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急性期拠点病院、「救急搬送件数、全身麻酔手術件数」等が基本だが、諸要素考慮して選定せよ—地域医療構想・医療計画検討会

2026.1.29.(木)

急性期拠点病院の選定にあたっては、「救急搬送受け入れ件数、全身麻酔手術件数」などの診療実績データを勘案することを基本とするが、それだけでは問題が出ることも多く、諸要素を考慮して選定する必要がある―。

1つの病院が「複数の医療機関機能」を報告することが可能だが、この場合には「機能ごとの診療実績データ」も併せて報告を求めることとする―。

地域医療構想の作成スケジュールについては、「26年度から2027年度上半期にかけて、地域の現状や課題の把握を進め、必要に応じて構想区域の見直しを行う」→「地域の課題を設定した後、2028年度中までに『取り組みの方向性』を決定する」→「その後、第9次医療計画の検討過程において、『具体的な取り組み』を検討する」→「2035年を目途に一定の成果を確保する」—こととする―。

1月28日に開催された「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった点が確認されました。新地域医療構想のガイドライン策定論議がかなり煮詰まってきています。

急性期拠点病院、診療実績データを基本に、諸要素を考慮して地域で選定せよ

2040年頃を目指した「地域医療構想の実現」が、医療提供体制における重要なテーマとなっています。

「地域医療構想の実現」は、「地域の医療ニーズ」と「地域の医療資源」(病床、医療従事者、設備など)とを過不足なくマッチさせることを意味します。「将来の地域における医療ニーズ」を表現したものが【地域医療構想】、「現在の地域における医療資源」を表現したものが【病床機能報告】と言え、地域の協議の場(地域医療構想調整会議など)で関係者が膝を突き合わせて、【地域医療構想】(医療ニーズ)と【病床機能報告】(医療資源)との調和をどう図っていくかを議論し、合意のうえで「病院・病床の機能転換」や「規模の最適化」などを進めていくことが求められます。

将来の医療ニーズを示す【地域医療構想】には、例えば2040年において▼「高度急性期病床は何床必要か、急性期病床は何床必要か、包括期病床は・・・」といった、機能別の必要病床数▼「急性期拠点病院はどこか、高齢者救急・地域急性期拠点病院はどこか・・・」といった、医療機関の機能—などを明示することになります。

また、現在の医療資源を示す【病床機能報告】では、現在・2040年において▼「自院には高度急性期病床は何床あるのか、急性期病床は何床あるのか」といった、病床機能▼「自院を急性期拠点病院と考えるのか、高齢者救急・地域急性期拠点病院と考えるのか」といった、医療機関機能—などを報告することが必要です(ほかに病院・病棟の機能を示す構造・設備、スタッフなども報告する)。

1月28日の検討会では、主に(1)医療機関機能(2)構想区域(3)地域での協議の在り方—に関する議論が行われました。



まず(1)の医療機関機能については、すでに大学病院本院を除いて▼急性期拠点機能▼高齢者救急・地域急性期機能▼在宅医療等連携機能▼専門等機能—の4機能とすることが決まっています(関連記事はこちら)。

医療機関機能報告(新地域医療構想検討会6 241203)



このうち「急性期拠点機能」については、急性期の総合的な診療機能を担うために「医師や症例(患者)を集約する」、より具体的には「人口20-30万人ごとに1か所」設置する方向が固められています(関連記事はこちら)。

この点、急性期の総合的な診療機能の重要指標として「救急搬送受け入れ件数」と「全身麻酔手術実施件数」があげられ、例えば「救急受け入れ件数が年間●件以上、全身麻酔手術件数が年間●件以上」などの一定の目安が示されるのではないか、と見込まれています(ほかにも災害拠点病院の指定、新興感染症発生時の医療措置協定の締結、地域医療機関への医師派遣などの機能も期待されている、関連記事はこちら)。

もっとも「救急搬送●件以上」などの診療実績基準を絶対条件・金科玉条に据えた場合には、例えば「地域の軽症患者も急性期拠点機能を目指す病院に搬送することになってしまい、かえって病院の機能分化を妨げはしないか」などの問題点もあります(手術についても同様)。

