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オプジーボの類薬「キイトルーダ」、肺がん患者に使用する場合のGL案―中医協総会(2)

2017.1.25.(水)

 画期的な抗がん剤「キイトルーダ点滴静注20mg」と「同100mg」(オプジーボの類薬)を非小細胞肺がんに使用する場合には、「がん診療連携拠点病院などで副作用へ速やかに対応できる体制が整っている」などの要件を満たした施設で、本剤の有効性・安全性が確認された患者に投与することが望ましい。またオプジーボと異なり、これまでに化学療法歴のない患者でも一定の場合には有効性が認められている―。

 25日の中央社会保険医療協議会総会に、厚生労働省からこのような内容の「最適使用推進ガイドライン」(案)が提示されました(関連記事はこちら)(厚労省サイトのガイドライン案はこちら)。

 キイトルーダは2月上旬に薬価収載される見込みで、収載と同時にガイドラインを固め、これをベースにした留意事項通知が示されます。また同時期にオプジーボのガイドライン・留意事項通知も示される予定です。

1月25日に開催された、「第344回 中央社会保険医療協議会 総会」

1月25日に開催された、「第344回 中央社会保険医療協議会 総会」

オプジーボ同様、がん治療体制や副作用対応体制が整っている施設で使用可能

 画期的な医薬品の開発が進んでいますが、極めて高額なケースも少なくなく、これが医療保険財政を圧迫していると指摘されます。中医協では、これらに対応するため薬価制度の抜本改革に向けた検討をしていますが、それと合わせて「最適使用推進ガイドライン」(ガイドライン)を設けることとしています。

 ガイドラインでは、「どのような施設」で、「どのような患者」に投与することが適切かを定めます。これまでに厚労省は▼抗がん剤の「オプジーボ」▼高コレステロール血症治療薬の「レパーサ」―を対象にガイドラインを作成する考えを明確にしており、25日の中医協総会には、オプジーボの類薬である「キイトルーダ点滴静注20mg」「同100mg」(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)についてのガイドライン案が厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課の山田雅信課長から提示されました(関連記事はこちら)。

 施設要件について見てみると、オプジーボと同様に次の(a)-(b)をすべて満たすことが求められます。

(a)がん診療連携拠点病院や特定機能病院、都道府県の指定するがん診療連携病院、外来化学療法室を設置し、外来化学療法加算1または2を取得している施設で、「肺癌の化学療法および副作用発現時の対応に十分な知識と経験を持つ医師が、当該診療科の本剤治療の責任者として配置されている

(b)医薬品情報管理の専任者が配置され、製薬企業からの情報窓口、有効性・安全性など薬学的情報の管理および医師などに対する情報提供、有害事象が発生した場合の報告業務などを速やかに行う体制が整っている

(c)副作用に速やかに対応するために、「間質性肺疾患などの重篤な副作用が発生した際に、24時間診療体制の下、入院管理およびCTなど鑑別に必要な検査の結果が当日中に得られ、直ちに対応可能な体制が整って」おり、「間質性肺疾患などの副作用に対して、専門性を有する医師と連携し、直ちに適切な処置ができる体制が整って」いる

 がん治療に対する体制と治療実績、副作用への対応体制などが十分に整備されていることが求められるものです。

キイトルーダを非小細胞肺がん治療に用いる場合の最適使用推進ガイドライン案(抜粋)1:施設要件として「がん診療連携拠点病院」であることや、「副作用に速やかに対応できる体制が整っている」ことなどがあげられた(オプジーボと同様)

キイトルーダを非小細胞肺がん治療に用いる場合の最適使用推進ガイドライン案(抜粋)1:施設要件として「がん診療連携拠点病院」であることや、「副作用に速やかに対応できる体制が整っている」ことなどがあげられた(オプジーボと同様)

オプジーボと異なり、化学療法歴のない患者にも使用可能

 投与対象となる患者については、まず安全性の観点から「本剤成分に過敏症の既往歴がある患者」「妊婦または妊娠の可能性のある患者」は禁忌とされ、「間質性肺疾患の合併または既往のある患者」などは慎重投与となっています。オプジーボと同様の定めです。

 一方、有効性については次のように整理されています。

▼化学療法歴のない場合:EGFR遺伝子変異陰性、ALK融合遺伝子陰性およびPD-L1陽性(TPS50%以上)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者

▼化学療法歴のある場合:PD-L1陽性(TPS1%以上)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(なおEGFR遺伝子変異陽性またはALK融合遺伝子陽性の患者では、それぞれEGFRチロシンキナーゼ阻害剤またはALKチロシンキナーゼ阻害剤の治療歴があること)

