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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

在宅自己注の対象薬剤、診療上の必要性をより深く検証、バイオ後続品は個別審査―中医協総会(1)

2018.5.23.(水)

 在宅自己注射指導管理料の対象薬剤を追加するに当たり、「自己注射の安全性の確認」「対象患者の要件」「指導や病状確認の頻度、副作用への対応などの留意点」「頻回投与や長期間治療が必要となる理由」をより詳しく確認するとともに、バイオ後続品については個別に審査を行う。また、「発作時に緊急投与が必要な薬剤」「補充療法等に用いる薬剤」以外の薬剤については、より多角的な視点で審査を行う―。

5月23日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった方針が了承されました。同日から適用されています。

5月23日に開催された、「第394回 中央社会保険医療協議会 総会」

5月23日に開催された、「第394回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

「患者の利便性」のみに偏らず、「診療上の必要性」を十分に検証する

患者への注射は、有効性・安全性を確保するために「医師などの有資格者が実施」することが原則です。しかし、頻回の注射が必要なケース、あるいは発作が起きた場合に緊急の注射が必要なケースについては、その都度、患者に医療機関への受診を求めることは困難です。そこで厚労省は、こうしたケースについては限定的に「在宅で患者自身が注射する」ことを認め、「医師がそのための十分な指導管理を行う」ことを保険診療として扱うことを認めています(C101【在宅自己注射指導管理料】)。

対象薬剤は順次追加(拡大)されていますが、(1)「既存治療で効果不十分な場合に用いる生物学的製剤」については、インスリン製剤などの補充療法(定期的な薬物投与が必要なケース)とは、治療目的や投与頻度、治療期間等が異なり、より慎重な検討が必要である(2)学会からの要望書について、「診療上の必要性」が必ずしも十分に記載されていないケースもある(3)バイオ後続品については、分子構造が複雑であり、市販後調査などでより慎重な取り扱いがなされている(4)使用方法の改良や適応追加などにより、投与頻度や使用目的などが変化しているものもある―といった課題があります。

そこで中医協では、これらの課題に対応するために、対象薬剤追加の基準(在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に係る運用基準)を次のように見直すことを決定しました(厚労省のサイト(中医協資料)はこちら)。

まず、(2)の課題(診療上の必要性の検討)に対応するために、対象薬剤の追加を求める学会からの要望書において、▼自己注射の安全性の確認▼自己注射の対象となる患者の要件▼使用にあたっての具体的な留意点(廃棄物の適切な処理方法を含む使用法の指導、病状の確認頻度、予想される副作用への対応など)▼長期間の治療が必要になる理由—などの記載が必要である旨が明確にされます。

これまでは、ともすると「患者の利便性」を中心とした要望となっていたきらいもあり、今後、「患者への配慮」を考慮することはもちろん、「診療上の必要性」をさらに十分に検討し、在宅での自己注射を認めるか否かを判断していくことになります。

「補充療法・緊急投与」以外の薬剤、より慎重に「診療上の必要性」を検証

また(1)の課題(補充療法や緊急投与とは異なる目的での治療等)に対応するために、「▼発作時に緊急投与が必要な薬剤(血友病患者の出血抑制、低血糖時の救急処置、蜂毒等に起因するアナフィラキシーの補助療法に用いる薬剤など)▼補充療法に使用する薬剤(インスリン製剤、骨粗鬆症治療薬など)—以外の薬剤については、『学会ガイドライン等で、在宅自己注射についての診療上の必要性が確認されている』『用法・用量において、維持期における投与間隔が概ね4週間以内である』『学会が安全性や患者要件、留意事項など(上述)を確認している』ことに加え、『要望書を提出した学会以外の学会の意見』を確認するなど、診療上の必要性が十分に確認されている」ことを要件とします。

在宅自己注射指導管理料の対象薬剤を「緊急投与盲的」(I)、「補充療法目的」(II)、「それ以外」(III)に分け、(III)の「それ以外」の治療目的薬剤について、より多角的に診療上の必要性を検討する

在宅自己注射指導管理料の対象薬剤を「緊急投与盲的」(I)、「補充療法目的」(II)、「それ以外」(III)に分け、(III)の「それ以外」の治療目的薬剤について、より多角的に診療上の必要性を検討する

 
冒頭に述べたように、在宅自己注射は「補充療法」や「緊急投与」のために、例外的に認められているものですが、近年、これらとは異なる目的の薬剤、例えば▼関節リウマチの治療薬▼家族性高コレステロール血症の治療薬—などが在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加されています。
主な在宅自己注射指導管理料の対象薬剤と、その分類(緊急投与目的か、補充療法目的か、それ以外か)を見ると、当初は「緊急投与(I)」「補充療法(II)」目的であるが、近年になって「それ以外(III)」の治療目的の薬剤が増えてきている(その1)

主な在宅自己注射指導管理料の対象薬剤と、その分類(緊急投与目的か、補充療法目的か、それ以外か)を見ると、当初は「緊急投与(I)」「補充療法(II)」目的であるが、近年になって「それ以外(III)」の治療目的の薬剤が増えてきている(その1)

主な在宅自己注射指導管理料の対象薬剤と、その分類(緊急投与目的か、補充療法目的か、それ以外か)を見ると、当初は「緊急投与(I)」「補充療法(II)」目的であるが、近年になって「それ以外(III)」の治療目的の薬剤が増えてきている(その2)

