新専門医制度、専門研修中の医師の勤務地を把握できる仕組みに―日本専門医機構
2018.1.22.(月)
来年度(2018年度)から全面スタートする新専門医制度では、専攻医(専門医になるための研修を受ける医師)の2次登録締め切り時点で、東京など5都府県について課した専攻医数の上限値が遵守される―。
日本専門医機構の山下英俊副理事長(山形大学医学部長)と松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は、1月19日の理事会終了後に記者会見を開き、このような見通しを明らかにしました。
また日本専門医機構は今後、専攻医が実際にどこで勤務しているのかを把握する仕組みを設け、地域偏在が生じていないかを確認していく方針です。
1次登録で専攻医として7791人の採用が決定
新専門医制度は、これまで各学会が独自に行っていた専門医の養成・認定を、学会と日本専門医機構が共同して行うことにより、「質を担保」しつつ、「国民に分かりやすくする」ことを目指しています。ただし、「質の担保を追求するあまり、専門医を養成する基幹施設などのハードルが高くなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されるのではないか」といった指摘があり、日本専門医機構や都道府県、厚生労働省などが重層的に、「医師偏在の助長を防ぐ仕組み」を設けています。その1つとして、「各基本領域学会の5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)のそれぞれにおける専攻医の登録総数を、▽外科▽産婦人科▽病理▽臨床検査—の4領域を除いて、過去5年の後期研修医の採用実績数などの平均値以下に抑える」といったルールが設定されています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
2018年度の専攻医募集が始まっており、日本専門医機構が昨年(2017年)12月15日、1次登録での採用者数を公表しました(日本専門医機構のこちらはこちら)。
それによると、採用者数は計7791人で、領域別に見ると「内科」(2527人・全体の32.4%)が最も多く、以下は「外科」(767人・同9.8%)「小児科」(526人・同6.8%)、「整形外科」(516人・同6.6%)、「麻酔科」(457人・同5.9%)、「産婦人科」(410人・同5.3%)などと続きます。
一方、都道府県別の採用者数は、東京が1756人(全体の22.5%)、神奈川が472人(同6.1%)、愛知が441人(同5.7%)、大阪が619人(同7.9%)、福岡が421人(同5.4%)で、これら5都府県の合計が3709人(同47.6%)を占める状況です。
専攻医数は最高8360人に、5都府県の専攻医数の上限は遵守される見通し
昨年(2017年)12月16日に受付開始した2次登録は、1次登録で採用に至っていない医師が対象で、今年(2018年)1月15日の締め切りまでに569人が登録しました(1次登録での採用者と足し合わせると、最高8360人が4月から専攻医となる)。5都府県での上限値が守られており、山下副理事長は、「新制度が大都市への専攻医の集中を助長しないことを担保できた」と強調しました。
なお、1次登録・2次登録を併せた採用者数の見通しは、「内科」が2658人(1次登録での採用者数と比べ131人増)、「外科」が807人(同40人増)、「産婦人科」が442人(同32人増)、「総合診療」が183人(同30人増)、「病理」が113人(同12人増)などです。希望者が殺到した研修プログラムでは採用者を絞り、確定した採用者数(領域・都道府県別)が2月15日以降に公表されます。
また、2次登録で不採用になってしまった医師は、2月15日以降、3次登録に進みますが、5都府県での募集は2次登録までで締め切られます。
実際の勤務地をモニタリングし、偏在悪化の懸念を払拭
ところで、5都府県で専攻医数の上限値が遵守されたとしても、それ以外の42道府県の中で地域偏在が悪化する懸念は拭い切れません。
新専門医制度の研修は、▼基幹施設▼連携施設▼関連施設—のいわばグループ(研修施設群)で行われます。基幹施設と連携施設などが必ずしも同じ都道府県にあるとは限らず、「基幹施設は地方に所在するが、連携施設は都市部にある」というケースもあり得ます。現在、専攻医がどこで研修を受けているか(どこに勤務しているか)は、基幹施設単位で把握されており、「専攻医が、ある時点で、どこに勤務しているのか」が分かりません。このため、「地方(基幹施設)で勤務していることになっているが、実際には都市部(連携施設)で勤務している」ということも生じてしまうのです。
このため日本専門医機構では、専攻医の「研修期間中の勤務地」をモニタリングする仕組みを設けることを、各領域の関係学会に求めています。その結果、地域偏在が助長されていることが明らかになった場合には、日本専門医機構や関係学会などが、偏在是正に乗り出すことになります。
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