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2019年度、医療・年金などの経費は6179億円増に抑え、29兆8241億円に—2019年度厚労省概算要求

2018.9.3.(月)

 厚生労働省は8月29日に、来年度(2019年度)予算の概算要求を行いました。年金や労働保険などの特別会計を含まない一般会計は31兆8956億円を要求し、これは前年度当初予算に比べて7694億円・2.5%の増額要求となります(厚労省のサイトはこちら(概要)こちら(主要事項)こちら(各部局の概算要求))。
2019年度予算概算要求(厚労省)1 180829
 
 このうち年金・医療など社会保障に係る経費については、前年度に比べて6179億円の増額要求を行っています。2019年度は、「2025年の基礎的財政収支(PB)黒字化を目指した『基盤強化期間』の初年度」であり、社会保障費の伸びは「高齢化相当」に抑えることとされています(考え方は2016-2018年度と同じ)。財務省は「6000億円増」まで認める方針を示しており、内閣府の削減分(200億円)と合わせると、この指示を達成できているようです(関連記事はこちら)。

働き方改革や地域医療構想の実現などを重点事項に

 厚労省の2019年度予算概算要求の枠組みを見ると、▼年金・医療などに係る経費について、「高齢化などに伴う増加」として前年度から6000億円増を見込む▼義務的経費は前年度並みとする▼その他の経費(裁量的経費・公共事業関係費)は公共事業関係費などを前年度から10%削減する▼「新しい日本のための優先課題推進枠」(以下、推進枠)として別途2425億円を見込む—という形になっています。

 人生100年時代を見据えた1億総活躍社会の実現を目指して、「全世代型社会保障の基盤強化」を行うために、厚労省は2019年度の重点要求として、(1)働き方改革・人づくり革命・生産性革命(2)質の高い効率的な保健・医療・介護の提供(3)すべての人が安心して暮らせる社会に向けた福祉等の推進—の3分野を位置付けています。2018年度と大枠としては同じ形です。
2019年度予算概算要求(厚労省)2 180829
 
このうち(1)の働き方改革に関しては、注目される「医療従事者の働き方改革」を進めるために、今年度(2018年度)に比べて15億1000万円増の21億円を要求します。具体的には、▼タスク・シフティング等の勤務環境改善を⾏う医療機関の⽀援▼医療勤務環境改善⽀援センターによる医療機関の訪問⽀援▼看護業務の効率化に向けた取組の推進—などを行います。

あわせて生産性の向上に向けて、医療分野では「全国的な保健医療情報ネットワークの稼働に向けた患者同意の下での情報共有に係る課題の検討・実証」や「中心的なICUで複数のICUの患者モニタリングを実施するTeleーICU体制の整備」「電⼦処方箋の推進に係る実証や、電⼦版お薬手帳の機能強化」のために24億円、介護分野等では「モデル事業所における具体的取組の展開や、成果のガイドラインへの反映など」「介護ロボットの開発・活用⽀援、ICTの活用⽀援」などに74億円を要求しました。

さらに介護人材確保のための処遇改善などに60億円の要求も行っています。

 
また(2)の質の高い効率的な保健・医療・介護の提供に関しては、例えば次のような施策を推進する構えです。

【誰もが安心して受けられる医療・介護】、
▼地域医療構想をはじめとした地域医療確保対策の推進(地域医療介護総合確保基金による支援など)に645億円(前年度に比べて10億円増)▼医師偏在対策の推進に120億円(同7億円増)▼介護離職ゼロの実現に543億円(同31億円増、上記の処遇改善等も含む)—など

【健康寿命延伸、受動喫煙対策、がん・肝炎・難病対策の推進】
▼予防・健康づくりに63億円(同29億円増)▼がんゲノム医療等の推進に58億円(同13億円増)▼難病対策の推進に11億円(同4億8000万円増)—など

【科学技術・イノベーションの推進】
▼データヘルス改革の推進(NDBと介護DBの連結や、医療保険のオンライン資格確認等システムの構築など)に443億円(同271億円増)▼保健医療分野等の研究開発推進に686億円(同116億円増)—など

健康づくり、疾病予防等の推進に向け、先進的な事業を行う自治体を支援

 次に2018年度厚労省予算概算要求の主要事項のうち、医療・介護分野に関連の深い事項を、上記の重点事項に含まれた内容も含めて眺めてみましょう(上述も含む)。

 まず、「医療従事者の働き方改革」に向けて、▼タスク・シフティング等の勤務環境改善を行う医療機関の支援(6億9000万円)▼医師の働き方改革に向けた地域リーダー育成や国立保健医療科学院等における病院長研修の実施(7200万円)▼「医療勤務環境改善支援センター」からの、労務管理等の専門家による医療機関の訪問支援(5億9000万円)▼国民への「医療機関への適切なかかり方」等の周知啓発(4億4000万円)▼女性医師等のキャリア支援に向けた「女性医師等支援で中核的な役割を担う拠点医療機関」の構築(8000万円)▼看護業務の効率化に向けた取組の推進(2900万円)—などを行います。

2018年度中に「医師の働き方改革に関する検討会」が結論をまとめ、そこで示された医師の負担権限方策について、来年度(2019年度)から具体的・本格的な推進が始まります(可能なものは既に実施開始)。厚労省では、「想定される」負担軽減方策を先取りして要求している格好です(関連記事はこちらこちら)。

 
医療提供体制に関しては、なんといっても「地域医療構想の実現」が注目されます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。さらに、医師偏在等の解消に向けた「医師確保対策」の推進も非常に重要です。厚労省では、これらに向けて、▼地域医療構想の達成に向けた地域医療介護総合確保基金による支援(622億円)▼新専門医制度の研修に関する日本専門医機構への支援(4億3000万円)▼特定行為に係る看護師の研修制度の推進(5億8000万円)▼在宅医療の推進に向けた先進事例等の横展系など(3100万円)▼ACP(Advanced Care Planning)の普及など「人生の最終段階における医療」の体制整備(1億7000ま年)▼在宅看取りに関する研修(2200万円)▼医師少数区域等で勤務した医師の認定制度開始に向けた調査・検討(5300万円)—などを実施する考えです。

 
さらに「予防・健康管理の推進」に向けた施策としては、次のような項目が目を引きます。

▽データヘルス(医療保険者によるデータ分析に基づく保健事業)の効果的な推進(15億円)
・レセプト・健診情報等の分析に基づいた保健事業等の推進(医療保険者による予防・健康づくりの推進に向け、「加入者への意識づけ」「予防・健康づくりへのインセンティブの取組」「生活習慣病の重症化予防等」を推進し、先進的なデータヘルスを全国展開する):14億円
・保険者協議会における保健事業の効果的な実施への支援:

▽先進事業等の好事例の横展開等(47億円)
・「高齢者の保健事業と介護予防の市町村における一体的な実施」への支援(高齢者の特性を踏まえた保健指導等により低栄養、筋量低下等による心身機能の低下の予防、生活習慣病等の重症化予防等の推進を図る。また高齢者の通いの場を中心とした介護予防・フレイル対策と生活習慣病等の疾病予防や重症化予防を一体的に実施する先行的な取組を支援する。さらに、重複・頻回受診者等に対する保健師等の訪問指導などにより適正受診等を促す):28億円
・糖尿病性腎症患者の重症化予防の取組への支援:6300万円
・後期高齢者医療広域連合における後発医薬品の使用促進への支援:4億円

▽保険者の予防・健康インセンティブの取組への支援(1億3000万円)

▽食事摂取基準を活用した高齢者のフレイル予防の推進(3700万円)

 
 
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