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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

新専門医制度、東京で専攻医多いが、近隣県を広くカバーする見込み―日本専門医機構

2018.3.19.(月)

 2018年度からの新専門医制度スタートに向けて、専門医を目指す専攻医の1次・2次登録結果をみると、東京都に多く登録しているように見える。しかし、研修の1年目から地方病院へ配属される医師も十数%程度おり、関東一円を広くカバーすることになる。新専門医制度によって「医師偏在が助長されている」とは言えない―。

 日本専門医機構は3月16日の理事会に、このような資料を提示しました。今後も、専攻医の動向(どこの地域に配属されているか)などを調べるとともに、大都市部への集中が起こらないような「都道府県別の専攻医上限数」(シーリング)を常に調整していくことになります(関連記事はこちらこちら)。

3月16日の日本専門医機構理事会終了後に、記者会見に臨んだ山下英俊副理事長(山形大学医学部長、向かって右)と松原謙二副理事長(日本医師会副会長、向かって左)

3月16日の日本専門医機構理事会終了後に、記者会見に臨んだ山下英俊副理事長(山形大学医学部長、向かって右)と松原謙二副理事長(日本医師会副会長、向かって左)

数字上は東京都に専攻医が集中しているが、プログラム上、一定割合が地方派遣される

2018年度からの新専門医制度全面スタートに向けて、専攻医の登録が進んでいます。日本専門医機構では、「専攻医登録の推測結果」(3次予定等を含めた4月以降に勤務する都道府県、基幹病院ベース)と、「初期臨床研修地」(3月まで勤務する都道府県、主に基幹病院ベース)との比較結果を発表しました。次のような状況が明らかになっています(初期研修医数と合計と、専攻医数合計は合致しない)。

▽北海道:初期研修医338名、専攻医296名 → 4月から▲42名
▽青森県:初期研修医82名、専攻医61名 → 4月から▲21名
▽岩手県:初期研修医66名、専攻医62名 → 4月から▼42名
▽宮城県:初期研修医114名、専攻医158名 → 4月から+44名
▽秋田県:初期研修医84名、専攻医60名 → 4月から▲24名
▽山形県:初期研修医74名、専攻医55名 → 4月から▲19名
▽福島県:初期研修医95名、専攻医85名 → 4月から▲10名
▽茨城県:初期研修医155名、専攻医129名 → 4月から▲26名
▽栃木県:初期研修医128名、専攻医120名 → 4月から▲8名
▽群馬県:初期研修医78名、専攻医79名 → 4月から+1名
▽埼玉県:初期研修医286名、専攻医228名 → 4月から▲58名
▽千葉県:初期研修医338名、専攻医268名 → 4月から▲70名
▽東京都:初期研修医1350名、専攻医1825名 → 4月から+475名
▽神奈川県:初期研修医569名、専攻医497名 → 4月から▲72名
▽新潟県:初期研修医95名、専攻医100名 → 4月から+5名
▽富山県:初期研修医72名、専攻医54名 → 4月から▲18名
▽石川県:初期研修医93名、専攻医110名 → 4月から+17名
▽福井県:初期研修医49名、専攻医39名 → 4月から▲10名
▽山梨県:初期研修医53名、専攻医37名 → 4月から▲16名
▽長野県:初期研修医129名、専攻医112名 → 4月から▲17名
▽岐阜県:初期研修医117名、専攻医97名 → 4月から▲20名
▽静岡県:初期研修医194名、専攻医115名 → 4月から▲79名
▽愛知県:初期研修医446名、専攻医449名 → 4月から+3名
▽三重県:初期研修医120名、専攻医102名 → 4月から▲18名
▽滋賀県:初期研修医91名、専攻医89名 → 4月から▲2名
▽京都府:初期研修医230名、専攻医283名 → 4月から+53名
▽大阪府:初期研修医602名、専攻医650名 → 4月から+48名
▽兵庫県:初期研修医366名、専攻医342名 → 4月から▲24名
▽奈良県:初期研修医112名、専攻医104名 → 4月から▲8名
▽和歌山県:初期研修医90名、専攻医72名 → 4月から▲18名
▽鳥取県:初期研修医40名、専攻医45名 → 4月から+5名
▽島根県:初期研修医52名、専攻医37名 → 4月から▲15名
▽岡山県:初期研修医176名、専攻医215名 → 4月から+39名
▽広島県:初期研修医169名、専攻医148名 → 4月から▲11名
▽山口県:初期研修医68名、専攻医46名 → 4月から▲12名
▽徳島県:初期研修医52名、専攻医60名 → 4月から+8名
▽香川県:初期研修医61名、専攻医48名 → 4月から▲13名
▽愛媛県:初期研修医91名、専攻医86名 → 4月から▲5名
▽高知県:初期研修医59名、専攻医50名 → 4月から▲9名
▽福岡県:初期研修医380名、専攻医451名 → 4月から+71名
▽佐賀県:初期研修医64名、専攻医58名 → 4月から▲6名
▽長崎県:初期研修医73名、専攻医83名 → 4月から+10名
▽熊本県:初期研修医101名、専攻医102名 → 4月から+1名
▽大分県:初期研修医71名、専攻医64名 → 4月から▲7名
▽宮崎県:初期研修医44名、専攻医37名 → 4月から▲7名
▽鹿児島県:初期研修医94名、専攻医94名 → 4月から増減なし
▽沖縄県:初期研修医148名、専攻医107名 → 4月から▲41名