 TPSはPD-L1が発現した腫瘍細胞の割合を意味し、「PD-L1 IHC 22C3 pharmDX「ダコ」」(本剤のコンパニオン診断薬)を用いて測定します。

 オプジーボでは化学療法歴のない患者に対する有効性が確認されていませんが、本剤では臨床研究において「他の化学療法と比べて無増悪生存期間、全生存期間が有意に延長する」ことが明らかになったことから、化学療法歴のない患者にも使用が認められます。

キイトルーダを非小細胞肺がん治療に用いる場合の最適使用推進ガイドライン案(抜粋)2:患者要件として安全性と有効性に分けて記載がなされている。オプジーボと異なり化学療法歴のない患者にも一定の条件で有効性が認められている

キイトルーダを非小細胞肺がん治療に用いる場合の最適使用推進ガイドライン案(抜粋)2:患者要件として安全性と有効性に分けて記載がなされている。オプジーボと異なり化学療法歴のない患者にも一定の条件で有効性が認められている

 

 今後、さらに関係学会と調整を続けてガイドラインを確定。2月上旬予定の薬価収載に合わせて、ガイドラインをベースにした留意事項通知が発出される予定です。なお、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、「キイトルーダと同時期(2月上旬)にオプジーボのガイドラインも定め、留意事項通知を発出したい」との考えを示しています。

学会からの新規医療後術の保険収載提案、受付開始と締め切りを前倒し

 25日の中医協総会では、2018年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価・再評価も議題となりました。

 医療技術の進展を踏まえ、診療報酬改定の折には多数の新規医療技術が保険収載されます(改定時以外にも新たな検査などの技術は保険収載される)。その際には、関係学会から「この技術を保険収載してほしい」との提案を受け付け、中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会で保険収載の是非(すでに保険収載されている技術と重複しないか、安全性や有効性の根拠はあるかなど)を検討し、最終的に中医協総会で保険収載を決定します(関連記事はこちら)。

 25日の中医協では、分科会での検討時間をしっかりとるために「提案書の受付期間を1か月半前倒し(前回改定では3月9日であったところを、今年1月下旬に)するとともに、提出締め切りを3週間前倒し(同じく6月19日であったところを、5月末に)する」ことが了承されました。これにより審査期間を前回改定よりも1か月程度多く確保することが可能になります。

 また提案書に、新たに▼前回改定での提案実績(連続した提案かどうかを判断しやすくする)▼参考文献の該当ページ―を記載することが必要になります。効率的な審査を行うための見直しと言えます(厚労省のサイトはこちら)。

 厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官は、こうした見直しによって学会に混乱が生じないよう配慮する考えを明確にしています。

 

 また先進医療の保険収載については、2016年度の前回改定と同様に「先進医療会議」ルートと、「医療技術評価分科会」ルートの双方が設けられており、学会は先進医療の保険収載を希望する場合、いずれのルートで提案を行うことも可能です。

 なお眞鍋企画官からは、2015年7月1日から16年6月30日の1年間で、先進医療A(16年6月30日時点で40種類)が646施設で合計2万3733人に行われ、先進医療総額(医療保険から給付される)が約178億5000万円となり、先進医療B(同60種類)が282施設で合計1052人に行われ、先進医療総額が約5億7000万円となったことを紹介しています(厚労省のサイトはこちら)。

 

 このほか25日の総会では、次の医療機器と臨床検査について保険収載が認められたほか、2件の新たな先進医療技術、歯科用貴金属の価格改定について報告が行われました。

【新医療機器】(2017年3月収載予定)

▼脳深部に電気刺激を与え、薬物治療で十分な効果の得られない振戦やパーキンソン病に伴う運動障害を軽減するための「バーサイス PC DBSシステム」(償還価格164万円、2017年3月収載予定)

▼新規の冠動脈病変を有する症候性虚血性心疾患患者の治療に用いる「Absorb GT1 生体吸収性スキャフォールドシステム」(償還価格24万4000円、2017年3月収載予定)

【新たな臨床検査】(2017年2月収載予定)

▼急性腎障害が疑われる患者に対する「好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)(尿)【210点、2017年2月収載予定】

【新たな先進医療】

▼急性心筋梗塞に対するヒトIL-11製剤を用いた心保護療法

▼局所限局性前立腺がん高リスク症例に対する重粒子線治療

【歯科用貴金属の価格改定】(2017年4月改定予定)

▼歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金12%以上JIS適合品):現在1206円→改定後1279円

▼歯科非鋳造用金銀パラジウム合金 板状(金12%以上JIS適合品)現在1096円→改定後1186円

  

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