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今後3年で社会保障改革が必要、元気高齢者活用やAIケアプラン等に取り組め―経済財政諮問会議

2018.4.13.(金)

 今後、3年程度の間に社会保障制度を「全世代型」に改革する必要があり、例えば「健康予防の推進」「元気な高齢者の【介護助手】としての育成」「1人当たり医療費・介護の地域差半減・縮減」「病床過剰地域におけるベッド削減」「オンライン診療の促進」「自立支援に即すAIケアプラン認定の仕組み」などに重点的に取り組むべきである―。

4月12日に開催された経済財政諮問会議で、有識者議員からこういった提言がなされました(関連記事はこちら)。

2022年から団塊の世代が後期高齢者になりはじめる

 75歳以上の後期高齢者になると、医療・介護ニーズが飛躍的に高まることが知られています。例えば、2015年度の1人当たり医療費を見ると、協会けんぽ(主に中小企業のサラリーマンと家族)では17万604円、健康保険組合(主に大企業のサラリーマンと家族)では15万1838円、国民健康保険(主に自営業者)では34万5608円であるのに対し、75歳以上の後期高齢者医療制度では93万6123円に跳ね上がります。

 人口ボリュームの大きな、いわゆる団塊の世代が、2022年から75歳以上の後期高齢者になり始めるため、医療・介護ニーズが今後、急速に高まっていくと予想されます。

 そうした状況の中で、我が国の経済を再生し、同時に財政の健全化を実現するためには、「社会保障改革」が必須であるとの指摘があります。

経済財政諮問会議の有識者議員(▼伊藤元重:東京大学大学院経済学研究科教授▼榊原定征:東レ株式会社取締役会長▼高橋進:日本総合研究所理事長▼新浪剛史:サントリーホールディングス株式会社顧問)も同様に、「今後3年程度の間に『全世代型社会保障制度』の実現を目指す必要がある」と指摘します。

そのために、まず「2019-21年度の予算編成を含めて、今後3年程度の構造改革期間内の取り組みを明示する」「社会保障関係費の歳出の目安となる水準を明らかにする」ことを求めています。

後者の「社会保障関係費の水準」については、▼賃金・物価上昇▼高齢化等の人口動態▼消費税率引き上げによる社会保障の充実―などを踏まえながら、「プライマリバランス(基礎的財政収支)の黒字化に『着実に』寄与すると考えられる水準」とすべきと釘を刺しています。

また前者の「構造改革期間内の取り組み」に関しては、高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据え、高齢化・人口減少、医療の高度化を踏まえて、▼健康予防の推進▼医療・介護のムダの排除と効率化の徹底▼高齢化・人口減少を見据えた地域のサービス体制の整備▼給付と負担の見直し―など「医療・介護において総合的かつ重点的に取り組むべき政策」をまとめ、実行に移すことを要望。加えて、▼国民、保険者、自治体等の行動変容のための見える化、インセンティブ改革などに向け、優先順位を付けた予算編成とする▼改革工程表の44項目を推進し、新たな課題についても改革工程を示す―ことなども求めています。

元気高齢者の介護助手としての活用や、アウトカム評価の拡大などを提言

さらに有識者議員は、「医療・介護において総合的かつ重点的に取り組むべき政策」について、(1)健康予防の推進、生涯現役、在宅での看取り等(2)医療・介護提供体制の効率化(3)医療・介護サービスの生産性向上(4)見える化、技術革新を活用した業務イノベーション、先進事例の横展開等—という4本の柱を立て、それぞれに具体例を掲げています。

まず(1)の「健康予防の推進、生涯現役、在宅での看取り等」に関しては、▼生活習慣病(糖尿病、高血圧性疾患など)の重症化予防に関する先進・優良事例の全国展開(KPIを引き上げ、今後3年間で徹底して取り組む)▼保険者ごとにバラバラになりがちな保健事業について、都道府県と市町村が連携し一体的に実施する▼短時間労働者等に対する被用者保険(協会けんぽや健保組合など)の適用拡大▼元気な高齢者の「介護助手」としての育成・雇用▼ACP(Advanced care planning、人生の最期にどういった医療・ケアを受けたいかを医療関係者や家族、友人と繰り返し話し合う取り組み)の展開—などを掲げました(関連記事はこちら)。

