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地域ニーズに合う医療提供体制の構築支援を―全自病等10団体が要望書

2017.11.22.(水)

 地域医療構想の達成に向けた取り組みで、医療費の抑制があまりに強調されれば医療現場が気概を失う。病床削減を目的としない形で具体的な協議が地域ごとに進み、地域住民のニーズに対応可能な医療提供体制が構築されるように、国は積極的に都道府県などを支援すべき―。

 全国自治体病院協議会(全自病)や全国知事会など自治体病院関係10団体は11月14日、来年度(2018年度)の予算編成や診療報酬改定などに向け、こうした要望を取りまとめて厚生労働省などに提出しました。

 この中で、「地域医療介護総合確保基金」の偏りない配分や、2019年10月に予定される消費税率の引き上げ(8%→10%)によって生じる財源を活用することで、地域医療構想を達成すべきなどと主張しています。

 また、▼医師の地域偏在の解決策として、一定期間の医師不足地域での勤務実績がなければ病院などの管理者になれない仕組みを設ける▼医師の働き方改革(長時間労働の是正)に向けた議論を、医師の需給バランス面の議論と同時進行させる―といったことも要望しています。

地域医療構想の達成に向けた基金の配分に注文

 少子高齢化が進むにつれて今後、患者側の医療ニーズが変化します(肺炎や骨折での入院ニーズが増え、大手術が必要な急性疾患での入院ニーズは減る)。医療提供体制が今のままでは、手術などを行う急性期機能の病床数が余る一方で、患者の身体機能を回復させて在宅復帰させる回復期機能の病床数が不足すると考えられます。

 そこで都道府県では、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年時点のニーズに合った必要病床数を、機能ごと(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)に、地域単位(二次医療圏ごと)で推計し、地域医療構想として公表しています。

 それを踏まえて医療提供体制を再構築するには、病院・有床診療所それぞれが、自院の設備や職員数、これまでに果たしてきた役割などを振り返った上で、都道府県が公表した情報(将来の地域の医療ニーズ)を踏まえて、今後果たしていく機能を決める必要があります。例えば、「これまでは2病棟で急性期機能を担ってきたが、急性期医療のニーズがこれから少なくなるから、1病棟は回復期機能に見直そう」といった考え方です。

 ただし、地域全体で見たときに、病床機能の転換を決断する医療機関が多過ぎても少な過ぎても、医療提供体制は将来のニーズと合わなくなってしまいます。そこで、病院などの関係者が地域医療構想調整会議で、地域医療構想の実現に向けた方策を話し合っています。さらに病院が機能の転換を決断した場合、病棟改修の費用などを「地域医療介護総合確保基金」で支援する仕組みが準備されています。

 全自病等はこの「地域医療介護総合確保基金」について、「官民の公平に配慮しつつ、民間病院のみならず、自治体病院が十分活用できるようにする」よう求めています。

 昨年度(2016年度)の基金(医療分、国費負担は602.4億円)の配分先をみると、2016年11月時点では「民間機関」が65.5%(394.6億円)を占め、自治体病院など「公的機関」は26.0%(156.4億円)にとどまりました(なお51.4億円の交付先は未定)。全自病などの要望は、こうした状況を踏まえたものです。

 医療分基金の財源は2014年度から毎年度、国・地方分を合わせて904億円でしたが、全自病などは「(2019年10月の)消費税の引上げ分を予算として確保」すべきだとも主張しています。

 また基金の使い道は「地域医療構想の達成に向けた施設・設備の整備」が50.6%(305.1億円)、「医療従事者の確保・養成」が44.2%(266.3億円)、「居宅等における医療の提供」が5.1%(31.0億円)でした。これについて全自病などは、「基金で対応すべき課題は地域によって違うため、施設・設備の整備ばかりを偏重せずに、地域の実情に応じて配分すべき」と訴えています。

 さらに、自治体病院ばかりが病床機能の転換を強いられることのないように、都道府県に対して国から的確な助言を行うべきとも主張しています。地域医療構想調整会議では、自治体病院の経営改善計画(新公立病院改革プラン)の内容をチェックすることになっています。もし、関係者間の協議の方向性と合っていなければ、プランを見直すことになっていますが、「自治体病院だけが機能を変え、民間病院は機能を維持して地域医療構想を達成する」といった安易な結論が出ることがないように、けん制したものです。

医師偏在は管理者要件や専門医師数の制限などで解消を

 全自病等は、医師の地域偏在解消に向けた具体策にも言及しています。具体的には、「医師不足地域で一定期間勤務した実績」がなければ病院・診療所の管理者(院長など)になれない仕組みにすべきで、さらに診療科ごとの偏在をなくすために「専門医」数の制限も行う必要があると指摘しています。

 また医師不足対策として、夜間救急へのいわゆるコンビニ受診を抑制するため、「かかりつけ医療機関への受診」などを国民に促すべきとも主張しています。

 さらに、医師の働き方改革について、▼「応召義務」との関係を十分に議論・整理することが不可欠▼医師の労働には、実際の勤務時間と自己研さん時間が混在していて明確に分けられない▼医師の需給バランス面からも議論すべきで、現状では時間外労働規制の課題をクリアできるだけの医師等の増員は実現困難―といったことに十分留意して施策を検討するよう求めています。

 そのほか、▼診療報酬による補てん分を超えて医療機関が負担している「仕入税額相当額」(医療機器などの購入に掛かる消費税のうち、患者に転嫁できない額)が還付される「税制上の措置」を講じる▼来年度(2018年度)診療報酬改定で、医療機関の機能的コストなどを報酬体系に適切に反映させる▼がんの粒子線治療について、有効性や安全性が認められたものから早期に医療保険の対象に加える一方で、粒子線治療施設の「全国的な配置のあり方」(地域別の必要施設数など)を検討し、過剰な整備を防ぐ―といったことも要望しています。

 このうち次期診療報酬改定に向けては、全自病が今年(2017年)6月、9つの提言(全国で数施設しか満たせない施設基準を設定しないことなど)と128項目(出来高関連110項目・DPC関連18項目)の要望をまとめて厚労省に提出しています。11月14日の要望書では、9つの提言と128項目の要望事項を「十分に尊重」するよう求めてもいます。

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