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医療の消費税問題、「非課税」の中での対応には限界、「次の方策」を早急に検討―日病協

2018.12.21.(金)

 医療の消費税問題について、「消費税非課税の中で診療報酬での補填で対応する」現在の仕組みには限界があることが明確になった。2019年10月の補填状況を詳しく見ていくとともに、早急に「次の方策」を検討していく―。

 12月21日に開催された日本病院団体協議会の代表者会議において、こういった点で意見が一致したことが山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長)から報告されました。

12月21日の日本病院団体協議会・代表者会議後に、記者会見に臨んだ山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同会高月病院院長、向かって左)

12月21日の日本病院団体協議会・代表者会議後に、記者会見に臨んだ山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同会高月病院院長、向かって左)

 

消費税非課税の中では、消費税負担の償還(いわば還付)は税理論上不可能

 保険医療については「消費税は非課税」となっているため、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁することはできず、医療機関等が最終負担しています(いわゆる「控除対象外消費税」と呼ばれる)。このため、物価や消費税率が上がれば、医療機関等の負担が大きくなるため、1989年の消費税導入時から「医療機関等の消費税負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定を行う」(以下、消費税対応改定)こととなっています(消費税導入時の1989年度、消費税率引き上げ時の1997年度、2014年度)。

 しかし、診療報酬の算定状況は個別医療機関で異なるため、「個別医療機関の補填の過不足」がどうしても生じてしまいます。このため三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院会協会で構成、以下、四病協)は、「医療界が一致団結できる具体的対応」として次のような仕組みを導入することを今年(2018年)8月29日に提言(関連記事はこちら)。厚生労働省も同様の税制改正要望を行いました(関連記事はこちら)。

(1)特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)による補填を維持する

(2)個別の医療機関ごとに、▼診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額▼控除対象外消費税の負担額(医薬品・特定保険医療材料を除く)—を比較し、医療機関の申告に基づいて「個別の過不足」に対応する

 
 しかし12月14日にまとめられた与党税制改正大綱では、「診療報酬の配点を精緻化することで、医療機関種別の補填のバラつきは是正されるが、実際の補填状況を継続的に調査し、必要に応じて診療報酬の配点方法を見直すことが望まれる」旨を記載するにとどめ、医療界の要望については言及を避けました(自由民主党のサイトはこちら)。

 この点について、四病協に加え国立大学附属病院長会議や全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、国立病院機構、日本慢性期医療協会なども参画する「日本病院団体協議会」の代表者会議では、「消費税非課税制度の中では、やむを得ない。ベストな解決であった」との見解で一致しました。

 上記の医療界の要望は、個別医療機関が収めた消費税について、いわば「還付」を求めるものです。しかし、税理論上「非課税のままで還付を認めることはできない」とされています。したがって、(2)のような仕組みの創設はそもそも不可能であった、とも考えられ、「非課税制度の中では、やむを得ない」という見解につながっています。

 
 もっとも、現行の診療報酬による手当では「個別医療機関の補填のバラつき・過不足」を解消することはできません。2019年10月の消費税率引き上げに向けて消費税対応改定を検討する中央社会保険医療協議会では「配点の精緻化」を行い、医療機関種類別の補填バラつきは相当程度解消される見込みですが、上述のとおり「点数の算定状況が個別医療機関で異なる」ために、個別医療機関における補填のバラつきは解消できない、つまり「消費税非課税の中で、診療報酬での対応には限界がある」のです(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 今後、高齢化が進行し、社会保障の充実などが求められる中では、安定財源である消費税に着目した税率のさらなる引き上げが検討されます。このため日病協では「消費税非課税の中での対応に限界があることが明確になった。『次の方策』について早急に検討していく」考えでも一致しています(関連記事はこちら)。

『次の方策』は、医療の消費税問題を抜本的に解決するための方策と言え、どのようなものなのか、いつまでに方針を固めるのか、などは未確定ですが、例えば、従前より病院団体内部で検討されている「ゼロ%の消費税を診療報酬に『課税』する」仕組みなどが考えられそうです。この場合、消費税が「課税」されているため、消費税負担の償還(還付)を求めることが理論上可能になります。もちろん、ゼロ税率課税とし還付を求めるためには、「支払った税額を正確に把握するために、▼帳簿の保存▼取引の相手方が発行した請求書などの客観的証拠の保存―が必要となる」(いわゆるインボイス制度)など、検討・解決すべき課題も多々あります。今後の検討に注目が集まります。なお、日医は12月14日に「長年の懸案が解決された」との見解を示しており、「次の方策」についてはコメントしていません(日医のサイトはこちら)。

 
また前述のとおり2019年10月には消費税率が引き上げられ、これに伴った消費税対応改定が行われる予定です。これについて日病協では、「来年(2019年)6月頃には2018年度の病院決算状況が明らかになる。これに新点数(2018年度中に告示される見込み)を適用し、医療機関種類別の補填バラつき・過不足が本当に解消しているのか検証する」考えも示しています。
 
 
 
 
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