医師少数地域での勤務経験、まずはインセンティブ付与から始めては—全自病・邉見会長
2017.11.16.(木)
医師偏在対策に向けた「実効的な方策」の一環として浮上している、「医師少数地域での一定期間以上の勤務経験」を地域医療支援病院などの管理者要件とする案について、まずは「インセンティブ付与」のような形で緩やかに導入し、効果が芳しくなければ強制的な手法に移行していく形が望ましいのではないか—。
全国自治体病院協議会の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)は、11月15日の定例記者会見で、このような見解を示しました。
いきなり厳格な要件化をすれば、反発を招きかねない
地域間・診療科間での医師偏在が深刻化する中で、厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」では、医療法などの改正も視野にいれた「実効性のある偏在対策」の策定に向けた議論を進めています。
11月8日に開催された医師需給分科会では、一定の強制力を持つ方策として(1)「医師少数地域での一定期間以上の勤務経験」を地域医療支援病院などの管理者要件に据えることをどう考えるか(2)診療所の開業について一定の制限を設けることをどう考えるか—という2つの論点に沿って議論。(1)については、構成員間で温度差こそあるものの、何らかの形で要件化を進めていく方向が固まりつつあります。
この点について邉見会長は、「いきなり厳しい管理者要件を設定すれば反発も置き、また品のない話だが『駆け込み開業』などが増加する可能性も否定できない。まずはインセンティブを付けるなどして緩やかに導入し、効果が出てこなければ厳格な要件化を進めていく形が望ましいのではないか」との見解を示しました。
なお、小熊豊副会長(砂川市病院事業管理者)はメディ・ウォッチに対し、「医師不足地域での一定期間勤務を希望する若手医師は少なくないが、自分の勤務期間が終了した後に、『次の医師が必ず来る』ことが担保されていることを望んでいる。切れ目なく、医師不足地域に医師が向かうような仕組みが必要になるのではないか」との考えを示しました。医師不足地域の住民にとっても、医師にとっても、極めて重要な視点です。
ところで、公立病院改革が進められる中で、日本医師会の中川俊男副会長らは「(とくに都市部の)公立病院では、回復期機能や慢性期機能を担うのではなく、急性期機能に特化すべき」旨の見解を披露しています。この点について邉見会長は、「高齢化の進展によって公立病院の、地域における役割も変わってくる。今後、都市部で急速に高齢化が進み、医療・介護難民が大量発生するとの指摘もある。公立病院の機能を全国一律に考えるのでなく、都市部の公立病院であっても『地域ごとに機能を考えていく』必要がある」点も強調しています。
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