Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

医師偏在対策の「管理者要件化」、このままでは実効性なくなる―全自病・邉見会長

2017.12.14.(木)

 医師偏在対策の一案として挙がっていた「医師不足地域で勤務した経験を医療機関の管理者要件とする」方策について、後退してきている。このままでは、実効性が全くなくなってしまう―。

 全国自治体病院協議会の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)は、12月14日の定例記者会見で、このような危機感を改めて示しました。医師偏在対策については、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」と下部組織の「医師需給分科会」が12月18日に合同開催され、「早期に実行に移す具体策」が取りまとめられる見通しですが、邉見会長は、「このままでは、医師不足でお産ができない、手術が受けられない地域が増えてしまう」と警鐘を鳴らしています。

12月14日に記者会見を行った全自病の役員ら。向かって左から、原義人副会長(青梅市病院事業管理者兼青梅市立総合病院長)、中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長)、邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)、小熊豊副会長(砂川市病院事業管理者)、末永裕之参与(小牧市病院事業管理者)

12月14日に記者会見を行った全自病の役員ら。向かって左から、原義人副会長(青梅市病院事業管理者兼青梅市立総合病院長)、中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長)、邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)、小熊豊副会長(砂川市病院事業管理者)、末永裕之参与(小牧市病院事業管理者)

 医師の地域・診療科偏在の是正に向けては、「医療従事者の需給に関する検討会」と「医師需給分科会」が昨年(2016年)6月3日、「特定地域・診療科で一定期間診療に従事することを、臨床研修病院、地域医療支援病院、診療所等の管理者の要件とすることが考えられないか」と問題提起(関連記事はこちら)。この案は、医師に対して、「医師不足地域などで勤務しておけば、将来、管理者になりやすい」というインセンティブを与えることで、医師不足の地域・診療科での勤務を促せないかとの観点に基づくものです。

 こうした問題提起を基に、医師需給分科会で具体的な検討が進められ、今年(2017年)11月8日には、厚生労働省が、「医師少数区域」(全国的に見て医師が不足しているエリア)で一定期間勤務した医師を「認定」し、何らかのインセンティブを与える制度を設けてはどうかと提案(関連記事はこちら)。さらに11月22日、▼地域医療支援病院▼臨床研修病院▼社会医療法人▼公的医療機関▼地域医療機能推進機構(JCHO)が開設する病院―を挙げ、これらの「一部」を対象に、管理者が「認定」を受けていることを評価してはどうかと提案しました(関連記事はこちら)。

 こうした提案を、そもそも問題提起された「診療所等まで含めた管理者要件化」と比べると、対象医療機関の範囲は限定されています。また、「評価する」という表現は難解ですが、「認定を受けていなければ管理者になれない」とする(要件化)考え方から、「認定を受けた医師が管理者になるのが望ましい」とする考え方まで、幅広い内容が含まれているようです。

 しかし、こうした案に「医師自らの意に反して地方での診療を促す仕組みで、医師本人に不利益だ」と慎重な姿勢を示す構成員もおり、医師需給分科会が12月8日に大筋で取りまとめた「早期に実行に移す具体策」では、管理者が「認定」を受けたことを評価する対象医療機関が、「地域医療支援病院の一部」とさらに限定されています(関連記事はこちら)。

 地域医療支援病院は全国に543病院(2016年10月時点)あり、全病院(8442病院)の6.4%に当たります。邉見会長は、このままでは「早期に実行に移す具体策」が行われても、医師の地域偏在を解消できないと主張。「私たちは“旗”を下ろさない」と述べ、医師不足地域で勤務した実績を、より広範な医療機関の管理者要件とするよう今後も主張していく考えを強調しています。

病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

地域ニーズに合う医療提供体制の構築支援を―全自病等10団体が要望書
公的病院などの役割、地域医療構想調整会議で「明確化」せよ—地域医療構想ワーキング
地域枠の医師、「理由なき公立病院への派遣」を委員がけん制―社保審・医療部会
医師少数地域での勤務経験、まずはインセンティブ付与から始めては—全自病・邉見会長
急性期病棟、「断らない」重症急性期と「面倒見のよい」軽症急性期に細分―奈良県
「入院からの経過日数」を病棟機能判断の際の目安にできないか―地域医療構想ワーキング(1)
急性期の外科病棟だが、1か月に手術ゼロ件の病棟が全体の7%—地域医療構想ワーキング(2)
公的病院や地域医療支援病院、改革プラン作成し、今後の機能など明確に—地域医療構想ワーキング(1)
新規開設や増床など、許可前から機能などを把握し、開設時の条件などを検討—地域医療構想ワーキング
本年度(2017年度)の病床機能報告から、患者数の報告対象期間を1年間に延長—地域医療構想ワーキング(3)
大学病院の一部、「3000点」が高度急性期の目安と誤解、機能を勘案した報告を—地域医療構想ワーキング(2)
7対1病棟は高度急性期・急性期、10対1病棟は急性期・回復期との報告が基本に—地域医療構想ワーキング(1)
地域医療構想出揃う、急性期の必要病床数は40万632床、回復期は37万5246床—地域医療構想ワーキング(3)
病院の急性期度をベンチマーク分析できる「急性期指標」を報告—地域医療構想ワーキング(2)
循環器内科かつ高度急性期にも関わらず、PTCAを1度も実施していない病院がある—地域医療構想ワーキング(1)

病床機能報告の病床数と地域医療構想の必要病床数、「一致する性質のものでない」ことを確認―地域医療構想GL検討会
「救命救急やICUは高度急性期」など、特定入院料と病棟機能との関係を一部整理―地域医療構想GL検討会

高度急性期や急性期の患者数推計の計算式示される、リハの扱いに注意を―地域医療構想策定の関係省令
地域医療構想策定ガイドライン固まる、回復期は175点以上に設定
高度急性期は3000点、急性期は600点、回復期は225点以上と厚労省が提案-地域医療構想GL検討会(速報)

高度急性期15.5%、急性期47.1%、回復期8.8%、慢性期28.6%―病床機能報告の14年度末まとめ
特定機能病院は95.6%の病床を高度急性期と報告―病床機能報告の速報値(第3報)
病床機能報告、14年度結果を踏まえ今年度分から見直し―地域医療構想GL検討会

地域医療構想策定後はもちろん、策定前から地域医療の課題抽出をすべき―地域医療構想策定GL検討会
「病棟の機能」の再議論望む声相次ぐ―地域医療構想GL検討会
ICUやHCUが慢性期機能と報告した場合など、厚労省から「修正」依頼も―地域医療構想策定GL検討会
病院・病床の機能分化はペースも重要、短期間での達成は好ましくない―厚労省・佐々木室長

地域医療構想策定に向け、「地域で欠けている医療機能」や「医療提供体制の評価」が必要―厚労省・神田医政局長

新公立病院改革プラン、92.7%で策定完了だが、一部病院では2018年度にずれ込む―総務省
地域医療構想踏まえ、9月または12月までに「公的病院改革プラン」を策定せよ—厚労省