また、がん専門病院(がん診療連携拠点病院である都道府県のがんセンターなど)は「地域の急性期医療の拠点的機能を果たしている」と考えられますが、救急搬送受け入れ件数は必ずしも多くありません。このため「どういった医療機関機能を選択すればよいのか」という疑問が地域の医療関係者にあると言います。

がん専門病院は何機能か・・・(地域医療構想・医療計画検討会1 260128)



こうした点を踏まえて厚労省は「急性期拠点機能の確保」について、次のように考えるべきではないか、との提案を行いました(関連記事はこちら)。

▽急性期拠点機能は「手術や救急医療等の医療資源を多く要する症例を集約化した医療 提供を行う」もので、救急搬送や全身麻酔手術等の医療資源を要する医療等の診療実績(件数や地域内シェア)が基本となる

▽単純に救急車の受け入れ台数等で決定することは「救急車の搬送件数が増加される懸念」「新興感染症への対応等の政策医療を行わない医療機関が当該機能を担うことによる地域の医療提供体制への懸念」がある

▽「診療実績がトップであるが、建物が老朽化している」場合もある(昨今の経済状況から大規模急性期病院の建て替えには極めて高額な費用がかかり、「建て替え不可→近い将来、構造設備等が急性期医療提供に相応しくなくなる」可能性もある)。この場合、2040年やその先を見据えると「急性期に係る診療実績は相対的に低い(トップではない)が、建て替えが当面必要ないその他の医療機関」が当該機能を担うことも考えられる

▽「診療実績がトップであるが、経営状況が悪い」場合もある(病院経営を維持するためには補助金による支援等が必要になってくるが、その場合、地域の医療提供体制維持のために巨額の費用が発生することになる、この負担は最終的に地域住民や国民全体がしなければならない)。そうした場合には当該機能を別の医療機関が担うことも考えられる

▽このため、急性期拠点機能については「診療実績やその他の関連データも踏まえ、診療実績データを基本とする」が、政策医療の実施状況や経営状況、建物の状況等も含めて「総合的に 地域で協議する」こととしてはどうか



この考え方に異論は出ていませんが、岡俊明構成員(日本病院会副会長)は「昨今の物価高等で病院の建て替えは非常に難しくなっている。単純に『老朽化しているので別の病院を急性期拠点に据える』と考えるのではなく、地域で必要な病院(急性期拠点病院もその1つ)の建て替え支援を国レベルで検討する必要があるのではないか」との旨を進言しています。ほか「急性期拠点病院は包括期病棟を持たない、などの基準を定めるべきではないか」(猪口正孝構成員:全日本病院協会副会長)、「再編・統合により高度急性期の大病院ができることは好ましくない。手術件数では難易度なども考慮すべき」(伊藤伸一委員:日本医療法人協会会長)などの意見も出ています。

医療機関の担う役割と、医療機関機能との関係イメージ(地域医療構想・医療計画検討会2 260128)

1病院が複数の医療機関機能を報告する場合、機能ごとに診療実績データも報告

また、1つの病院が複数の機能を報告することが認められています(例えば在宅療養支援病院の中には「在宅医療等連携機能」が主軸となるが、高齢の救急患者を数多く受け入れ「高齢者救急・地域急性期機能」を果たすところもある)。

この点について厚労省は「医療機関機能は『医療機関が自院の地域における役割を検討する』ためのものであると同時に『消防関係者が医療機関の診療機能の把握をすること、介護関係者が在宅医療についての取組状況を理解することなど、地域の関係者が各医療機関の役割を理解できるようにする』ことが重要。医療機関機能報告・病床機能報告において、それぞれの役割に応じた診療実績等を報告することとしてはどうか」との考えを示しました。例えば「在宅医療等連携機能」と報告する病院には、同時に「在宅医療提供や在宅医療への支援」実績などを、「高齢者救急・地域急性期機能」と報告する病院には、同時に「高齢の救急患者受け入れ」実績などの報告も求めるイメージです。

岡委員は「一定の報告基準や、主たる機能の報告を求めることなどを検討する必要があるのではないか。多くの病院が制限なく複数の機能を報告すれば、病院の機能分化は進まない」旨の考えを示しています。

