医師の働き方改革、細部論議の前に「根本的な議論」を改めて要請―四病協
2018.3.28.(水)
医師の働き方改革に関して、細部の議論が進んでいるが、一度立ち止まって根本的な議論をする必要があるのではないか。医師の特殊性や、地域医療の確保などを含めた議論をする必要がある旨を四病院団体協議会でまとめ、4月中旬にも厚生労働省に要請する―。
3月28日に開かれた四病院団体協議会の代表者会議で、こういった方針がまとまりました。同日に記者会見を行った日本病院会の相澤孝夫会長は、「病院勤務医の働き方改革が進められるのであるから、病院団体として立場を明確にする」考えを強調しています(関連記事はこちら)。
4月中旬にも、厚労省に対し「病院団体としての働き方改革に向けた要望書」を提出
現在の、我が国の医療提供体制は「医師の自己犠牲」(長時間労働など)の上に成り立っていると指摘されます。これを改善・是正するために「医師の働き方改革」が議論されています。
併せて、医療機関に勤務する医師にも「罰則付きの時間外労働規制」が適用されることとなっており、応召義務などの特殊性を踏まえた「医師への規制適用の在り方」が検討されています。
具体的な検討の場として、厚生労働省に「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)が昨年(2017年)8月に設置され、今年(2018年)2月に「中間的な論点整理」(これまでの議論を整理し、2019年3月の最終とりまとめに向けた論議の土台となるもの、関連記事はこちら)と、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」(直ちに各医療機関で実施すべき事項、関連記事はこちら)をまとめました。
しかし日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会で構成される四病院団体協議会(四病協)では、「『医師の時間外労働上限をどの程度にするか』といった細部の議論が進みつつあるが、これまで明確に病院団体の意見を表明していない。一度、立ち止まり、大筋の議論ももう一度すべきではないか」との共通認識に至っています。そこで、厚労省に対し、例えば、▼一般の労働法制を医師に適用するのではなく、応召義務など医師の特殊性を踏まえた労働法制を検討すべきである▼初期研修医や専攻医など「労働もしているが、教えも受けており、両者は分離できず重なり合っている」医師については、一般の医師とは別建てで考えるべきである▼「高度プロフェッショナル制度は医師に適用しない」との前提で議論が進められているが、改めて検討すべきである―といった内容を詰め、要請していく方針が固められました。相澤・日病会長は「このまま医師の働き方改革論議が進めば、日本の医療提供体制が壊れかねない。その点を留意した議論をする必要がある」と強調。4月中旬(遅くとも4月21日より前)にも厚労省に要望書を提出する構えです(関連記事はこちら)。
仮に医師にも、例えば一般労働者と同じ「週55時間」という時間外労働規制がそのまま適用されれば、救急医療を担う病院では多数の医師を雇用しなければなりません。しかし地方では医師確保が難しく、働き方改革によって「24時間365日の救急医療体制」を諦めなければならない地域も出てきかねません。もちろん検討会でも、こういった点は問題提起されていますが、他のテーマと混在してしまい、「十分に議論されているか」と言えば疑問も残ります。四病協の要望書は、こうした検討会論議の在り方にも一石を投じることになりそうです。
新専門医制度、「根本的な問題」を四病協で1年程度かけて議論
また3月28日には、四病協において「専門医制度の在り方検討委員会」が正式に発足しました。
新専門医制度が2018年度から全面スタートしますが、四病協では「病院から見て、専門医制度がどうあるべきか、根本的な議論をもう一度しておく必要があるのではないか」との問題意識に立って、検討委員会を設置。1年ほどの期間をかけて議論し、中間まとめ(提言)を行う予定です。
一方で、当面の課題もあります。相澤・日病会長は「2018年度の専攻医登録状況から、『東京一極集中』と言わざるを得ない状況が明らかになった。日本専門医機構では『東京から近隣県に医師派遣が行われ、大きな混乱はない』としているが、そのデータはない。近く2019年度の専攻医募集が始まるので、5大都市圏の専攻医定員上限などを見直していく必要など、多数の疑問があるが、そこは日本専門医機構内部で議論してもらう」旨の考えを示しており、四病協では「より根本的な、より将来を見据えた提言」を行うことになるでしょう(関連記事はこちらとこちら)。
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