新専門医制度、現時点で医師偏在は助長されていない―日本専門医機構
2018.2.13.(火)
新たな専門医制度の専攻医登録状況を見る限り、専攻医は適正に配置されている。現時点で、医師偏在が助長されているとは認識していない―。
日本専門医機構の松原謙二副理事長(日本医師会副会長)は、2月9日の定例記者会見で改めてこのようにコメントしました。
専攻医の勤務先をリアルタイムで把握する仕組みに基づいた議論が重要
2018年度からの新たな専門医制度全面スタートに向けて、現在、専門医を目指す研修医(専攻医)の登録が行われています。
日本専門医機構では、昨年(2017年)11月15日までの1次登録での採用状況(7791人分)を既に公表しています。現在、2次登録が終了し、その精査が行われています。
この専攻医登録結果について、例えば全国自治体病院協議会は▼群馬県、山梨県、高知県では外科領域の専攻医が1名しかおらず、将来、大学病院ですら外科手術ができない都道府県が現れるかもしれない▼10自治体で脳神経外科領域の専攻医がゼロ名、2自治体で皮膚科領域の専攻医がゼロ名などとなっている—などの点を踏まえ、「医師偏在が助長されているのではないか」と問題提起を行っています(関連記事はこちらとこちら)。
これに対し、松原副理事長は「登録状況を見る限り、専攻医は適正に配置されており、大きな問題が生じているとは認識していない。日本専門医機構の理事会にも、病院団体から参加を得ており、こうした旨を説明している」と改めてコメントしました。
もっとも、現在の専攻医登録データを基にした議論には限界があります。厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(検討会)では、「専攻医が実際にどこに勤務しているのか」が十分に把握されていないことが問題視されました。X医師が「▼A県の基幹施設▼B県の連携施設―で研修を行う」という専門医養成プログラムに登録したとします。登録はA県の基幹施設で行うため、X医師はB県の連携施設で勤務している間も「A県で勤務」とカウントされてしまうという問題です。また、大都市(例えば東京都)には専攻医が集中しがちですが、近隣県の連携施設での研修をプログラムに組み込んであれば、「大都市に集中しているように見えるが、近隣県への医師配置も同時に達成できている」ことになります(関連記事はこちら)。
日本専門医機構は、こうした問題点について「専攻医がリアルタイムで、どこに勤務しているのかを把握する仕組み」を構築する考えを明らかにしており(関連記事はこちら)、2月9日の定例会見では▼東京都の研修プログラムが、近隣県をどの程度カバーしているのかを明確にする▼基本領域学会に、リアルタイムでの専攻医把握に関するスケジュールを提示してもらう—方針が固まったことが報告されました。
この仕組みに基づけば、全自病の指摘するように「医師偏在が助長されている」のか、日本専門医機構の主張どおり「大きな問題は生じていない」のかが明確になるため、この仕組みやそれに基づくデータに注目が集まります。
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