オプジーボの用量見直しや適応拡大などを踏まえ、最適使用推進ガイドラインを新設・改訂―中医協総会
2018.8.23.(木)
画期的な抗がん剤のオプジーボ(ニボルマブ・遺伝子組換え)について、「用法用量」の見直しや、ヤーボイ(イピリムマブ・遺伝子組換え)との併用投与療法の効果などを踏まえて「最適使用推進ガイドライン」を改訂する―。
8月22日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点が厚生労働省から報告されました。
オプジーボ、用量見直しを踏まえて薬価も再算定
オプジーボ点滴静注(ニボルマブ製剤)は、2014年7月に画期的な「根治切除不能な悪性黒色腫」治療薬として薬事承認され、同年9月に▼20mg2mL1瓶:15万200円▼100mg10mL1瓶:72万9849円―という高額な薬価が設定されました。その後、適応症が「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」にも拡大され、対象患者(つまり市場)も大幅に広がりました。しかし、適応拡大時期の関係で2016年度の薬価改定で引き下げが行われず、高額な薬価が維持されたため、▼医療保険財政への影響等を考慮した「薬価の特例的な引き下げ」▼医療現場での適正使用を目指すための「最適使用推進ガイドライン」(以下、ガイドライン)の策定—といった対応が行われています(関連記事はこちらとこちら)。
ガイドラインは適応症ごとに作成されており、今般、適応症の追加や用法用量の見直しなどが行われたことを踏まえて、次のように見直されました。オプジーボについては、現時点で7種類のガイドラインが作成されています(中医協資料はこちら(悪性黒色腫)とこちら(非小細胞肺がん)とこちら(腎細胞がん)とこちら(古典的ホジキンリンパ腫)とこちら(頭頚部がん)とこちら(胃がん)とこちら(悪性胸膜中皮腫))。
(1)新たに「悪性胸膜中皮腫」へ適応が拡大されたことを受け、同疾患治療にオプジーボを使用する場合のガイドラインを新設した
(2)用法用量の見直し(従前、「2週間に1回、体重1kg当たり3mg」であったところ、「2週間に1回、体重に関わらず240mg」に改める)を踏まえ、7種類すべてのガイドライン(▼悪性黒色腫▼非小細胞肺がん▼腎細胞がん▼古典的ホジキンリンパ腫▼頭頚部がん▼胃がん▼悪性胸膜中皮腫—)について該当部分を改訂する
(3)悪性黒色腫治療のガイドラインにおいて、「術後補助療法」として用いる場合の記述を追記する(対象として「完全切除後のIIIb/c期/IV期の悪性黒色腫患者における術後補助療法」(投与期間が12か月まで)を追記)
(4)ヤーボイ(イピリムマブ・遺伝子組換え)との併用投与療法の効果を踏まえ、▼悪性黒色腫▼腎細胞がん―治療のガイドラインにおいて、当該併用療法に関する記述を追記する
ガイドラインの新設・改訂に伴い、保険診療上、▼腎細胞がん治療で「オプジーボ+ヤーボイの併用療法」を行う場合には、IDMCリスク分類のintermediateリスクまたはpoorリスクのいずれに該当するか▼悪性中皮腫治療でオプジーボを投与する場合には、「医療施設ががん診療連携拠点病院などであるか」「治療責任者が5年以上のがん治療臨床経験を持ち、うち2年以上がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学研修を受けているか」—などをレセプトの摘要欄に記載することが求められます(その他のがんについても、従前どおり)。
ところで、上述した用量変化に伴い、オプジーボの薬価について再算定が行われました(20mg2mL1瓶:5万7225円→3万5766円、100mg10mL1瓶:27万8029円→17万3768円)。2018年度の薬価制度改革で「効能効果追加、用法用量変化のあった医薬品について、年4回の新薬収載機会を活用して、迅速に薬価を見直す」仕組みが導入されたことによるものです(関連記事はこちらとこちら)。医療機関における在庫状況などを踏まえて、新薬価は今年(2018年)11月1日から適用されます。なお、オプジーボはDPC制度下では「包括範囲から除外」されているため、DPC点数への影響はありません。
画期的な肺がん治療剤「デュルバルマブ」を保険収載、最適使用推進ガイドラインも設定
また8月22日の中医協総会では、9成分・13品目の新薬を保険収載することが承認されています(8月29日に薬価基準に収載される予定)。
