新専門医制度、東京・神奈川・愛知・大阪・福岡では、専攻医上限を過去3年平均に制限―日本専門医機構
2017.2.20.(月)
新たな専門医制度によって医師の地域偏在が助長されることのないよう、▼東京都▼神奈川県▼愛知県▼大阪府▼福岡県―の5都府県では、専攻医総数について「過去3年間の採用実績の平均値」を上限としてはどうか―。
日本専門医機構の理事会において、こういった方向で議論が進められていることが17日の定例記者会見で吉村博邦理事長(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)から発表されました。
ただし医師が不足している▼外科▼産婦人科▼病理―といった領域では、この上限設定は適用しない方向のようです。
専攻医の多い内科・外科などでは、「1県に複数の基幹施設」を設置してほしい
日本専門医機構では、来年度(2018年度)からの新専門医制度の全面スタートに向けて、昨年12月に新制度の憲法とも言うべき「専門医新整備指針」を固めました(関連記事はこちらとこちら)。専門医の知識・技術レベルを確保すると同時に、「医師の地域偏在」への配慮を行うという両立の難しい2つの柱が打ち立てられています。
現在は新整備指針にのっとり、領域ごとの「運用細則」の策定に向けた議論が進められており、吉村理事長は(1)基幹病院の考え方(2)都道府県別の専攻医定員―2つの点について議論の状況を明らかにしています。
(1)の基幹病院について、新整備指針では「『大学病院以外の医療施設も、研修施設群の基幹施設となれる』ような基準を設ける」ことが明らかにされました。オールジャパンで積極的に専門医制度を育てていくとの考え方に基づくものです。
この点について吉村理事長は、▼内科▼小児科▼精神科▼外科▼整形外科▼産婦人科▼麻酔科▼救急―の領域においては、専攻医が多いため(過去5年間の専攻医採用実績が350名以上)、教育レベルを保つ観点から「原則として、1つの都道府県に『複数の基幹施設』を設けるべき」と考えていることを明らかにしました。これ以外の領域については、「必ずしも複数の基幹施設を設ける必要はない」ことになります。
また(2)の偏在対策については、新整備指針で「機構は、基本領域学会と協同して、研修プログラム制による専攻医登録をする際に医師の都市部への偏在助長を回避することに努める」ことや、「専攻医の集中する都市部の都府県に基幹施設がある研修プログラムの定員等については、都市部への集中を防ぐため、運用細則で別途定める」こととされています。
この点について吉村理事長は▼東京都▼神奈川県▼愛知県▼大阪府▼福岡県―の5都府県を「大都市」とし、「この地域においては、専攻医総数の上限を『過去3年の実績の平均値』を超えないように設定したい」との考えを明らかにしています。もっとも、▽外科▽産婦人科▽病理―などの領域では、医師不足が目立つため、上限設定を適用しない考えです。なお、5都府県の選定根拠は「2014年の医師・歯科医師・薬剤師調査(三師調査)において、医籍登録後3-5年の医師が全国総数の5%以上在籍している自治体」と説明されました。ちなみに5都府県のいずれにも、4以上の大学医学部があります。
また注目される総合診療専門医についても、「教育レベルの確保」と「地域偏在の助長防止」が課題となっているようです。機構の松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は「これまでに404プログラム(5505の連携施設)が申請され、定員ベースでみると3分の1が大都市圏となってしまっている。定員を1600名まで絞って(1プログラムにつき4名の専攻医と仮定)してみても、やはり3分の1は大都市に集中してしまう。都道府県の協議会で議論し、偏在が助長されないように検討してく必要がある」との考えを示しました。なお、総合診療専門医の研修プログラムについては▽内科(1年以上)▽小児科▽救急―のほかに外科も盛り込む方向で議論が進められているようです。
これらについて理事会での議論は必ずしもまとまっておらず、吉村理事長は「各基本領域学会らとさらなる調整進め、3月の理事会で運用細則などを取りまとめたい」と考えています。
【関連記事】
専門医制度新整備指針、基本理念に「地域医療への十分な配慮」盛り込む―日本専門医機構
地域医療に配慮した、専門医制度の「新整備指針」案を大筋で了承―日本専門医機構
新専門医制度、整備指針に地域医療への配慮がなされないなら、さらなる実施延期も―全自病・邉見会長
専門医制度の新整備指針策定に向け、四病協で意見をまとめ、日本専門医機構に伝えたい
専門医整備指針の改訂案に対する全自病の声明、同様の見解である―日病・堺会長
新専門医制度、整備指針の改訂案は了承されていない―日病協・神野議長
地域の医師偏在を助長しないよう、改めて専門医制度の整備指針を見直すべき―全自病
消化器内科や呼吸器外科など、基本領域とサブスペ領域が連動した研修プログラムに―日本専門医機構
総合診療専門医、2017年度は「日本専門医機構のプログラム」での募集は行わず
新専門医制度、18基本領域について地域医療への配慮状況を9月上旬までにチェック―日本専門医機構
【速報】専門医、来年はできるだけ既存プログラムで運用、新プログラムは2018年目途に一斉スタート―日本専門医機構
新専門医制度、学会が責任もって養成プログラムを作成、機構が各学会をサポート―日本専門医機構
【速報】新専門医制度、7月20日に「検討の場」、25日の総会で一定の方向示す見込み―日本専門医機構
新専門医制度、各学会がそろって同じ土俵に立ってスタートすることが望ましい―日本専門医機構・吉村新理事長
【速報】新専門医制度、日本専門医機構の吉村新理事長「7月中に方向性示す」考え
新専門医制度、日本専門医機構の新体制下での諸課題解決に期待―日病・堺会長
専門医のあり方、永井医療部会長は「学会などの動きをしばらく見守る」姿勢―社保審・医療部会
2017年度の専門医、学会の意向確認して定数枠を設定へ―専門医の在り方専門委員会
新専門医制度、都道府県別に過去の専門医採用実績をベースにした定数設定議論へ―専門医の在り方専門委員会
新専門医制度、「現在の制度のままでは懸念は払しょくできない」との見解で一致―日病協
新専門医制度で地域の医師偏在が進まないよう、専門医機構・都道府県・国の3層構造で調整・是正―専門医の在り方専門委員会