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新専門医制度、都道府県協議会・厚労省・検討会で地域医療への影響を監視—医師養成と地域医療検討会

2017.8.9.(水)

 2018年度からの新専門医制度の全面スタートを目指した検討が進められています。9日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(以下、検討会)では、日本専門医機構における「地域医療への配慮」内容や、制度の運用面で問題が生じた場合には厚生労働省が対応に乗り出すことなどを確認しました。

 今後、各基幹病院から示される研修プログラムの内容や、専攻医の配置状況などを注視していくことになります。

 また検討会では、より大きなテーマとも言える「卒前・卒後の一貫した医師養成の在り方」について次回以降、本格的な議論を行っていきます。

8月9日に開催された、「第4回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」

8月9日に開催された、「第4回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」

厚労省や検討会で地域医療への悪影響を監視し、必要な見直しを求める

 新専門医制度は、これまで各学会が独自の行っていた専門医の養成・認定を、学会と日本専門医機構が共同して行うことで、「質を担保するとともに、国民に分かりやすい」専門医養成を目指す仕組みです。

 ただし、質の担保を追求するあまり専門医を養成する基幹施設などのハードルが高く、地域医療に悪影響を及ぼすのではないか、といった指摘などがあり、厚労省に設置された検討会で、「質の担保」と「地域医療への配慮」の両立に向けた議論が行われています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 9日の検討会では、吉村博邦構成員(日本専門医機構理事長)から、検討会の指摘を踏まえて▼カリキュラム制(年限や研修施設を定めず、一定の症例数などを経験することで専門医試験の受験資格を得られる仕組み)の実行を担保するための相談窓口などを日本専門医機構に設ける▼日本専門医機構と学会は、都道府県協議会における研修プログラムチェックなどに協力する—ことが説明されました(関連記事はこちら)。

 これに対し、住民に最も身近な自治体である市町村の立場で出席している立谷秀清構成員(相馬市長、全国市長会副会長)は、▼地域医療に従事しながら専門医資格を取得できる仕組みが十分に見えてこない▼論部や学会発表は専門医資格の要件として不要である▼総合診療専門医の創設により、地域の医師が総合診療を行えないと誤解する—などといった問題点があると指摘。これに対し、日本専門医機構の副理事長である松原謙二参考人(日本医師会副会長)は「指摘された事項を重く受け止め、機構として対応する。走りながらきちんとした制度を構築したい」と答弁し、一定の理解を得られたようです。

 
 また立谷構成員は、都道府県協議会(地域の関係者が集い、新専門医制度で地域医療への悪影響が出ないかをチェックする組織)が必ずしも「学会などに物申せる組織」にはなっていないところもあると指摘し、「検討会で逐次、専門医制度の運用状況を確認する必要がある」と要望しました。

この点、厚労省医政局医事課の武井貞治課長は「検討会も活用しながら、必要な対応を行う」考えを示しています。塩崎前厚労相は2日に、専攻医の▼応募状況▼配属状況―を厚労省で確認し、地域医療への影響が懸念される場合には、日本専門医機構と関係学会に対し実効性ある対応を要請する旨の談話を示しています(関連記事はこちら)。

今般の武井医事課長の説明や談話などを組み合わせると、いわば次の4層構造で地域医療への悪影響を防止する構えをとることになります。

(1)新整備指針などで大都市への集中を避ける規定や、必要な場合にはカリキュラム制を認めることなどを規定し、これを担保する仕組みも設ける【事前チェック1】

(2)都道府県協議会で研修プログラムなどのチェックを行い、問題があれば必要な見直しを求める【事前チェック2】

(3)厚労省が実際の運用状況を確認し、問題があれば必要な見直しを求める【事後チェック1】

(4)問題が解決しない場合には、検討会で議論を行い、必要な見直しを強く求める【事後チェック2】

また厚労省は都道府県協議会の運用状況などを近くチェックする考えで、そこで仮に「十分に機能していない」ようなことが明らかになれば、実効性を持たせるために「法制化」などが検討される可能性もあります(現在は通知で設置を要請している)。

プログラム制に拘泥してはいけないと、立谷構成員が強く要請

ところで日本専門医機構は4日、「新たな専門医制度の開始に向けた声明」を公表し、▼塩崎前厚労省談話に真摯に対応する▼10月初旬を目途に基本19領域の専攻医一次登録開始し、12月中旬を目途に二次登録を開始する▼応募状況を見て必要な調整を行う—ことなどを明らかにしました(関連記事はこちら)。また、その中では「プログラム制(研修年限や施設を指定し、そこでの研修を経て専門医試験受験資格を得られる仕組み)とカリキュラム制とで、従来と専攻医数は大きく変わらない。プログラム制の導入で地域医療が崩壊するとの意見を支持する調査結果は得られていない」ことにも言及しています。

これに関連して立谷参考人は、「プログラム制に拘泥することは好ましくない」と極めて強く主張しています。検討会でカリキュラム制導入を求め、日本専門医機構側もこれに沿った対応をとっている一方で、吉村構成員が「最初の基本領域学会の研修は原則としてプログラム制となる」と説明した点を問題視したものです。

仮にプログラム制にこだわった研修プログラムなどがある場合には、前述の4層構造のチェックがなされ、見直しが要請される(応じなければ研修プログラムとして認定されない)ことになります。

 
このほか立谷構成員は「地域医療に従事する」ことを専門医資格取得の中で「加算ポイントとする」ことを提案。この点、専門医資格はあくまで「当該領域における専門医療の知識・技術」の修得状況に応じて付与されるものであり、単純に「地域医療に従事したので、専門医の取得が容易になる」仕組みは好ましくなさそうです。もっとも武井医事課長は「医師偏在の解消にもつながる可能性がある」として、医師需給分科会の中で検討俎上に載せる可能性も示唆しています(関連記事はこちら)。

 
このように新専門医制度は▼研修プログラムの募集▼専攻医の募集—など、2018年度の全面スタートに向けて動いていますが、前述のとおり「地域医療への悪影響」が生じていないかが逐次チェックされています。検討会では、運用状況を注視すると同時に、今後は、もう一つの、より大きな検討テーマである「卒前・卒後の一貫した医師養成の在り方」について本格的に議論していくことになります。

 
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