 数字だけを見ると、▼東京都(+475名)▼福岡県(+71名)▼京都府(+53名)▼大阪府(+48名)▼宮城県(+44名)▼岡山県(+39名)—などで医師が増加し、静岡県(▲79名)や神奈川県(▲72名)、千葉県(▲70名)埼玉県(▲58名)などで医師が大きく減少することになり、「都市部への一極集中」が進んでいるのではないか、とも思われます。

 しかし機構では「ある都道府県の初期研修医が、どの都道府県で専攻医となるか」(逆に見れば、ある都道府県の専攻医が、どの都道府県で初期研修を受けていたか)という分析も行っています。

例えば、東京都の専攻医1825名について見てみると、1115名が「東京都」で、710名が「東京都以外」で初期研修を受けています。710名の内訳を見ると、▼神奈川県165名▲千葉県132名▼埼玉県101名▼静岡県51名▼茨城県34名▼栃木県28名▼北海道15名▼福岡県15名▼沖縄県15名―などとなっており、近隣県(上位6県)で72.0%が占められています。

またこの分析からは、「全国から東京都に一極集中している」のではなく、「複数の府県(福岡県、大阪府、岡山県など)に近隣県から医師が移動している」状況も伺えました。例えば、福岡県には▼山口県から16名▼東京都から12名▼長崎県から11名▼佐賀県から10名―が、大阪府には▼兵庫県から68名▼京都府から22名▼奈良県から17名▼和歌山県から11名―、岡山県には▼広島県から21名▼兵庫県から11名▼香川県から9名―の医師が移動しています。

東京都の研修プログラム、一定割合が「近隣県の連携施設での研修(派遣)」を予定

 さらに機構の松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は、「例えば東京都の研修プログラムについて問い合わせたところ、20-10数%は1年目から関東地方をはじめとする近隣県の医療機関(連携施設)で研修を受ける(つまり勤務する)ことが分かった」と説明。つまり、東京都で専攻医登録した1825名のうち20%から10数%にあたる300名程度は、2018年度には東京都以外で勤務することになるのです。さらに、研修の2年目、3年目になれば地域医療を学ぶために、さらに多くの割合の専攻医が地方勤務に就くと予想されます。

 こうしたことを総合して松原副理事長は、「数字上は東京都に専攻医が集中しているように見えるが、多くの医師が東京都から近隣県に派遣される形となる」「東京都以外で医師が増加したところ(大阪府や福岡県)も同様と考えられる」と説明しています。

例えば東京都には、多くの専攻医が集中していますが、ほとんどは「もともと東京都で初期研修を受けていた」医師であり、残りの医師の多くは「近隣県から東京都に移動した」医師です。一定割合(現時点では20-10数%)の医師は、近隣県に派遣される(研修プログラムで規定)ことになり、「地域医療が崩壊する」とは考えにくいというのが機構側の見解と言えます。

もっとも松原副理事長と山下英俊副理事長(山形大学医学部長)は、例えば静岡県で大きく医師が減少する点について、「静岡県から東京都に51名の医師が移動することになる。これを東京都の研修プログラムで『東京都から静岡県に派遣する』などの形で、どこまでカバーしていくのかを十分に注視していく必要がある」旨も強調しています。静岡県以外でも、上記で見たように神奈川県(▲72名)、千葉県(▲70名)埼玉県(▲58名)などで医師が大きく減少し、同様に、「これらの減少が、個別研修プログラムの中でどこまでカバーされるのか」注意深く見守っていくことが重要です。その他の地域でも「実際に医師減少分が派遣等でカバーされるのか」を確認することが必要でしょう。

さらに松原・山下両副理事長は、「これまでのカリキュラム制による研修(年限や研修施設を定めず、一定の症例数などを経験することで専門医試験の受験資格を得られる仕組み)では、専攻医がどこに勤務しているのか分からなかったが、新専門医制度でプラグラム制を軸としたことで、専攻医の勤務地が『見える化』できた」と、新専門医制度の創設意義を改めて強調。

また、医師偏在を助長しない仕組みの1つである「大都市部の専攻医上限」(シーリング)についても、今回、初めて都道府県別のデータが揃ったことから、「毎年、状況をチェックして適宜、上限数を調整していく」ことが明らかにされています。

自治体サイドは依然として「医師偏在助長」を懸念し、制度改善の申し入れも

 もっともこれらのデータでも、自治体サイドの「医師偏在が助長される」と言う懸念は払しょくできていないようです。3月16日の理事会では、井戸敏三理事(兵庫県知事)から▼専攻医登録数(採用数)上限について、初期臨床研修医と同じく1.1倍(2年目初期臨床研修医ベース)とする▼診療科ごとの募集定員設定を検討する▼連携施設での研修期間を1か所につき「原則6か月以上」に見直す―などの改善提案が行われています。本提案は、加藤勝信厚生労働大臣にも行われています。

 
なお、3月16日の理事会では、▼内科のサブスペシャリティ領域として13領域(▼外科のサブスペシャリティ領域として6領域—を機構として認証することが決まりました。今後、各基本領域についてどのサブスペシャリティ領域とするのか(サブスペシャリティ領域の専門医資格を取得するためには、該当する基本領域の専門医を取得することが前提となる)、順次決定していくことになります。

 
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