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オプジーボとキイトルーダ、基準満たした施設で有効性の認められた患者に投与せよ―厚労省

2017.2.16.(木)

 画期的な抗がん剤のオプジーボ点滴静注(ニボルマブ製剤)とキイトルーダ点滴静注を保険診療で用いるに当たっては、がん種ごとに定められた最適使用推進ガイドランに従うとともに、レセプトの摘要欄に「自院が施設要件を満たしているか」「有効性を確認した旨」などを記載しなければならない―。

 厚生労働省は14日に、こうした内容の通知「抗 PD-1抗体抗悪性腫瘍剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について」を発出しました(厚労省のサイトはこちら)。

最適使用推進ガイドラインを満たすことをレセプトに記載

 オプジーボは、当初、希少がんである根治切除不能な悪性黒色腫(メラノーマ、推定対象患者は470人)の治療薬として薬事承認され、超高額な薬価(100mgで72万9849円)が設定されました。その後、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(推定対象患者は5万人)へ適応が拡大されましたが、適応拡大時期が2016年度の薬価改定の対象設定後となったため、高額な薬価が据え置かれました。

 これまでに想定されていない超高額医薬品の相次ぐ開発は、医療の質を向上させるものとして歓迎すべき一方、医療保険財政にとっては大きな脅威となります。そこで政府は、オプジーボについて緊急的・特例的な薬価引き下げを行うとともに、「適切な施設・医師の下で、有効性・安全性の確認された患者にのみ投与すべき」ことを定めた『最適使用推進ガイドラン』(以下、ガイドライン)を作成することを決定。2月8日の中央社会保険医療協議会総会で、オプジーボとその類薬であるキイトルーダについて、悪性黒色腫と非小細胞肺がんのそれぞれの治療に用いるに当たってのガイドライン案が了承されました(正式なガイドラインは14日に厚労省から通知されている。厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちらこちらこちら)。

 さらに、厚労省はこのガイドラインをベースとして「保険診療でこれらの医薬品を用いる場合の留意事項」(留意事項通知)も定めています。原則として、保険償還を受けるためにはこの留意事項通知を遵守することが必要で、明らかに反する場合には査定などの対象になります。もっとも、患者の状態などはさまざまであり、「本留意事項通知に明らかに反しているかどうか」は個別ケースごとに判断されます(関連記事はこちら)。

 まず留意事項通知では、「ガイドラインに従い、有効性・安全性情報が十分蓄積するまでの間、本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に使用するとともに、副作用が発現した際に必要な対応をとれる医療機関で使用する」ことを強く求めています。前者が「対象患者の要件」、後者が「施設要件・医師要件」です。

 さらに両要件を満たした上で、両製剤が投与されているかが明らかになるよう、医療機関では次の事項をレセプトの摘要欄に記載することが必要となります。

(1)施設要件を満たしいているか

(2)医師要件を満たしているか

(3)患者要件を満たしているか

 まず(1)の施設要件について、ガイドラインでは「がん診療連携拠点病院や特定機能病院、あるいはがん診療にかかる診療報酬上の施設基準を満たしているか」「医薬品情報管理の専任者が配置され、医師などへの情報提供体制が整っているか」「副作用に速やかに対応するための体制が整っているか」など詳細な規定が置かれましたが、レセプトに記載しなければならないのは、自院が▼都道府県がん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院など▼特定機能病院▼都道府県知事が指定するがん診療連携病院(がん診療連携指定病院、がん診療連 携協力病院、がん診療連携推進病院など)▼外来化学療法室を設置し、外来化学療法加算1または加算2の施設基準を届け出ている▼抗悪性腫瘍剤処方管理加算の施設基準を届け出ている―のいずれに該当しているかにとどまります。

 また(2)の医師要件については、ガイドラインに定められているとおりで、治療責任者が▼初期研修後に5年以上のがん治療の臨床研修を行っており、うち2年以上はがん薬物療法を主とした臨床腫瘍学の研修を行っている▼初期研修後に5年以上の皮膚悪性腫瘍診療の臨床経験を有している(悪性黒色腫治療に両薬剤を用いる場合)▼初期研修後に4年以上の臨床経験を有しており、うち3年以上は肺がんのがん薬物療法を含む呼吸器病学の臨床研修を行っている(肺がん治療に両薬剤を用いる場合)―のいずれに該当しているのかをレセプトの摘要欄に記載することが必要です。

 さらに(3)の患者要件については、「有効性のある患者に投与されているかどうか」を判断するために、次のような点を記載しなければいけません。

【肺がん治療にオプジーボを用いる場合】

▽本製剤を非扁平上皮がん患者でPD-L1発現率が確認できた患者に投与する場合は、PD-L1発現率を確認した検査の実施年月日と検査結果(発現率)

【肺がん治療にキイトルーダを用いる場合】

▽PD-L1陽性を確認した検査の実施年月日と検査結果(発現率)

 なお、ここに記載のない患者(例えば悪性黒色腫)については無制限に両製剤を使用できるわけではなく、例えば「他の抗悪性腫瘍剤との併用」などは有効性が確立されていないので、保険診療上、両製剤を用いることはできません。詳細はガイドラインをご参照ください。

 また、オプジーボを非扁平上皮がん患者に用いる場合にはPD-L1発現率が1%以上である場合に有効性が確認されています(ゆえに上記に発現率などを記載する)が、個別ケースによっては「PD-L1発現率1%未満」であっても、医師が臨床上「必要である」と判断した場合には本製剤を保険診療として用いることが可能です。その場合には、本製剤を投与することとした理由をレセプトの摘要欄に記載することが必要です。なおPDーL1発現率や陽性を確認するための検査も15日に保険収載されています。

従前からオプジーボを使用していた患者、経過措置で継続使用が可能に

 ところで、オプジーボについては、悪性黒色腫治療への効能効果が2014年9月、肺がん治療への効能効果が2016年2月に認められており、現在までに継続して使用している患者がいると考えられます。すると、「従前からオプジーボの投与を受けているが、ガイドラインに定められた要件は満たさない」ケースが生じます。この場合、保険診療として認めることはできなくなるのでしょうか。

 この点について留意事項通知では、次のような経過措置を設け、従前からオプジーボ投与を受けていた患者への治療中断が生じないよう配慮しています。

▼2017年2月13日以前にオプジーボを投与されている患者については、医学薬学的に本製剤の投与が不要となるまでの間は投与が認められる

 →この場合、施設要件・医師要件・患者要件の記載は不要で、レセプトの摘要欄に、「投与中である旨」と「当該患者に初めて本製剤を投与した年月日」を記載する

▼2017年2月13日以前にオプジーボ使用実績がある医療機関で、本製剤を初めて投与する必要が生じた患者に対しては、2017年4月3 日までの間は投与開始が認められ、医学薬学的に本製剤の投与が不要となるまでの間は投与が認められる

 →この場合、施設要件・医師要件・患者要件の記載は不要で、レセプトの摘要欄に「当該医療機関での使用実績がある旨」と「当該患者に初めて本製剤を投与した年月日」を記載する

   
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