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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

新たな激変緩和措置の大枠固まる、改定年度の1年間のみ報酬の大変動に対応—DPC評価分科会

2017.8.4.(金)

 診療報酬改定によってDPC病院の収入が2%を超えて下落しないよう、新たな激変緩和措置を講じる。ただし、緩和措置は診療報酬改定年度の1年間のみとする—。

 このような方針が、4日に開催された診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会で概ね固まりました。

8月4日に開催された、「平成29年度 第3回  診療報酬調査専門組織 DPC評価分科会」

8月4日に開催された、「平成29年度 第3回 診療報酬調査専門組織 DPC評価分科会」

2018年度からの激変緩和措置は、改定年度のみ

 DPC制度では、2012年度診療報酬改定以後、調整係数(暫定調整係数)の基礎係数・機能評価係数IIへの段階的置き換えが進められています。この置き換えにより、診療報酬収入が大きく変動する病院があるため、厚労省は、改定前後で診療報酬収入が2%を超えて変動しないように暫定調整係数を調整する「激変緩和措置」を設けています。

 しかし、▼置き換えが2018年度診療報酬改定で完了すること▼現在の激変緩和措置は「激変緩和の循環」を生んでいること—から、厚労省は2018年度改定において「置き換えに対応するための激変緩和措置」は行わない方針を打ち出しました。厚労省は、現在の激変緩和措置は、出来高時代の報酬を維持することにつながっていると考え、「特別に配慮すべき事情があるとは考えにくい」としています。

一方、係数の置き換えとは別に、毎回の診療報酬改定によって病院の診療報酬収入に変動が生じます。厚労省の調べでは、この「診療報酬改定によって収入に大きな変動が生じる病院」にはさまざまなタイプ(専門・総合病院、規模の大小、ケアミクスの状況)があることが分かりました。これを放置すれば、地域医療に悪影響も出かねないため、厚労省は「一定の対応が必要」とし、従前の実績も考慮して「改定前と比べて、2%を超えて診療報酬収入が減少しない」ように、新たな激変緩和措置を講じる考えです。

ただし、現在のように激変緩和措置を2年継続したのでは、前述した「激変緩和の循環」が生じてしまうため、この弊害を是正する観点から、新たな激変緩和措置の適用は「診療報酬改定年度のみ」となります。これにより翌改定においては、「改定前の激変緩和が行われていない収入」が比較対象となるので、「激変緩和の循環」は抑制されることになります(関連記事はこちら)。

また、新規のDPCに参加した病院について新たな激変緩和措置を講じることは、かつての調整係数が行っていた「出来高時代の報酬維持」につながるため(2016年度の新規DPC参入病院の中には、DPC参加後に診療密度が減少し、激変緩和によって出来高時代の報酬を一定程度確保している病院が8施設ある)、厚労省は「新規DPC参入病院については、(改定前後の比較ではない)一定の方法で収入変動率を評価する」考えも示しました。

こうした提案について委員からは異論が出ておらず、分科会レベルでは「大枠が固まった」と言えるでしょう。なお、今般の提案では「診療報酬収入が大きく低下する」病院の救済策のみが示されており、「診療報酬収入が大きく上昇した」病院の報酬カット措置は提案されていません。2018年度改定において後者は実施しないのか、あるいは今後提案されるのかは未定です。

地域医療係数、5疾病5事業の方向踏まえて項目を整理

 4日のDPC評価分科会では、機能評価係数IIのうち▼地域医療係数(うち体制評価指数)▼保険診療係数—の見直しについても議論を行いました。

 前者の地域医療係数については、現在、▼脳卒中地域連携▼がん地域連携▼周産期医療▼精神科身体合併症の受け入れ―など12項目(各1ポイント)が設定され、I・II群では10ポイント、III群では8ポイントを獲得すれば、地域医療係数(体制評価指数)は満点評価となります。この点、「2018年度からの新たな医療計画(第7次医療計画)の方向性に沿って、地域における医療確保の取り組み状況が反映されるよう項目の再整理を行う」方向が了承されました。

 関連して、井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)や川瀬弘一委員(聖マリアンナ医科大学小児外科教授)らは、ポイント制の見直しにも言及しました。現在のポイント制では「他で10または8ポイントを獲得しているので、精神医療などに力を入れても評価が上がらない」と考える病院が出かねない点を危惧したものです。委員からは「必須ポイントの導入」や「I・II群における項目によるポイントの重み付け」などが提案されています。この点、厚労省保険局医療課の担当者は「必須ポイントとすれば、その項目の要件を満たさない病院では体制評価指数がゼロになってしまう」と述べ、後者の「重み付け」を検討する考えを示しています。もっとも、「重み付け」などの導入はDPC制度のさらなる複雑化を招くため、どうバランスをとるかが注目されます。

保険診療指数、適切データのために未コード化病名などの使用基準を厳格化

 保険診療係数に関しては、次の3つの見直し方針が厚労省から示されました。明確な反論は出ていませんが、いくつか注文が付いており、今後、厚労省でさらに詰めの検討を行うことになります。

(1)適切なデータ作成を進めるため、▼部位不明・詳細不明コード使用に係る減算規定について、使用割合の基準値を現在の【20%以上】から【10%以上】に厳格化する▼未コード化傷病名使用に係る減算規定にて、使用割合の基準値を現在の【20%以上】から【2%以上】に厳格化する—との見直しを行う

(2)病院情報の公表について、▼2018年度の評価対象分(2017年10月公表)は現在の7項目を維持し、一部項目の見直し(DPC別患者数や主要手術別患者数について上位3項目を必須、5項目まで記載可能とするなど)を行う▼2019年度移行では「共通指標セット」を参考に検討する

(3)I群のみに設定されている「指導医療官の派遣による加算」、I・II群のみに設定されている「精神科未設置による減算」は廃止する(前述した地域医療係数の中で、ポイント制の在り方も含めて検討)

 このうち(1)は、病院における実際のコード使用数を分析し、後者の「未コード化傷病名使用」に厳しく対処する意味で、上記の基準値が提案されたものですが、伏見清秀委員(東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野教授)は「厳しすぎる。未コード化傷病名使用基準について段階的な厳格化を行うべき」との注文を付けました。

 また(3)のうち「精神科未設置による減算」について、石川広己委員(千葉県勤労者医療協会理事長)は「2018年度改定での対応は了承する」としたものの、「医学生らが、精神疾患と身体疾患を併存した患者を診ることは極めて重要である。認知症患者の増加も踏まえ、精神科設置などの評価を考えていく必要がある」と訴えています。

DPCデータのオンライン提出を2018年度から順次進める

 このほか、▼DPC準備病院の募集・DPC対象病院への移行参加は2017年9月1から29日とする▼2018年度中に、DPC対象病院のうち希望する病院ではオンラインによるデータ提出を可能とする—ことも固まっています。

 後者では、郵送でのトラブルによる「データ提出遅延扱い」を避けられるなどのメリットがあり、厚労省は「2018年度移行、順次対象を拡大していく」考えです。

   
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