この中には、画期的な抗がん剤である「デュルバルマブ(遺伝子組換え)」(販売名:イミフィンジ点滴静注120mg・11万2938円、同500mg・45万8750円)が含まれています。オプジーボやキイトルーダ、テセントリクなどと同じく免疫チェックポイント阻害剤(がん細胞を攻撃するT細胞の働きを抑えてしまうPD-1とPD-L1の結合を阻止し、抑えられていたT細胞の活動を活発にすることを目的とした薬剤)で、保険診療上、「切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的科学放射線療法後の維持療法」に用いることが可能です。
本剤についてもオプジーボなどと同じくガイドラインが作成されており、「がん診療連携拠点病院などにおいて、5年以上のがん治療臨床経験を持ち、うち2年以上がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学研修を受けている医師を治療責任者として置く」ことなどが求められます。これらの事項はレセプトの摘要欄に記載することが必要です。
投与対象は、有効性の観点から「白金製剤を含む根治的化学放射線療法の後に病勢進行が認められなかった切除不能な局所進行の非小細胞肺癌(StageIII)に対し維持療法が行われる患者」に限られ、▼白金製剤を含む根治的化学放射線療法の治療歴のない患者▼白金製剤を含む根治的化学放射線療法の後に病勢進行が認められた患者▼術後補助化学療法▼他の抗悪性腫瘍剤との併用—に用いることは認められません。
さらに、安全性の観点から、▼本剤成分に過敏症の既往歴のある患者(禁忌)▼根治的化学放射線療法によりGrade2以上の間質性肺疾患(放射線性肺臓炎を含む)の発現が認められた患者▼WHO Performance Status 2-4の患者―も投与対象にならず、▼間質性肺疾患(放射線性肺臓炎を含む)のある、または既往歴のある患者(上記に該当しない場合)▼自己免疫疾患の合併、慢性的・再発性の自己免疫疾患の既往歴のある患者—では、他の治療法がない場合に限り、慎重投与を考慮することが認められます。
東大病院の遺伝子パネル検査を先進医療導入
8月22日の中医協総会では、新たな医療機器・臨床検査の保険収載を承認するとともに、新たな先進医療(保険診療+保険外診療の併用が認められる)の報告を受けています。
【新たな医療機器の保険収載】(2018年9月に保険収載予定)
▼機能不全に陥った心臓弁の機能を代用するための、動物由来(ウシ心のう膜)の弁開閉部を有する異種心のう膜弁「インスピリス RESILIA 大動脈弁」(償還価格は98万4000円、区分B3だが、今後「石灰化抑制効果」「フレーム拡張機能」のデータを集積し、有用性が示された場合には、新たな機能区分(C1など)を申請する(チャレンジ申請、2018年度の材料価格制度改革で新設された仕組み)ことが可能である)(関連記事はこちら)
▼頸胸椎における脊柱管狭窄症、脊髄腫瘍等の脊椎疾患に対し、椎弓形成術の際に用いて患部の安定化・骨癒合を補助する「CANOPY ラミノプラスティーシステム」(償還価格は3400円)
▼非侵襲的に中耳腔を加圧し、内耳に蓄積された内リンパ液の排出を促し、メニエール病、遅発性内リンパ水腫に起因するめまい発作を抑制する「非侵襲中耳加圧装置 EFET01」(特定保険医療材料として設定せず、新規技術料(C106【在宅自己導尿指導管理料】1800点を準用)の中で評価する)
【新たな臨床検査の保険収載】(2018年9月に保険収載予定)
▼代謝性骨疾患におけるビタミンD欠乏症の診断、ビタミンD不足状態の判定を補助するための血清・血漿中の「25-ヒドロキシビタミンD」測定(D007【血液化学検査】の30「KL-6」(117点)に準じて算定する)
【新たな先進医療】
▼治癒切除不能または再発の病変を有するがん患者に対する「遺伝子パネル検査」(Todai Onco Panel)(東京大学医学部附属病院で実施、保険給付されない先進医療に係る費用は91万5000円。1年半で200例の患者に対して当該検査を実施し、▼治療介入への判断根拠▼病理組織学的診断の補助となりうる遺伝子変異を持つ患者頻度▼既承認体外診断薬との一致率—などを評価し、薬事承認を目指す)(関連記事はこちら)
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