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要介護者の自立支援に向けた取り組み実績に基づき、市町村などに交付金—介護保険部会

2017.11.14.(火)

 2018年度から、介護保険制度の中で、「自立支援」に積極的に取り組む市町村と都道府県に対し「新たな交付金」が交付される。交付の基準として、▼地域包括ケア「見える化」システムを活用して他の保険者と比較するなど、当該地域の介護保険事業の特徴を把握しているか▼2025年度に向けて、自立支援、重度化防止などに資する施策の目標、目標実現のための重点施策を決定しているか▼医療計画も踏まえつつ、地域の在宅医療の利用者や、在宅医療の整備目標などを参照しつつ介護サービス見込み量を定めているか▼地域包括支援センターに対して3職種の配置を義務付けているか▼一定期間における要介護認定者の要介護認定等基準時間や認定の変化率の状況はどうか―といった評価指標を設定してはどうか―。

 11月10日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、厚生労働省からこういった考えが示されました。

 介護保険部会では「新たな交付金」の財源についても議論となり、調整交付金の一部を活用すべきか否かについて賛否両論が出ています。

11月10日に開催された、「第73回 社会保障審議会 介護保険部会」

11月10日に開催された、「第73回 社会保障審議会 介護保険部会」

厚労省が市町村・都道府県向けに、取り組み実績を評価する指標案を示す

今年(2017年)5月に成立した改正介護保険法(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律)では、▼医療・介護・住まいの3機能を併せ持つ『介護医療院』の新設▼介護納付金における総報酬割の段階的導入▼高所得者に対する3割負担の導入▼自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化—などがポイントとなっています(関連記事はこちらこちら)。

このうち「自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化」では、▼地域課題の分析→▼自立支援に向けた取り組み内容や目標の介護保険事業(支援計画)への記載→▼取り組みの実施→▼実績の評価というPDCAサイクルを回すとともに、「実績」に基づいて保険者などにインセンティブが付与されます。

改正介護保険法では、市町村や都道府県に対して、自立支援に向けたPDCAサイクルを回すことを求めている

改正介護保険法では、市町村や都道府県に対して、自立支援に向けたPDCAサイクルを回すことを求めている

 
インセンティブとして「新たな交付金」が交付されますが、「実績」を評価する指標について厚労省老健局介護保険計画課の橋本敬史課長は、次のような評価指標案を提示しました。

【市町村向け】
I.PDCAサイクルの活用による保険者機能強化に向けた体制などの構築(▽地域包括ケア「見える化」システムを活用して他の保険者と比較するなど、当該地域の介護保険事業の特徴を把握しているか▽2025年度に向けて、自立支援、重度化防止などに資する施策の目標、目標実現のための重点施策を決定しているか▽医療計画も踏まえつつ、地域の在宅医療の利用者や、在宅医療の整備目標などを参照しつつ介護サービス見込み量を定めているか—など)

II.自立支援、重度化防止などに資する施策の推進(▽地域密着型サービスの整備を図るため、保険者独自の取組を行っているか▽保険者として、ケアマネジメントに関する保険者の基本方針を、ケアマネジャーに伝えているか▽地域包括支援センターに対して3職種の配置を義務付けているか▽介護予防・日常生活支援総合事業の創設やその趣旨について、地域の住民やサービス事業者に対して周知を行っているか▽一定期間における要介護認定者の要介護認定等基準時間や認定の変化率の状況はどうか—など)

III.介護保険運営の安定化に資する施策の推進(▽介護給付の適正化事業の主要5事業のうち、3事業以上を実施しているか▽ケアプラン点検をどの程度実施しているか▽医療情報との突合・縦覧点検を実施しているか—など)

新たな交付金の評価指標案(市町村向け、抜粋)

新たな交付金の評価指標案(市町村向け、抜粋)

 
【都道府県向け】
I.管内市町村の介護保険事業に係るデータ分析などを踏まえた地域課題の把握と支援計画(地域包括ケア「見える化」システムその他の各種データを活用し、当該都道府県・管内市町村の地域分析を実施し、当該地域の実情、地域課題を把握しているか、またその内容を保険者と共有しているか、など)

