病棟群単位の入院基本料は厳しい、ICU廃止し7対1に統合するような動きを懸念―日病協
2016.1.29.(金)
病棟群単位の入院基本料は、中央社会保険医療協議会の総会で示された短冊を見る限りとても厳しく、病院側は病棟群単位の届け出はしにくい。7対1を死守するために、ICUやHCUの患者を7対1に移行させるという本質的でない動きが出る可能性がある―。日本病院協議会(日病協、日本病院会や全日本病院協会など12の病院団体で構成される)の楠岡英雄議長と神野正博副議長は、このような見解を28日の定例記者会見で述べました。
一方、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(看護必要度)のM項目に「脊椎麻酔後の患者」や「救命等に係る内科的治療後の患者」が追加された点については、評価できるとの見解も明らかにしています。
厚生労働省は27日に開いた中央社会保険医療協議会の総会に、2016年度診療報酬改定に向けた、いわゆる「短冊」を提示しました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。そこでは「病棟群単位の入院基本料」の骨格も示されています。
それを見ると、「病棟群単位の入院基本料」は、7対1病院が10対1病院に移行する際のワンクッションであることが明確にされており、その内容は厳しいものとなっています。例えば、「一定期日移行は7対1のベッド数が一定割合以下とする」「4病棟以上の病院では、どちらとも複数の病棟にしなければならない」「7対1から10対1への転棟は原則認められない」ことなどです。
こうした点について神野副議長は、「かなり厳しいもので、病院側として病棟群単位を選択しにくい」と指摘。
その結果、「7対1を死守するために、ICUやHCUをやめ、重症患者を7対1に移行させる病院が出るのではないか。これは医療の質、医療安全という面、さらに看護師の労働環境などの面でも問題がある」と見通し、本質的でない動きが出ることを神野副議長は懸念を示しました。
また楠岡議長は、「7対1から10対1への転棟が原則として認めないとされているが、原則がどこまでをさすのかが不明確である」と述べ、今後の議論を注意深く見守る考えも示しています。さらに、「病棟の機能に基づく評価をすべきである。病院群単位の入院基本料が余分なコスト(例えば比較的軽症な患者でも7対1入院基本料を算定するなど)を発生させている」とも指摘。また「これまで厚労省は『病棟群単位の届け出など、あり得ない』という姿勢だったが、一時的にせよ認めることになった。今後、入院基本料の混合がうまく活用できることが分かれば、他にも広がっていくかもしれない」と期待もにじませています。
一方で、看護必要度のM項目には「「脊椎麻酔後の患者」や「救命等に係る内科的治療後の患者」が追加されています(関連記事はこちら)。これについては楠岡議長、神野副議長ともに厚労省の考えを高く評価。内科的治療の具体的な中身は明らかにされていませんが、神野副議長は「通知などで示されることになるが、広く認めるべき」との考えを述べました。
ただし、重症患者割合を例えば25%に引き上げる点については、依然として「厳しい」との考えも示しています。
ところで短冊では、地域包括ケア病棟の見直しも明らかにされています。
そこでは500床以上の大病院やICUなどを持つ病院では、地域包括ケア病棟は1病棟しか設置できないこととされました(関連記事はこちら)。この点について神野副議長は、「地方で、その病院しかないというところでは、複数の機能の病棟を設置せざるを得ない。そういった点も考慮して今後(通知などを)検討していく必要がある」との考えも述べました。
さらに、地域包括ケア病棟で手術・麻酔が出来高になることが明確にされましたが、この方針に対して「看護配置の薄い地域包括ケア病棟で手術・麻酔をすることは、(医療安全などの面で)本末転倒にもなりかねない」と指摘し、注意深く今後の動向を見ていく考えも述べています。
なお28日の記者会見では、来年度(2018年度)から、神野副議長が日病協の議長に就任し、副議長には全国公私病院連盟(公私病連)から選出されることも報告されました。
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