新専門医制度、地域医療への影響を厚労省が確認し、問題あれば対応—塩崎厚労相
2017.8.3.(木)
2018年度からの全面スタートに向けた準備が進められている新専門医制度について、学会(基本領域)ごとの▼応募状況▼専攻医配属状況―を厚生労働省に報告することとし、地域医療への影響を確認する。万が一、地域医療への影響が懸念される場合には、厚労省から日本専門医機構と関係学会に対し実効性ある対応を要請する。
塩崎恭久厚生労働大臣は2日、日本専門医機構の吉村博邦理事長と面談し、このような談話を発表しました(厚労省のサイトはこちら)。
地域医療に悪影響が出るとの懸念、完全には払拭されていない
新専門医制度は、専門医の認定と、研修プログラムの認証を学会と日本専門医機構が共同して行い、「専門医の質を担保し、国民に分かりやすい」専門医制度とすることが狙いです。当初は今年(2017年)4月からのスタートを目指していましたが、日本医師会と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)から「地域の基幹病院ですら研修病院になれないなど養成プログラムのハードルが高すぎる。地域の医師偏在を助長する可能性が高い。一度立ち止まり、専門医を目指す医師の意見を聞くとともに、▼地域医療▼公衆衛生▼地方自治▼患者・国民―の代表による幅広い視点も大幅に加えた『検討の場』を設けて、その検討結果を尊重するべきである」などの要望が出されました(関連記事はこちらとこちら)。
その後、機構は組織を再編し、「全面スタートの1年延期」を決定した上で(関連記事はこちらとこちら)、地域医療へ十分な配慮を行うことなどを制度の根幹規定となる「整備指針」などの中で規定しました(専門医制度新整備指針)(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
しかし、その後も全国市長会から▼中小病院が危機に陥りかねない▼医師偏在が助長されかねない—などの懸念を表明し、塩崎厚労相も、さまざまな懸念を払拭した上で新制度を2018年度からスタートする必要があると判断し、「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」を設置し、改めて関係者間での意見調整を行うこととしました。
検討会では、「専門医の質の担保」と「地域医療の確保」とを両立する方策について議論を行い(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)、例えば、都道府県ごとに地域の関係者が集い、地域の医師偏在が助長されないかなどをチェックし、必要があれば改善を行っていく仕組み(都道府県協議会)をより強固なものにするため、▼「都道府県協議会」において、研修プログラムに関する情報を共有し、確認、検討などを行う▼都道府県協議会において研修プログラムの確認、検討などを行った後、地域医療確保の観点から改善が必要な事項を日本専門医機構へ提出し、日本専門医機構と連携して改善事項などについて調整する▼都道府県で調整に努めたにもかかわらず状況が改善しないような場合には、適宜、厚労省に報告する▼調整終了後、プログラム認定前に、管内のプログラムについての調整結果を都道府県協議会で確認した旨、都道府県協議会の活動実績を厚労省へ報告する—ことなどが固められました(関連記事はこちらとこちら)。
日本専門医機構でも、こうした指摘を重く受け止め、都道府県協議会によるチェックに協力する(さらに地域の基幹病院から都道府県へ、直接「こうした懸念がある」などと報告できる仕組みも確保)考えを明確にし、2018年度の全面スタートに備えて「10月から、研修プログラムへの専攻医の登録(いわば仮登録)を始める」方針を明らかにしています(関連記事はこちら)。
塩崎厚労相は、こうした流れを振り返り「地域医療に影響を与えないような配慮がなされている」と評価した上で、▼実際の専攻医の応募の結果、各診療科の指導医や専攻医が基幹病院に集中することで地域医療に悪影響が生じるのではないか▼専攻医がその意思に反し、望んでいる地域、内容での研修を行えなくなるのではないか—といった懸念は「完全には払拭されていない」と判断。新専門医制度を運用する中で、問題が生じた場合には適宜対応していく考えを示しました。具体的には次のような取扱いとなります。
▼日本専門医機構・各関係学会に対し、「学会ごとの応募状況および専攻医の配属状況」を厚労省に報告することを求める
▼厚労省で、新専門医制度が地域医療に影響を与えていないかどうか、領域ごとに確認する
▼確認の結果、新専門医制度により地域医療に影響を与える懸念が生じた場合には、「国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制」を確保する医療法上の国の責務に基づき、厚労省からも日本専門医機構・各関係学会に対して実効性ある対応を求める
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