャパシティには限界があります(昨秋(2018年秋)時点では11中核拠点病院の合計で年間4000-5000症例程度)。

ところで、遺伝子パネル検査は、上述のように「多数の遺伝子の変異の有無を一括して検出する検査」ですが、中には「特定の抗がん剤の効果を事前に予測するための検査」として実施できるものもあります(いわゆるコンパニオン検査)。
中医協総会(1)1 190424
 
この点、遺伝子パネル検査には高額な点数が設定されると見込まれることから、「コンパニオン検査として実施した場合にも遺伝子パネル検査の点数を算定できる」とした場合、膨大な量の遺伝子パネル検査が行われ、すぐにエキスパートパネルのキャパシティを超えてしまうでしょう。さらに、真に遺伝子パネル検査が必要な「標準治療を終えたが、十分な成果が得られず、他の抗がん剤に一縷の望みをかけている」患者に、遺伝子パネル検査が行えない(行ったとしてもエキスパートパネルでの解釈がなされない)ことにもなりかねません。

そこで、中医協では「パネル検査機器を用いた場合でも、コンパニオン検査を目的とした検査では、パネル検査としての算定はできない」方針を固めました。

この方針にも中医協委員から異論は出ていません。なお、このように「コンパニオン検査として実施された遺伝子パネル検査」については、仮に遺伝子変異の解析結果が示されたとして、エキスパートパネルでの解釈を経ていません。こうした情報が患者に還元されれば「誤った解釈(必ずしも適切ではない抗がん剤等の選択がなされるなど)が生じてしまう」可能性もあることから、「患者への検査結果を返却しない」こととされました。複数の遺伝子検査を実施したとしても、コンパニオン検査部分のみが治療に結びつけられることになります。

 
この点、「コンパニオン検査としての遺伝子パネル検査に基づいて、標準治療(既存の抗がん剤など)を実施したが、十分な効果が得られなかった患者」が、「自分により効果のある抗がん剤治療」を求めて、再度のパネル検査を希望するケースが考えられそうです。しかし、すでに遺伝子パネル検査自体は実施されており、その検査結果は医療機関が保有しています。ここで、新たな遺伝子パネル検査を実施することは「重複」となることから、効率的な検査のために、検査料の算定も含めてどのようなルールを設けるべきかが、今後の論点となりそうです(同じ検査について、別の検査料とは言え「2度の検査料算定」を認めるべきか、など)。

遺伝子パネル検査で最適な抗がん剤が見つかる可能性は、現状10-20%程度

 なお、遺伝子パネル検査を実施した場合でも、必ずしも最適な抗がん剤が見つかるわけではありません。むしろ、現時点では「最適な抗がん剤が見つかるケースのほうが少ない」ことが分かっています(10-20%程度との研究結果あり)。

 上述したNCCオンコパネルでは、検査が実施された187症例のうち、25症例(13.4%)について「治療薬の選択」がなされ、研究結果の妥当性を裏付けるものとなっています。このうち15症例は治験が行われ、10症例について抗がん剤の適応外使用等が行われました。さらに10症例の内訳をみると、▼腫瘍径が30%以上縮減:6症例▼病状安定:3症例▼腫瘍径が20%以上拡大:1症例―となっています。

こうした点について、患者側に十分に、かつ分かりやすく説明することなども極めて重要な要件となりそうです。
中医協総会(1)2 190424

 
 
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