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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

地域包括支援センター、「土日の開所」や「地域での相談会実施」など相談支援機能の拡充を―介護保険部会(1)

2016.9.30.(金)

 地域包括支援センターについて、▼土曜日、日曜日、祝日の開所▼電話などによる相談体制の拡充▼地域に出向いた相談会実施―などを通じて相談支援機能を強化するとともに、ケアマネジメント支援業務の対象を「地域全体をターゲットとする支援」へと拡充してはどうか―。

 こういった論点が、30日に開かれた社会保障審議会・介護保険部会で厚生労働省から提示されました。

 業務の拡充に合わせて、厚労省は年末の予算編成にかけて人材確保のための経費(予算)確保に力を入れる考えです。

9月30日に開催された、「第65回 社会保障審議会 介護保険部会」

9月30日に開催された、「第65回 社会保障審議会 介護保険部会」

地域包括支援センター、ケアマネだけでなく地域全体を支援する組織へ

 地域包括支援センターは、「地域における介護相談の最初の窓口」として市町村単位で設置されており、次の4業務を担うことが求められています。

地域包括支援センターの概要

地域包括支援センターの概要

(1)住民の各種相談を幅広く受け付けて、制度横断的な支援を行う「総合相談支援業務」

(2)判断能力などの衰えた高齢者の権利を守る「権利擁護業務」

(3)困難事例に直面したケアマネの支援などを行う「包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

(4)要支援者などのケアプラン作成などを行う「介護予防ケアマネジメント」(第1号介護予防支援事業)

 しかし、「本来、地域包括支援センターに求められている(1)の総合相談支援業務や(3)の包括的・継続的マネジメント支援業務を十分に行えていない」との指摘があります。そこで、厚労省は30日の介護保険部会に、次のような論点を提示しました。

(a)センターのケアマネジメント業務について、現在「ケアマネジャー個人への支援」が中心となっているが、「サービス事業所などを含めた地域全体をターゲットとする支援」に拡充する。同時にケアマネジメント支援の全体像を整理し、業務プロセスや取り組み事項、地域ケア会議の業務などを具体化・明確化する((3)の強化のため)

(b)「センターの土曜日、日曜日、祝日の開所」「電話などによる相談体制の拡充」「地域に出向いた相談会の実施」など、相談支援を強化する((1)の強化のため)

(c)在宅医療・介護連携を進めるため、「ケアマネジャーが決まっていない患者」に対するケアマネ選定支援や、予防給付などの利用が見込まれる患者に対する退院支援(サービス調整)などをセンター業務に位置づける

 このうち(b)を実現するためには新たな人員の確保などが必要になるかもしれません。厚労省老健局振興課の三浦明課長は「年末の予算編成にかけて努力する」旨のコメントをしており、補助金などの確保による「環境整備」も同時に行う考えを示しています。

 (c)は、例えば「疾病・負傷の治療を終え退院できる状態になっているが、退院後の介護保険サービスが決まっておらず、退院が困難」といった患者に対して、病院からの依頼に応じてセンターがケアマネを紹介するなどし、円滑な退院支援を行うことを目指すものと言えます。2016年度診療報酬改定では、ケアマネと病棟看護師との連携などを要件とする「退院支援加算1」が新設されましたが、介護保険からも「円滑な退院支援」に強力にアプローチしていくことになります。

 なお、地域包括支援センターでは、現在、包括的支援を行うために保健師・社会福祉士・主任ケアマネの3職種配置が必要です。しかし、これら専門職の確保が難しい地域もあるため、厚労省は「準ずる者」での代替を認めています(地域包括支援センターの設置運営基準)。

 しかし、厚労省の調べでは、保健者を除いて専門職の配置が一定程度完了している実態があることが判明。そこで、▼社会福祉士・主任ケアマネについては「準ずる者」での代替を不可とする▼保健師については「準ずる者」の規定を残すが、新たに「高齢者の公衆衛生業務経験」を新たな要件とする―こととする考えが示されました。

地域包括支援センター、業務量などを定量的に把握した上で、適切な人員確保へ

 ところで介護保険部会では、5月25日にも地域包括支援センターを議題としました。その際には、複数の委員から「センターの業務量が過大であり、例えば上記(4)の要支援者のケアマネジメント業務をセンター業務から切り分けてはどうか」といった指摘が出されていました。2015年の調査で、センターから「総合相談支援(上記(1))や要支援者のケアマネジメント(上記(4))、地域でのネットワーク構築などで業務量が過大となっている」とのアンケート結果を踏まえた意見です。

地域包括支援センターでは「業務量が過大」と考えており、例えば総合相談支援や要支援者のケアマネジメント業務などが負荷になっていると感じている

地域包括支援センターでは「業務量が過大」と考えており、例えば総合相談支援や要支援者のケアマネジメント業務などが負荷になっていると感じている

 30日の部会で東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、「多くの委員からの指摘があり、センター業務の切り分けや軽減を論点に反映すべきではないか」と指摘しました。

 また東委員以外にも石本淳也委員(日本介護福祉士会会長)や齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)らもは「センター業務の切り分け、軽減が必要」という旨の指摘を改めて行っています。

 これに対し厚労省の三浦振興課長は、「センターの業務量が過大」と指摘については、「肌感覚で『忙しい』というだけでは議論できない」とし、センターでどのような業務を行って、その量はどの程度かを評価し、それをベースに「適切な人員体制」の確保を検討する必要があるとの考えを示しています。さらに、具体的に「センターの評価指標を国で定め、市町村・センターについてこの指標に基づく評価を義務づける。評価の実施を通じて『適切な人員体制』の確保を促す」との論点も示しています。

 また三浦振興課長は、東委員らの指摘について「宿題」と受け止めており、地域包括センターへの上記論点に対する反対意見ではないとの考えも示しています。

市町村の介護予防事業、都道府県や医療機関による支援が必要

 このほか30日の介護保険部会では、「介護予防、地域支援事業の推進」に向けて次のような論点を示しています。これらについては、いくつかの注文が委員から出されたものの、概ね了承されており、今後、具体的な制度化に向けた検討が行われます。

▼介護予防・自立支援に特化し、現状を反映する指標を検討する(現在も「住民の通いの場への参加率」などプロセス・アウトカムを評価する指標がある)

▼都道府県、医療機関などの関係者が、介護予防・自立支援のための人材(リハビリ専門職など)派遣や情報提供などの協力をしやすくする(制度の中に「都道府県の役割の明確化」などを行う)

▼介護予防に積極的に取り組む住民へのインセンティブ付与(岡山市で行われている介護予防ポイント事業など)を既存事業でも実施可能なことを明確化する

▼市町村への財政的なインセンティブ付与について検討するにあたり、評価指標として「地域ケア会議の実施状況」「生活支援コーディネーターの活動状況」「地域包括支援センターにおけるケアマネジメント支援などの実施状況」などを設定する

 

 また、2014年の介護保険制度改革では、要支援者に対する訪問・通所介護を、介護保険サービスから市町村の「地域支援事業」に移管するという見直しが行われました。30日の部会では移行状況などが厚労省から解説され、「さらなる移行促進を図っていく」ことが確認されています。この点は、別にお伝えします。

 
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