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必要な標準治療を集中的に学ぶため、初の基本領域での研修は「プログラム制」が原則―日本専門医機構

2017.3.21.(火)

 新たな専門医について、内科や外科などの基本領域では「プログラム制」による養成を原則とするが、地域枠であるなど特別の事情がある場合には、教育レベル保持を条件として「カリキュラム制」による養成も可能とする。現時点で年間350名以上の専攻医を受け入れている▼内科▼小児科▼精神科▼外科▼整形外科▼産婦人科▼麻酔科▼救急科―では都道府県に複数の基幹施設を置くこととする―。

 日本専門医機構の理事会は17日、こういった内容の「専門医制度新整備指針運用細則」を承認しました(関連記事はこちら)。23日開催予定の社員総会に諮られます。

 また運用細則では、専攻医の都市部集中を避けるために、▼東京▼神奈川▼愛知▼大阪▼福岡―の5都府県では、「過去5年の専攻医採用実績の平均値」を採用上限とする点も明記しています。

 なお、機構の吉村博邦理事長(地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)は、「新専門医制度に対して誤解した批判も出ている」とし、専門医制度の成り立ちから現在に至るまでを詳細に解説。その上で、新専門医制度は▼医師の質を担保する▼患者に信頼され、受診の良い指針になる▼医師偏在を悪化させない―などといった基本理念をきちんと理解してほしいと要望しています。

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プログラム制による研修、専攻医にも地域医療確保にも好ましい

 機構では、新専門医制度の、いわば憲法に当たる「新整備指針」を昨年(2016年)12月に制定(関連記事はこちらこちら)。今般、この指針をかみ砕いた「運用細則」を了承しています。今後、正式決定(23日の社員総会予定)を待ち、各基本領域学会で研修プログラム作成の拠り所となる「整備基準」を制定することになります。

 上記規定から並べると、「新整備指針」→「運用細則」「補足説明」→「整備基準」(各基本領域学会で作成)→「研修プログラム」(各研修施設群が作成)というイメージです。

 ここで改めて、新専門医制度の大枠を振り返っておくと、基本領域(内科や外科など19領域)の研修を3年程度受けた後に、機構・学会から「専門医の資質を満たしている」との認定を受けられれば、「基本領域 内科専門医」「基本領域 外科専門医」などと広告することが可能になります。さらに、細分化したサブスペシャルティ領域(消化器科や循環器かなど29領域)の研修を受ければ、「消化器病専門医」「循環器病専門医」などを併せて広告することも可能です。内科など、領域によっては基本領域とサブスペシャルティ領域が並走するケースもあります。

 今般の運用細則では、「1つ目の基本領域について、原則として研修プログラム制による研修とする」ことが明確にされました。プログラム制とは、年次ごとに定められた研修プログラムに則って研修を行う仕組みで、基幹施設と連携施設で研修施設群を作り循環型の研修を行います。機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)は、「医師は生涯勉強を続けなければならず、とくに最初に標準的治療をすべて学ぶことが重要となる。このために基幹病院を中心に、連携施設にローテ―としてもらうことが、研修医にとって好ましく、地域医療の確保においても望ましい」とプログラム制の利点を強調します。

運用細則について説明する日本専門医機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)

運用細則について説明する日本専門医機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)

 ただし、自治医科大学出身者や地域枠出身の医師は、勤務場所や気管に一定の制限があります。こうした医師にプログラム制を適用することは酷なため、運用細則では▼卒後に義務年限を有する医大卒業生で必要と考えられる▼地域医療の資することが明らかである(地域枠など)▼出産、育児、留学など相当の合理的理由がある―場合には、「教育レベルの保持」を条件に、カリキュラム制(カリキュラム基準を充足した時点で、専門医資格取得を可能とする仕組み。何年かかってもよい)の採用も可能とされました。

 また、サブスペシャルティ領域ではプログラム制・カリキュラム制のいずれの研修体制とすることもできます。さらに運用細則では、サブスペシャルティ領域の制度設計については、基本領域学会とサブスペシャルティ領域の学会が合同で構築していく方向も明示しています。