この点、「医療機関機能報告」と同時に「診療実績データの報告」なども併せて行えば、データの集積によって「●●機能には、◆◆の診療実績が◇◇件程度必要なのではないか」という知見が得られそうです。そうした知見も参考に、定期的な「地域医療構想の見直し」の際に基準を検討していくことなども考えられそうです。今後の動きを見守る必要があるでしょう。



ほか、医療機関機能については次のような考え方も厚労省から示されました。

▽医療機関の連携・再編・集約化などを進める中で、がんの入院受療率が低下するなど「医療計画で位置づけてきた医療機関の類型」について、これまで担ってきた各施設の役割が「新たな地域医療構想における方向性」などと合致しているかを確認することが必要である。第9次医療計画に向けた「5疾病6事業等の検討」にあたり、新たな地域医療構想における方向性を踏まえ、医療機関の類型などの考え方についても確認し、必要に応じて整理する

▽有床診療所は「専門等機能」することが基本となるが、在宅医療の積極的な提供や高齢者救急の受け入れ等を担っている場合などには、地域の実情に応じて「在宅医療等連携 機能」や「高齢者救急・地域急性期機能」も報告可能とする

▽「特定の診療科に特化した医療機関における手術」や「小規模病院での手術」などについて、「麻酔科医」などの構想区域内全体の医療資源の状況・都道府県内の医療資源の偏り是正の観点等も踏まえながら2040年に向けて検討することが必要な旨を、ガイドラインで整理する(急性期拠点病院に手術症例を集約すると、必然的に麻酔科医も急性期拠点病院に集約していくことになるが、それ以外の病院でも、増加する高齢者の骨折をはじめとした手術を実施する必要がある。麻酔科医の「一定の集約」論議を進めつつも、他機能病院での手術実施体制も確保する必要がある)

特定の診療科を専門とする病院の手術件数等(地域医療構想・医療計画検討会4 260128)

麻酔科医の集約が必要だが・・・(地域医療構想・医療計画検討会3 260128)



▽大学病院本院の担う「医育および広域診療機能」について、各都道府県と大学病院本院の連携のあり方は様々であるため、「大学病院本院による地域医療構想に沿った形での人的協力(つまり医師派遣)に向けた連携等の取り組み事例」を横展開できるようにガイドラインで示す
▽「広域な観点での診療」について、「小児がん」「移植医療」など、症例数が少ない医療提供のため、都道府県単位またはより広域な単位で連携して医療を提供することが求められる。医育についても、当該地域で多様な症例に対応する人材を育成できる体制の構築が必要である。大学病院本院には、こうした機能に係る情報を医療機関機能報告・病床機能報告で報告し、地域医療構想調整会議で議論を行えるようガイドラインに位置づける

大学病院による医師派遣の進め方例(地域医療構想・医療計画検討会5 260128)

地域医療構想の作成スケジュールを確認、26年度から地域の現状や課題の把握を進めよ

また(2)の構想区域や(3)地域での協議の在り方に関しては、次のような考え方が厚労省から示されています。

【地域医療構想の策定】
▽広く関係者で現状や課題の認識を共有することが重要であるため、次のように進める
▼2026年度から2027年度上半期を目途に、「構想区域ごとの現状の把握、医療機関機能の確保、その他の2040年に向けて中心的に取り組むべき課題」「都道府県単位で取り組むべき課題」を設定し、必要に応じて地域医療構想区域の見直しを行う
→区域ごとの議論に資するよう検討すべき課題の例をガイドラインで示す

▼課題の設定後、2028年度中までに「取り組みの方向性」を決定する

▼具体的な取り組みについては、第9次医療計画の検討の過程(第9次医療計画は2030年度からスタートするため、2028年度に国で基本方針を示し、29年度に各都道府県で計画を検討・作成する)などで検討し、2035年を目途に一定の成果を確保する

地域の課題把握例(地域医療構想・医療計画検討会6 260128)

県ごとの課題把握例(地域医療構想・医療計画検討会7 260128)



