「CT・MRIなどの高額医療機器の適正配置」、データに基づき十分に議論せよ―日病協
2019.5.1.(水)
CT・MRIの高額医療機器の効率的利用等の方針を国が定めているが、十分なデータに基づいた議論がなされるか注視する必要がある。確定診断や救急医療でのkiller disease発見に不可欠なCT・MRIの利活用に支障が出るようなことがあってはならない―。
日本精神科病院協会や日本病院会、全日本病院協会など15の病院団体で構成される「日本病院団体協議会」は、4月26日の代表者会議でこういった点について確認を行いました。
CT・MRIの共同利用等推進に向けて、いわば「飴と鞭」を国が準備
厚生労働省は、医療提供体制再構築の一環として、CTやMRIといった高額医療機器について「効率的な利用の促進」「適正配置」を進める考えを示しています。地域によって高額医療機器の配置状況・稼働状況に多きバラつきがあり、「一部、非効率な運用がなされているのではないか」との懸念を持っているためです。
具体的には、「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」「医療計画の見直し等に関する検討会・地域医療構想に関するワーキンググループ」において次のような考え方が固められています(関連記事はこちら)。
▽高額医療機器の配置状況を可視化する指標(地域の性・年齢構成を調整した「人口あたり台数」)を設定する
▽国が、「医療機器ごと・地域ごとの高額医療機器の必要台数」(ニーズを踏まえた調整人口当たりの高額医療機器の台数)情報を提供するとともに、医療機器を有する医療機関をマッピング(地図情報として可視化)する。また共同利用(紹介も含む)状況などについても、国から情報提供する
▽医療機器それぞれについて、購入にあたって「当該機器の共同利用計画(紹介を含む)」を作成し、定期的に協議の場(地域医療構想調整会議など)で確認する
さらに、この4月(2019年4月)から「医療用機器の効率的配置の促進に向けた特別償却制度」(2019年度税制改正)が設けられ、▼一定の稼働率確保(買い替えの場合)▼共同利用(新規購入の場合)▼地域医療構想調整会議等での確認―を条件としてCT・MRI購入額の12%が特別償却できることになりました(関連記事はこちら)。
高額医療機器の共同利用・効率的利用の推進に向けて、いわば「飴(後者)と鞭(前者)」を設けた格好です。機器稼働率が低い場合には「高額医療機器の買い替えにブレーキがかかる」と予想されますが、実際の医療現場への影響は不透明です。
この点について4月26日の日病協代表者会議では、「病院団体の意向も踏まえた十分な議論がなされないままに、仕組みが決定されているのではないか」「きちんとしたデータに基づいた議論が地域医療構想調整会議でなされるのか、注視していかなければならない」といった意見が相次いだことが、代表者会議後の記者会見で長瀬輝諠議長(日本精神科病院協会副会長)と相澤孝夫副議長(日本病院会会長)から報告されました。
日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会で構成される四病院団体協議会でも、同様な議論がなされており(関連記事はこちら)、病院サイドは「確定診断、救急医療におけるkiller disease発見に不可欠といえるCTやMRIなどの高額医療機器配置、使用に支障が出てはいけない」と強い危機感を強めています(関連記事はこちら)。
なお、4月26日の日病協・代表者医会議では、2020年度の次期診療報酬改定に向けた要望書を5月中にも厚労省に提出する方針mo
固めています。
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