入院基本料、全病棟で「大幅引き上げが不可欠」―日病協が2回目の要望書を提出
2017.11.13.(月)
2018年度診療報酬改定では、すべての病棟入院基本料を大幅に引き上げるべき。また、7対1入院基本料と10対1入院基本料との間に、段階的な評価を創設すべき―。
14の病院団体で構成する日本病院団体協議会(日病協)は11月9日、このような要望書をまとめて厚生労働省に提出しました。2018年度診療報酬改定に向けた要望書を出すのは今回が2回目で、前回の要望書(5月9日提出、関連記事はこちら)をベースに7項目を要望しています。
9日に提出した要望書ではまず、すべての入院基本料の「大幅な引き上げ」を求めています。医師の長時間労働などを是正する「働き方改革」が大きな課題となっており、その原資が必要なためです。それにもかかわらず、最近の医療費抑制政策や人件費の高騰などで、多くの病院の経営状況が急激に悪化していると日病協は指摘し、入院基本料の引き上げが「不可欠」だと主張しています。
さらに、急性期や慢性期、精神科医療などの入院医療に関して、それぞれ提言しています。このうち急性期の7対1入院基本料について日病協が求めたのは「新たな評価基準」の創設です。ただし、より良質の医療を効率良く提供できるような基準を設定するまでには「中長期的」な検証が必要で、2018年度診療報酬改定での基準の「拙速な見直し」は避けるべきだと警鐘を鳴らしています。
また、7対1入院基本料と10対1入院基本料の評価(診療報酬の点数)の差が大きいと問題視し、「その間を補完する段階的評価」を創設するよう求めています。7対1入院基本料の施設基準は満たせないものの、10対1入院基本料の施設基準よりも充実した体制を備えた“7対1未満10対1以上”の病棟があることが分かっており、日病協の要望は、そうした病棟の適切な評価を求めるものだと言えます。
日病協は段階的な評価だけでなく、「病棟群単位の届け出」(一つの病院に7対1と10対1の一般病棟が混在する状態を認める特例)を利用しやすく改善することも、そうした病棟を適切に評価する方策として挙げています。今は、▼来年(2018年)3月末までしか使えない▼7対1病棟と10対1病棟の間での転棟ができない―などと制約が多く、それらの改善を求めていると考えられます。
また要望書では、急性期の一般病棟でも慢性期の療養病床でも、「多職種の人員配置」や「患者の重症度」によって評価される仕組みを目指すべきだと主張しています。
日病協が要望した7項目は以下の通りです。
(1)すべての入院基本料の引き上げ
(2)「重症度、医療・看護必要度」と「多職種配置」を主軸とした、中長期的な入院基本料評価基準の抜本的見直しと、「病棟群単位」届け出制度の改善
(3)地域包括ケア病棟における在宅等からの受け入れ機能の評価
(4)療養病床の医療区分による患者評価制度の中長期的・抜本的な見直しと、データ提出の促進、「25対1療養病床」の要件緩和
(5)精神科医療費の増額と疾病特性を踏まえた在宅移行の在り方の見直し
(6)特定入院料算定病棟における包括対象範囲の見直し
(7)診療報酬体系の簡素化と医療ICTの推進
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