三重県で「元気な高齢者を『介護助手』として招き、介護施設等の補助を担ってもらう」取り組みがスタートし、全国各地に広がっている

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また(2)の「医療・介護提供体制の効率化」では、▼1人当たり医療費・介護費の地域差半減・縮減に向けた「地域別の取り組み・成果」の見える化▼病床過剰地域における病床削減の加速化▼本人の同意の下で、「レセプト情報を個人単位で集計し、医師や薬剤師や投薬歴等の際にデータを閲覧し、多剤投与を継続的に適正化する」仕組みの構築▼地域別の医療・介護提供体制の再検討に基づく、「地域間連携」「オンライン診療、遠隔服薬指導」などの促進―が必要としています。

西日本では、ベッドが過剰であることが示されており、これが医療費の地域差に大きく影響していると目される

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(3)の「医療・介護サービスの生産性向上」では、▼成功報酬型を含めた、健康予防・保健事業におけるサービスの質・効率性の向上▼診療報酬・介護報酬における「包括化」「アウトカム評価」の拡大▼ロボット・IoT・AI・センサーの活用、業務分担の見直し、事業所マネジメントの改革等—を進めるべきと提言します。

この点、診療報酬では、▼急性期入院医療におけるDPC▼ほぼ完全な包括報酬の「短期滞在手術等基本料3」▼慢性疾患に対する「地域包括診療料」—など、包括化は進められており、また介護報酬では、サービスの種類ごとに包括報酬である「基本サービス費」が設定されており、今後、「包括化が具体的に何を意味するのか」などを詳しく検討してく必要があるでしょう。

またアウトカム評価については、2018年度同時改定で、診療報酬では「回復期リハビリテーション病棟入院料」、介護報酬では「通所介護のADL維持等加算」に真正面から導入されており、今後、課題などを見ながら拡大を探っていくことになるでしょう。

AIを活用したケアプラン作成に期待

さらに(4)の「見える化、技術革新を活用した業務イノベーション、先進事例の横展開等」では、▼保険者努力支援制度(医療費適正化に積極的に取り組み、成果を出す都道府県へのインセンティブ)の評価への追加▼性・年齢・所得で調整した「標準的医療費」を基準として普通調整交付金(国保における医療費水準・所得の格差を埋める補助金)を配分する仕組みへの見直し▼科学的介護の推進、自立支援型介護の普及▼優先順位を付けたうえでの、認知症予防、ゲノム医療等の研究開発推進―などを提言しました。

このうち「科学的介護、自立支援型介護」については、「自立支援に資するAIケアプランを認定する仕組みの導入」「ケアマネジャーの業務の在り方の検討と合わせた、AIケアプランの実用化・普及の推進」を求めています。

ケアプランは、要介護者の状態(身体状況、精神状況、居住家屋の状況、家族の状況)や、意向(どのように生活したいか、など)を踏まえて、ケアマネジャー(介護支援専門員)が公正・中立の立場で、必要な介護サービスを組み合わせて作成することが原則です。ただし、中には「要介護者の意向のみを反映させたプラン」や「自身の所属する介護サービスを偏重するプラン」「自身の理解が及ぶ介護サービスのみを組み合わせたプラン(例えば医療系を除外するなど)」があることが問題視され、「ケアマネジャーの資質向上や公正・中立性の確保」が極めて大きな課題となっています。

この点、例えば「○○という状態の要介護者には、●●サービスを週◆回実施することがもっとも効果的である」というエビデンスが確立され、これが集積されていけば、AI(人工知能)が、個々の利用者に最適なケアプランを作成することも期待され、さらに「データの集積」→「プランの修正」→「要介護度の改善」といった正のスパイラルを生むことも可能でしょう。もちろん、こうした仕組みが「今後3年間」で実現可能か(データの集積は2020年度からスタートである)となると疑問符も付きますが、そう遠くない将来「AIによるケアプラン」が主流となる時代が来ることに期待が集まります(関連記事はこちら)。

 
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