▽「現状の把握」「議論で必要となる人口推計などの基本となるデータ」についてガイドラインで整理する

現状の把握例(人口推計)(地域医療構想・医療計画検討会8 260128)

現状の把握例(医療資源)(地域医療構想・医療計画検討会9 260128)



▽診療領域別の病院ごとの入院患者数などの詳細なデータについて、国からの提供や都道府県が公開データから加工できるような体制作りに向けた支援を行う

診療領域別の医療機関毎診療実績例(地域医療構想・医療計画検討会10 260128)



▽今後の「地域の協議」において把握が必要なデータで、病院からの報告で把握できるものは「医療機関機能報告・病床機能報告」の中に位置付ける



【構想区域の設定】
▽医療需要の見通しなどのデータを踏まえて、「急性期拠点機能の確保が困難な場合」「大都市等において、地域での協議がより実効的になることが考えられる場合」には、構想区域の見直しを検討する(関連記事はこちら

▽特に、人口の少ない2つの地域が「都道府県を越えた隣接する区域間で実質的に流出入がある」などの場合には、急性期拠点機能病院を両区域で1つ整備することなどが現実的である

▽こうした場合、都道府県間での「区域の統合はしない」が、「実質的には調整会議を一体として運用し、両県で連携して取り組みを推進する」など、実質的な取組が進むような連携のあり方をガイドラインに位置づける



【地域医療構想調整会議の在り方】
新地域医療構想では、入院医療だけでなく外来医療や在宅医療も対象となり、地域住民の参画がますます重要となるため、次のような考え方を明確にする
▼地域住民が地域の課題を適切に把握などできるよう、住民やその他の関係者が「地域医療構想の全体的な方針等を議論する県全体の調整会議」に参画することを求める
▼各構想区域の協議においても、現状の把握や課題の共有、対応案の検討等の各段階において、「各医療機関の経営方針に関する協議」などを除いて、可能な限り住民やその他の関係者が参画ができるよう努める

▽各協議事項について、保険者に対して「保険者協議会の場を活用する」など、定期的に報告する場を設定する

▽効率的かつ効果的に調整会議を運用できるよう、下図表のように検討事項や既存の協議体との関係を整理する

検討事項と協議の場(地域医療構想・医療計画検討会11 260128)



▽市町村や介護関係者には、「市町村立病院の開設者としての役割」「医療と介護の連携にあたっての当事者としての役割」なども考えられ、その役割を下図表のように整理しガイドラインに位置付ける

関係者の役割(地域医療構想・医療計画検討会12 260128)



こうした考え方に異論・反論は出ていませんが、▼外来医療や在宅医療に関しては「かかりつけ医機能報告」のデータなども活用することを明確にすべき(土居丈朗構成員:慶應義塾大学経済学部教授)▼診療実績データ(領域別の病院毎データなど)は国主導で収集・整理し、都道府県に提供してほしい(岡構成員)▼都道府県間の連携・合意は非常に難しく、くどいほど言わなければ都道府県は動かない点に留意すべき(今村知明構成員:奈良県立医科大学教授)▼地域医療構想調整会議の議論を活性化させるため、より深い見識のあるアドバイザー養成・派遣などを進めてほしい(坂本泰三構成員:日本医師会常任理事)▼在宅医療ニーズへの対応は、在宅医療を行う医療機関だけでなく、慢性期病床や介護保険施設(とりわけ老人保健施設)も行っている。この3要素を勘案しなければならない(松田晋哉構成員:福岡国際医療福祉大学ヘルスデータサイエンスセンター所長)▼住民参加が非常に重要であると同時に、地域住民に地域の課題などを把握してもらうためにメィデア(地方紙など)を十分に活用すべき(鈴木美穂構成員:マギーズ東京共同代表理事、松田構成員)▼具体的な取り組みについて「第9次医療計画の検討の過程」で検討するとあるが、可能なものは前倒しで検討を進めるべき(伊藤悦郎構成員:健康保険組合連合会常務理事)—などの注文が付いています。



新地域医療構想のガイドライン策定論議は相当程度進んでおり、近く「ガイドラインの取りまとめ」に向けた議論に入っていく見込みです。





病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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