II.自立支援、重度化防止など、保険給付の適正化事業などに係る保険者支援の事業内容(▽保険者による地域包括ケア「見える化」システムによる地域分析、介護保険事業の策定に係り、市町村への研修事業やアドバイザー派遣事業などを行っているか▽生活支援体制の整備に関し、生活支援コーディネータ―養成や好事例発信などの「市町村を支援するために必要な事業」を行っているか▽自立支援、重度化防止等に向けた市町村の取組支援のため、リハビリ専門職などの人的支援を職能団体と連携して取り組んでいるか—など)

II.管内市町村における評価指標の達成状況による評価(管内市町村における、一定期間の間の要介護認定者の要介護認定等基準時間や認定の変化率の状況はどうか、など)

新たな交付金の評価指標案(都道府県向け、抜粋)

新たな交付金の評価指標案(都道府県向け、抜粋)

 
 介護保険部会では、これらの指標案に明確に反対する意見は出ていませんが、「小規模市町村ではマンパワーも限られており、対応に向けた支援を行うべき」(鈴木邦彦委員:日本医師会常任理事)、「介護保険ユーザーである利用者・家族の視点を盛り込むとともに、定量評価可能な『数値目標』を設定すべき」(佐野雅弘委員:健康保険組合連合会副会長)といった注文が出されています。また、学識者である土居丈朗委員(慶應義塾大学経済学部教授)や栃本一三郎委員(上智大学総合人間科学部教授)は、「段階的なブラッシュアップ」を要望しています。

 評価指標は年内に固められる見込みですが、市町村・都道府県には「初めての試み」となるため、すべての自治体で指標が確定するまでには一定の時間がかかることでしょう。これを踏まえて、2018年度中に新たな交付金が交付されることになります(現在の調整交付金は当該年度の12月交付)。

新たな交付金の財源として、調整交付金を活用すべきか

 この「新たな交付金」の財源をどう考えるかは、まだ決まっておらず、年末の予算編成過程で財務省・厚労省間で協議していくことになります。ただし、骨太方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017)では「調整交付金の活用」が検討課題とされており、介護保険部会でも賛否両論が出ています。

 介護保険制度の財源は、保険料が50%、公費負担が50%となっています。このうち公費は、▽国25%▽都道府県12.5%▽市町村12.5%—という分担割合です。国25%のうち5%分は「市町村の責に帰せない、後期高齢者の比率の高さ、被保険者の所得水準の低さ」による保険料の高低を調整するために用いられます(調整交付金)。後期高齢者が増えれば、それだけ介護サービス受給者も多くなり、介護保険料が高くなってしまうため、こうした市町村には調整交付金を多め交付し(その分、後期高齢者などの少ない市町村には調整交付金が少なくなる)、保険料の上昇を抑えることにしているのです。

調整交付金の概要、2018年度から交付基準の細分化を行っている

調整交付金の概要、2018年度から交付基準の細分化を行っている

 
 この調整交付金の目的・趣旨に照らし、大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、香川県高松市長)や藤原忠彦委員(全国町村会顧問、長野県川上村長)らは「新たな交付金に、調整交付金を活用する」考え方に強く反対。鈴木邦彦委員や伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)らも、大西委員らと同様の見解を示しています。

 一方、土居委員らは「財源をどうするかでもめるよりは、どう介護保険の中で捻出すべきかを検討するほうがシンプルではないか」と述べ、調整交付金活用に一定の理解を示しています。また佐野委員も、財政制度等審議会の示す方式(自立支援に向けた取り組み実績に応じて減額した調整交付金を再配分する方式)に一定の理解を示しています。年末の予算編成に向けて、どのような議論が行われるのか、この点も注目されます。

財政制度等審議会・財政制度分科会(2017年10月25日)に財務省が提示した、調整交付金の活用に関する提案。介護保険部会では、佐野雅弘委員(健康保険組合連合会理事)が案2に理解を示している

財政制度等審議会・財政制度分科会(2017年10月25日)に財務省が提示した、調整交付金の活用に関する提案。介護保険部会では、佐野雅弘委員(健康保険組合連合会理事)が案2に理解を示している

 
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