医師も「罰則付き時間外労働の上限規制」の対象とするが、医療の特殊性も検討―働き方改革
2017.4.4.(火)
「罰則付き時間外労働の上限規制」では、医師も対象とする。ただし応召義務などの特殊性に配慮し、労働基準法改正から5年後を目途に適用を開始する。また質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指した検討を行う—。
安倍晋三内閣総理大臣が議長を務める働き方改革実現会議は3月28日、こうした内容を盛り込んだ「働き方改革実行計画」を決定しました。政府は、既に国会に提出している労働基準法改正の早期成立を図るとともに、今年度(2017年度)中に実行計画を踏まえた労働基準法改正案を国会に提出する考えです。
医療界参加の下で、医療現場における規制の在り方などを検討
実行計画では、日本経済の再生を実現するためには生産性・労働参加率の向上が不可欠とし、そのためには「誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる社会を創る必要がある」と強調。(1)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善(2)賃金引上げと労働生産性向上(3)罰則付き時間外労働の上限規制導入など長時間労働の是正(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備(5)女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備(6)病気の治療と仕事の両立(7)子育て・介護などと仕事の両立、障害者の就労(8)雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援(9)誰にでもチャンスのある教育環境の整備(10)高齢者の就業促進―を柱とする働き方改革の実行を宣言しています。
このうち(3)の罰則付き時間外労働の上限規制導入では、次のような上限が設定されます。
▼時間外労働の限度を「1か月当たり45時間、かつ1年当たり360時間」(時間外労働の限度の原則)とし、違反した場合には、特例の場合を除いて罰則を課す
▼労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働時間を年720時間(=月平均60時間)とする。かつ、年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける
▼上限について、▽2か月・3か月・4か月・5か月・6か月の平均で、いずれも80時間以内▽単月では100時間未満―を満たさなければならないとし、原則を上回る特例の適用は年6回を上限とする
実行計画では、「医師も時間外労働規制の対象とする」点を明確にしました。ただし、医師には応召義務などの特殊性を踏まえた対応が必要なことから、▼改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用する▼医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る—こととしました。
例えば救急医療を考えれば、「医療界の特殊性を踏まえた規制の在り方」を医師側・患者側双方の視点に立って十分に検討する必要があります。
治療と仕事の両立目指し、疾患別サポートマニュアルなどを作成
また(6)の病気の治療と仕事の両立を実現するためには、何よりも「会社の意識改革と受入れ体制の整備」が必要となります。
そこで実行計画では、▼経営トップ、管理職などの意識改革▼両立を可能とする社内制度の整備▼がん・難病・脳血管疾患・肝炎などの疾患別サポートマニュアル(症状の特徴などを示し、●●疾患では▼▼の業務は免除・軽減が望ましいなど)の作成・普及▼傷病手当金(健康保険法第99条などに規定される、療養のために労務に服すことができない期間の収入を補填するための医療保険給付)の給付要件などの見直し―を行うことを明確にしました。
このほか、▼主治医、会社・産業医と、患者に寄り添う両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制構築▼産業医の能力向上や相談支援機能の強化など産業医・産業保健機能の強化▼企業における労働者の健康管理の強化▼産業医が効果的な活動を行いやすい環境の整備―などを実行することも示しています。
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