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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

医療・介護従事者の意思なども反映した供給体制の整備を—働き方ビジョン検討会

2017.4.7.(金)

 医療・介護従事者が持つ力量を最大限に発揮できる環境の構築に向けて、▼組織・職種の枠を超えた協働・機能の統合によるパフォーマンスの向上▼予防・治療から看取りに至るまで、患者・住民のQOLの継続的な向上を目指す医療▼人口構成や疾病構造、医療・介護従事者のマインドなどを的確に反映した医療従事者の供給体制整備―といった考え方の転換を図る必要がある―。

 厚生労働省に設置された「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が6日、このような内容の報告書をまとめ、塩崎恭久厚生労働大臣に提出しました(厚労省のサイトはこちら)(関連記事はこちら)。

医師偏在の是正、規制的手段は好ましくない

 報告書では、国民に安心・安全で価値の高い医療を提供するために、個々の医療・介護従事者が持つ力量を最大限に発揮できる環境を整備し、「住民・患者の能動的な関与とニーズに合わせて多様なサービスを設計し創造する(プル型)モデル」「医療・介護従事者の役割や機能が時代の変化に柔軟かつ迅速に適応し、進化できるシステム」を目指す必要があると強調。このために、次のような考え方の転換を図るべきと訴えます。

【働き方】組織・職種のヒエラルキーと縦割り構造から「組織・職種の枠を超えた協働・機能の統合によるパフォーマンスの向上」へ

【医療の在り方】専ら疾病の治癒・回復を担う存在から「予防・治療から看取りに至るまで、患者・住民のQOLを継続的に向上させる存在」へ

【ガバナンス】全国一律の仕組みから「地域と住民が主体的に設計した仕組み」へ

【医療従事者の需給・偏在】固定化した仮定を前提とした供給体制から「人口構成や疾病構造、医療・介護従事者のマインドなどを的確に反映した医療従事者の供給体制」へ

ビジョン検討会が提案うるパラダイムシフトの大枠

ビジョン検討会が提案うるパラダイムシフトの大枠

 

 このうち「医療従事者の需給」については、人口構造の変化(今後、高齢者が増加するが、2040年頃をピークに医療・介護ニーズが減少する可能性)や医療技術の進歩などに鑑みると「一概に増減の必要性を判断することは困難」とした上で、「労働人口減少の中で、あえて医師数を増やす必要がない環境を作り上げることが重要」と強調しました。また偏在対策については、働き方実態調査などから「条件があえば地方勤務を希望する」医師が相当程度存在する点を踏まえて、規制的手段によらず、個々の医師のモチベーションを引き出す方策を講じるべきと提言しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

国際水準を踏まえた専門医の認定基準や制度構築を

 さらに報告書は、こうしたビジョンを実現する方策として、次のような提案も行っています。

(1)能力と意欲を最大限発揮できるキャリアと働き方をフル・サポートするために、▼個々の医療機関の人材・労務マネジメント体制の確立と支援▼女性医師支援の強化▼地域医療支援センター・医療勤務環境改善支援センターの実効性の向上▼柔軟なキャリア選択と専門性追求を両立できる研修▼看護師のキャリアの複線化・多様化―などを行う

(2)地域主導で医療・介護人材を育み、住民の生活を支えるために、▼地域におけるリソースマネジメント▼都道府県における主体的な医師偏在是正の取組み▼外来医療の最適化に向けた枠組みの構築▼地域包括ケアの基盤を支える人材養成と連携・統合―などを行う

(3)高い生産性と付加価値を生み出すために、▼タスクシェアリングなどの推進▼医科歯科連携・歯科疾患予防の推進▼フィジシャン・アシスタント(PA)の創設▼テクノロジーの積極的活用・推進▼保健医療・介護情報基盤の構築と活用▼遠隔医療の推進―に取り組む

 

 このうち(1)の「柔軟なキャリア選択と専門性追求を両立できる研修」では、「国際的水 準を担保し、評価される専門医制度の確立・運営」が喫緊の課題と指摘。国際評価に耐えうる医療の質の担保や、地域枠の卒業医師を含めた若手医師のキャリアなどへの配慮、制度構築の議論の透明性の確保が必要とし、▼国際標準に見合 った医療の質を確保するのに必要な教育プログラムが構築されているか▼各地域で最適化された医師確保・配置や機能連携において必要な役割を果たすことができているか▼総合診療専門医の育成により一層注力する―という視点に立って、専門医認定の基準づくり、枠組みの整備を行っていくべきと提案しています。新専門医制度については、2018年度からの専攻医養成に向けて検討が進められていましたが、ここにきて雲行きが怪しくなっており、今回の提言がどのような影響を及ぼすのか注目されます(関連記事はこちらこちら)。

 

 検討会では「白地に絵を描くもの」として、斬新な提言が行われることが期待されました。しかし報告書を眺めると、「表現ぶりこそ変わっているが、内容は十数年も前から指摘され続けている」もの、あるいは「つい最近、別の検討会で提言された」ものなどが大部分を占めています。さらに提言内容は「極めて抽象的な提案」から「ピンポイントの指示」まで大きな温度差があり、今後、どのように具体化していくのかが大きな課題となるでしょう。

  
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