主な在宅自己注射指導管理料の対象薬剤と、その分類(緊急投与目的か、補充療法目的か、それ以外か)を見ると、当初は「緊急投与(I)」「補充療法(II)」目的であるが、近年になって「それ以外(III)」の治療目的の薬剤が増えてきている(その2)

主な在宅自己注射指導管理料の対象薬剤と、その分類(緊急投与目的か、補充療法目的か、それ以外か)を見ると、当初は「緊急投与(I)」「補充療法(II)」目的であるが、近年になって「それ以外(III)」の治療目的の薬剤が増えてきている(その3)

主な在宅自己注射指導管理料の対象薬剤と、その分類(緊急投与目的か、補充療法目的か、それ以外か)を見ると、当初は「緊急投与(I)」「補充療法(II)」目的であるが、近年になって「それ以外(III)」の治療目的の薬剤が増えてきている(その3)

 
こうした薬剤については、より多角的な視点で「診療上の必要性」を判断することになります。

バイオ後続品、先行バイオ品との同等性を個別に検証し、在宅自己注の対象とするか判断

また、後発医薬品については、先発品が在宅自己注射指導管理料の対象薬剤である場合、有効性・安全性が同一と考えられるために、自動的に対象薬剤に追加されます。しかし、バイオ後続品(バイオシミラー)については、化学合成の後発医薬品に比べ分子構造が複雑であることなどから、「先行バイオ医薬品との同等性」を市販後も調査するなど、慎重な取り扱いがなされています。このため、(3)の課題に対応するために、「当分の間、個別品目毎に中医協において、対象薬剤への追加の可否を審議する」ことになりました。

なお、同日の中医協総会では、今年(2018年)1月に薬事承認されたバイオ後続品【エタネルセプトBS皮下注用10mg「MA」ほか】(既存治療で効果不十分な関節リウマチ等の治療に用いる)について、治療成績から▼薬物動態▼有効性▼安全性―について先行バイオ医薬品【エンブレル皮下注用10mgほか、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤である】との同等性が確認され、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加することが認められています。

2020年度診療報酬改定以降、改定の都度、在宅自己注の対象薬剤を再評価

さらに(4)の課題(使用実態の変化等)に対応するために、「診療報酬改定の都度に、使用状況などを踏まえ、医療技術評価の一環として対象薬剤の再評価を行う」ことも決まりました。既に対象薬剤となっている医薬品も、2020年度改定以降、再評価が行われます。

 
なお、C102【在宅自己腹膜灌流指導管理料】、C102-2【在宅血液透析指導管理料】、C104【在宅中心静脈栄養法指導管理料】、C108【在宅悪性腫瘍等患者指導管理料】、C111【在宅肺高血圧症患者指導管理料】においても、C101【在宅自己注射指導管理料】と同様に注射薬を用いることがあるため、同様の基準で運用されることになります。

入院医療分科会とDPC評価分科会を統合

 診療報酬改定論議は、最終的にすべて中医協総会で結論が出されますが、改定内容は膨大であるため、専門的事項については下部組織で具体的な議論を行います。

例えば、入院医療全般については、診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で(関連記事はこちら)、DPC制度改革については、同じく「DPC評価分科会」で個別論議が行われ(関連記事はこちら)、その検討状況をベースに、中医協総会で議論し、最終決定を行います。

ところで、2018年度診療報酬改定では、入院基本料等の再編・統合(例えば、7対1・10対1一般病棟入院基本料を7つの急性期一般入院料に再編・統合するなど)が行われ、また、重症患者の受け入れ状況を評価する指標である「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」について、DPCデータ(EF統合ファイル)の活用を一部導入するなど、「入院医療分科会」と「DPC評価分科会」とで、検討内容がこれまで以上に密接に関係するようになってきています(関連記事はこちら)。

そこで今般、両分科会を統合し、調査研究に関係する事項の検討を、下部組織のワーキンググループで行うことが決まりました(5月23日の中医協総会で承認された)。具体的には、次のようになります。

●入院医療等の調査・評価分科会(入院医療分科会とDPC評価分科会を統合)
▼入院医療の診療報酬に関する技術的な検討▼ワーキンググループからの調査研究・分析結果等を踏まえた技術的な検討▼その他、入院医療の診療報酬に関する技術的な検討—を行う

●ワーキンググループ(DPCワーキンググループと診療情報・指標等ワーキンググループ、いずれも仮称)
 「入院医療等の調査・評価分科会」の検討事項のうち、特に調査研究に関わる事項の作業を行う。具体的には、▼DPC(診断群分類)、医療機関別係数等に関する調査研究・結果分析▼データ提出加算の提出データ、医療ニーズやアウトカム等の指標等に関する調査研究・結果分析—など

入院医療等の調査・評価分科会とDPC評価分科会を再編・統合する

入院医療等の調査・評価分科会とDPC評価分科会を再編・統合する

 
ワーキンググループは、非公開で行われ、検討結果などの成果物が公開の「入院医療等の調査・評価分科会」に報告されます。いわば、これまでのDPC評価分科会(公開)と、MDC毎作業班(作業は非公開だが、成果物が公開のDPC評価分科会に報告される)のような位置づけになるイメージです。
 
 
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