内科、外科など専攻医の多い基本領域では、都道府県に複数の基幹施設を設置

 新専門医制度については、「地域・診療科における医師偏在を助長してしまう」との強い批判があり、これを防止するための仕組みとするために「1年間の延期」となっていました(関連記事はこちらこちら)。

 新整備指針では、この点に配慮するために次の2点を明確にしており、今般の運用細則でさらなる詳細が明らかにされました。

(1)基幹施設に大学病院以外の医療機関も認定される水準とする

(2)都市部に基幹施設がある研修プログラムの定員を設ける

 (1)については、従前から「基幹施設の基準が厳しく、実質的に大学病院だけとなっている。そのため地域の病院から大学病院に医師が移ってしまい、地域医療崩壊を助長する」との批判がありました。

 今般の運用細則では、この批判も踏まえて▼基幹施設の基準は、基本料領域学会が機構と協議し、教育レベル維持の観点から策定する▼専攻医採用実績が過去5年平均で350名以上の領域(現在は▽内科▽小児科▽精神科▽外科▽整形外科▽産婦人科▽麻酔科▽救急科)では、都道府県ごとに複数の基幹施設を置くことを原則とする―ことを明確にしています。もっとも山下副理事長は、「人口の少ない都道府県では、必ず複数の基幹施設が必要とすると研修ができなくなってしまう。柔軟に対応する」とコメントしています。

東京や大阪など大都市では、専攻医採用数の上限を設定

 (2)の定員については、▼東京▼神奈川▼愛知▼大阪▼福岡―の5都府県において「過去5年の専攻医採用実績の平均値」を採用上限とする原則が示されました。これらの地域では、初期臨床研修を終え、専ら専攻医となる「医籍登録後3-5年の医師の全国数に対する割合が5%以上」「大学医学部が4施設以上ある」との特徴があります。これらの地域で採用上限を設けることで、地方にも専攻医が目を向けることが期待されます。

 もっとも、▽外科▽産婦人科▽病理▽臨床検査―の基本領域では、医師数が減少していることから、上記の採用上限は適用されません。また運用細則では、「当面の間、毎年、定数を機構の基本問題検討委員会で見直す」ことを明確にしています。

指導医のいない施設、基幹施設などとテレビ会議で随時指導を受けられる体制が必要

 ところで最初に述べたように、基本領域では、基幹施設と連携施設(全体で連携施設群)をローテ―トするプログラム制による研修が原則となります。

 教育レベルを維持するために、いずれの施設にも「指導医」が在籍していなければいけません(原則として指導医1人につき専攻医3名まで)。しかし新整備指針では「地域医療に必要な施設だが、上記の指導医を置くことができない場合には、指導医が不在であっても関連施設となることを例外的に認める」旨の規定が設けられました。この点について運用細則では、「専攻医がテレビカンファランスシステムの利用などにより、『随時、基幹施設・連携施設の指導医から適切な指導を受けられる』体制が構築されている」旨の基準を明確にしています。

 また連携施設群を形成する地理的範囲について、新整備指針は「都道府県をまたがる」ことも可能としていました。この点、運用細則では、「隣接した都道府県である」ことが原則とした上で、「地域医療を支えるためなど十分な根拠を示す」ことを条件に遠方病院との連携も可能とする基準を明らかにしています。

 

 なお、これまで新専門医制度については「1つの基本領域で研修を受け、その上にサブスペシャルティ領域の研修を重ねる」とのイメージがありましたが、新整備指針は「2つの基本領域の専門医を取得する『ダブルボード』も可能」である旨を明確化。ただし、運用細則では、▼初期臨床研修後ただちに開始する研修は、原則として研修プログラム制とする▼ダブルボードは研修プログラム制、研修カリキュラム制いずれでも選択できるが、専門医のレベルが均等となるようにする―との注意をしています。

  
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