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2018年度診療報酬改定、効率的医療提供や働き方改革推進を視点に―医療保険部会

2017.9.7.(木)

 2018年度の次期診療報酬改定に向けて、社会保障審議会の医療保険部会で「基本方針」策定議論が始まりました。

 6日の会合では、厚生労働省から▼改定に当たっての基本認識▼改定の基本的視点と具体的方向性—に関する叩き台が示され、これに基づく議論が行われました。「質の高い医療提供」のみならず、少子化を踏まえた「効率的な医療提供」や、働き方改革の推進に向けた「業務負担軽減」など、次期改定に向けたキーワードが見えてきました。

 基本方針策定論議は、社会保障審議会の医療部会でも並行して進められ、12月上旬にはまとまる見込みです。

9月6日に開催された、「第106回 社会保障審議会 医療保険部会」

9月6日に開催された、「第106回 社会保障審議会 医療保険部会」

人口減少社会の中で医療の支え手不足が生じる、「効率性」も重視した改定に

 2006年度の診療報酬改定から、▼基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で策定する▼改定率は内閣が予算編成過程で決定する▼基本方針と改定率に沿って、具体的な点数設計を中央社会保険医療協議会で行う—という役割分担が行われています。かつて、中医協に改定に関する権能が集中し、汚職事件が起きてしまったためです。

 概ね、12月初旬に基本方針が決定され、12月下旬に改定率が定まり、年明け1月から中医協で「短冊」と呼ばれる具体的な改定項目案に沿った議論が行われます。もっとも基本方針を待っていたのでは改定論議が間に合わないことから、中医協では先んじて基礎的な議論が進められていることはメディ・ウォッチでもお伝えしているとおりです。

 9月6日の医療保険部会では、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長から基本方針策定論議のための、いわば「叩き台」が示されました。黒田課長は、2018年度には介護報酬との「同時改定」が行われることから、地域包括ケアシステム構築に向けて「医療・介護の役割分担と連携」が重要テーマになることを強調した上で、政府の進める働き方改革やこれまでの重点課題なども踏まえて、▼基本認識▼基本的視点と具体的方向性—のそれぞれについて、柱を立てるとともに、具体的な改定方向を例示しています。

 まず前者の基本認識では、(1)健康寿命の延伸、人生100年時代を見据えた社会の実現(2)地域包括ケアシステムの構築(3)医療・介護現場の新たな働き方の実現、制度に対する納得感の向上―という3つの柱を立てました。

このうち(1)では、「質が高く効率的な医療の実現」や「制度の持続可能性」など『効率性』を強く意識した項目が並んでいます。また(2)の地域包括ケアシステム構築に関しても、「切れ目のない医療・介護提供体制の構築」を上げるとともに、「生産年齢人口の減少などを踏まえ、将来を見据えた医療提供体制の構築」といった点を掲げており、ここでも「効率性」が意識されています。

さらに(3)では、安倍晋三内閣の進める「働き方改革」や「未来投資戦略2017」「ニッポン一億総活躍プラン」などへの対応と同時に、「医療資源の効率的な配分」といった項目にも言及され、やはり「効率性」が重視されています。

「高齢化の進展に伴う医療・介護ニーズの増大」が強調されますが、我が国では出生数そのものが減少しており、今後、医療の支え手(財政面はもちろん、医師・看護師などの医療従事者、メディカル・スタッフ)が減少していきます。こうした点を踏まえて「効率性」が強調されており、「医療費の適正化」だけの視点ではない点に留意する必要があります。

2018年度の次期診療報酬改定基本方針に向けて、厚労省が示した「叩き台」(その1)

2018年度の次期診療報酬改定基本方針に向けて、厚労省が示した「叩き台」(その1)

12月初旬には基本方針を固める、委員からは具体的な改定要望も

 後者の基本的視点としては、これまでの診療報酬改定基本方針も踏まえ、さらに近年の醸成などを勘案した次の4本の柱が立てられ、それぞれ「改定の方向性」が例示されました。

(1)地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
例えば、▼病床機能の分化・強化、連携に合わせた入院医療の評価▼退院支援、医科歯科連携、病診薬連携、栄養指導▼質の高い在宅医療・訪問看護の確保―など

(2)新しいニーズにも対応できる安心・安全で質の高い医療を実現・充実する視点
例えば、▼質の高いリハビリの評価などアウトカムに着目した評価の推進▼質の高いがん医療の評価▼難病患者への適切な医療の評価▼小児・周産期・救急医療の充実▼ICTなどの新技術を活用した医療連携、医療に関するデータの収集・利活用の推進―など

(3)医療従事者の負担を軽減し、働き方改革を推進する視点
例えば、▼チーム医療(タスクシェア、タスクシフトなど)、勤務環境の改善、医療従事者の負担軽減▼遠隔診療も含めたICTなどの活用―など

(4)効率性・適正化を通じて制度の安定性・持続可能性を高める視点
例えば、▼薬価制度抜本改革の推進▼費用対効果評価▼退院支援などの取り組みによる在宅復帰の推進―など

2018年度の次期診療報酬改定基本方針に向けて、厚労省が示した「叩き台」(その2)

2018年度の次期診療報酬改定基本方針に向けて、厚労省が示した「叩き台」(その2)

 
 この叩き台に沿って、12月初旬まで基本方針策定論議が行われますが、9月6日の会合でも委員から多数の意見が出されています。

 松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「遠隔診療を含めたICTなどの活用」に関して、「医師が患者と対面してきちんと診療を行うことが基本である。スマートフォンで診療ができると主張される方もいるが、間違っている」と指摘。今後の中医協論議を牽制するものと言えます(関連記事はこちらこちらこちら)。同じく医療者である武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、過疎地では医療・介護サービスそのものが不足しており、保険制度で誘導しなければ医療・介護提供がかなわなくなってしまう」とし、診療報酬による地域偏在の是正を検討すべきと提言しています。

 菊池令子委員(日本看護協会副会長)は、▼機能強化型訪問看護ステーションの拡充▼医療保険の訪問看護レセプトの電子化推進▼特定行為研修を修了した看護師の活用推進―などを具体的に要望。

一方、費用負担者側のうち経営者サイドの望月篤委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)は、▼連携の強化とサービスの効率化▼地域包括ケアシステムの実現に向けた機能分化の推進▼メリハリのついた報酬体系―の3点を掲げ、「診療報酬改定にあたっては、経済成長や財政健全化との調和も重要な柱の1つ」と訴えています。

また、同じ費用負担者側でも労働者サイドの新谷信幸委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「病院に勤務する医師も看護師も労働者である。働き方改革を推進する中で、医療従事者の勤務環境改善を進めてほしい」と強調しています。

さらに元中医協会長である遠藤久夫部会長(国立社会保障・人口問題研究所長)は「診療報酬と介護報酬の同時改定がメインテーマであるなら、基本方針にも両者のリンクが明確になるとよいのではないか」と提案しました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

  
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