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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

医療に係る消費税、2014年度の補填不足を救済し、過不足を調整する仕組み創設を―日病協

2018.9.12.(水)

 2014年度に行われた消費増税(5%→8%)に対応するための特別の診療報酬プラス改定の補填不足等の原因を詳しく調べ、これへの救済措置を創設してほしい。また、来年(2019年)10月に予定される消費増税時には、補填不足が生じないような新たな仕組みを創設してほしい―。

 国立大学附属病院長会議や日本病院会、全日本病院協会など15の病院団体で構成される「日本病院団体協議会」は9月12日、こういった要望を加藤勝信厚生労働大臣に宛てて提出しました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

2014年度の消費税対応改定で生じた補填不足の「救済」を

 日病協の要望は、大きく(1)2014年度に行われた消費税対応改定の補填不足の救済(2)2019年10月に予定される消費増税への適切な対応―の2点に分けることができます。重なる部分もありますが、分けて見てみましょう。

 保険医療については「消費税は非課税」となっているため、医療機関や薬局(以下、医療機関等)が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、医療機関等が最終負担をしています(いわゆる「控除対象外消費税」)。このため、物価や消費税率が上がれば、医療機関等の負担もダイレクトに大きくなるため、1989年の消費税導入時から「医療機関等の消費税負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定を行う」(以下、消費税対応改定)こととなっています(消費税導入時の1989年度、消費税率引き上げ時の1997年度と2014年度)。

社会保険診療報酬については消費税が非課税となっており、患者や保険者は消費税を医療機関に支払わない。このため医療機関が卸に納めた消費税(80円)について「仕入税額向上」も受けられず、医療機関が負担することになり、いわゆる「損税」が発生する。

社会保険診療報酬については消費税が非課税となっており、患者や保険者は消費税を医療機関に支払わない。このため医療機関が卸に納めた消費税(80円)について「仕入税額向上」も受けられず、医療機関が負担することになり、いわゆる「損税」が発生する。

 
2014年度には消費税率が5%から8%に引き上げられたため、初診料や再診料、各種入院料といった「基本診療料」を引き上げる、消費税対応改定が行われました。厚生労働省が、この2014年度の消費税対応改定の効果を調べたところ、当初は▼医療機関等全体では、消費税負担に対し102.07%の補填(診療報酬収入の上乗せ)がなされた▼個別医療機関ではバラつきがある(例えば、一般病院では101.25%、精神科病院では134.47%の補填がなされたが、特定機能病院では98.09%、こども病院では95.39%にとどまる)—と分析されました(2015年11月、関連記事はこちら)。

しかし、最新の補填状況を調査・分析する過程で、上記データに誤りがあることが判明(複数月にまたがる入院で入院日数を重複してカウントしており、入院料収益が見かけ上大きくなっていた。このため、入院料に上乗せされた消費税対応改定分が大きく見積もられていた)。厚労省の再調査・分析では、例えば、▼病院全体の補填率は2014年度82.9%(訂正前は102.36%)、2016年度85.0%にとどまる▼特定機能病院の補填率は、わずか2014年度61.4%(訂正前は98.09%)、2016年度61.7%であった―など、急性期病院を中心とした「大幅な補填不足」「医療機関ごとの大きなバラつき」が生じていることが分かりました(関連記事はこちら)。

 この問題について、日病協では、「補填不足、計算違いの原因を詳細に調べ、結果をすべて公表する」とともに、「2014年度以降の補填不足に対し、有効な救済措置を創設する」ことを要望しています。修正後データからは、単純計算で「病院全体・4年間(2014-17年度)分で888億円の補填不足がある」ことになります(「特定機能病院の不足額9239万8000円×病院数」+「子ども病院の不足額3161万9000円×病院数」・・といった計算)。日病協の代表者会議では、「病院経営は非常に厳しい。その厳しさの背景には、消費税負担の補填不足もあるのではないか」という意見が多数出されており、今回の「補填不足分に対する救済措置」要望につながったものです。

2019年10月の消費増税に合わせ、「個別医療機関の過不足を調整」する仕組み創設を

 (2)は来年(2019年)10月に予定される消費税率引き上げにおいて、「公平な補填」「過不足のない補填」を求める内容です。

 日病協では、▼診療報酬での対応が必要となった場合、すべての医療機関、とくに病院機能別に公平な補填を行う▼診療報酬での対応では、必ず補填のバラつきが残るため、各医療機関の「消費税補填相当額」(補填額)と「控除対象外仕入税額」(負担額)とを比較し、過不足には税制上での対応を可能とする仕組みを創設する―ことを求めています。

 これは、8月29日に三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院会協会で構成)とが、「医療界が一致団結できる具体的対応」として提言した内容、さらに厚生労働省が行った税制改正要望とも一致する内容です。

 今後、12月初旬から中旬の2019年度税制改正に向けて、どのような調整が行われるか注目が集まります。

 
 
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