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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

公立・公的病院と民間病院が競合する地域、公立等でなければ担えない機能を明確に―地域医療構想ワーキング(1)

2018.7.20.(金)

 公立・公的病院と民間病院が競合する地域では、公立・公的病院は「公立等でなければ担えない機能」に特化することが求められる。その際、民間病院側は「●●の機能は民間病院が十分担っている」といったエビデンスを出す必要がある―。

 7月20日に開催された地域医療構想ワーキンググループ(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こういった考え方の整理が行われました。

7月20日に開催された、「第15回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

7月20日に開催された、「第15回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

 

公立・公的病院の改革プランについて、調整会議で速やかに協議し合意を

 医療提供体制の再構築に向けて、地域医療構想の実現が急務とされています。骨太の方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)では、「個別の病院名・病床数を掲げ、機能転換に向けた具体的対応方針を速やかに策定するため、2017・18年度の2年間程度で集中的な検討を促進する」旨が、また骨太の方針2018では「公立・公的医療機関については、地域の医療需要等を踏まえつつ、地域の民間医療機関で担うことができない▼高度急性期・急性期医療▼不採算部門▼過疎地等の医療提供—などに重点化するよう医療機能を見直し、これを達成するための再編・統合の議論を進める」旨の指示がなされていることなどを受け(関連記事はこちら)、全国の地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で公立・公的医療機関における将来の機能・規模などに関する議論が活発化しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

実際に、今年(2018年)6月末時点における各調整会議の状況を見ると、次のように議論が進んでいることが分かりました。

▽新公立病院改革プランを策定済の公立医療機関は820(2018年3月時点では816)、調整会議で議論を開始している公立医療機関は707(同650)、ベッド数ベースでは88%の公立医療機関で議論開始済

▽公的医療機関等2025プランを策定済の公的医療機関等は820(2018年3月時点では813)、調整会議で議論を開始している公的医療機関等は711(同617)、ベッド数ベースでは86%の公的医療機関等で議論開始済
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▽新公立病院改革プランについて「合意」済の公立医療機関は92(2018年3月時点では38)、ベッド数ベースでは14%の公立医療機関で「合意」済

▽公的医療機関等2025プランについて「合意」済の公的医療機関等は176(2018年3月時点では70)、ベッド数ベースでは20%の公的医療機関等で「合意」済
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 公立・公的病院は、地域で基幹病院的な役割を担っていることが多く、調整会議では▼まず公立・公的医療機関の将来の機能などについて協議する(2017年度中に開始)▼その他の医療機関(民間病院)のうち、将来の役割に大きな変更のある病院については、事業計画を策定し、速やかに協議する▼その他の医療機関について、遅くとも2018年度末までに協議を始める―という大きなスケジュールが厚生労働省によって描かれているためです。

公立・公的病院と民間病院とが競合する地域、公立等でなければ担えない機能を明確に

 この点について、7月20日に開催されたワーキングでは、次のような認識の共有が改めて行われました。

▽規模の大きな民間病院がなく、公立・公的病院が地域の急性期から慢性期まで総合的な医療提供体制を担っている地域では、当然、公立・公的病院が高度急性期から慢性期までのあらゆる機能を担う

▽公立・公的病院と民間病院とが競合しているような地域(比較的都市部に多い)では、公立・公的病院は、公立・公的でなければ担えない機能(上述の「骨太方針2018」で例示されているような機能)に特化し、民間病院で担える機能は民間に譲る

▽こうした点について各調整会議で協議する必要があり、そこでは、例えば民間病院側から「●●の機能は民間病院で十分担えている」といったエビデンスを提示する必要がある

この考え方は、小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)からの「一部では、『公立・公的病院が民間よりも先に改革プランを提示し、例えば高度急性期・急性期病床を埋め(奪ってしまう)、残りを民間病院で分けることになる』といった意見が、逆に『公立・公的病院は民間と競合している分野は、すべて民間に明け渡さなければならない』といった意見が出ているようだ。きちんと整理すべきではないか」といった指摘を受け、中川俊男構成員(日本医師会副会長)が整理したものです。地域の医療関係者にとって、実に理解しやすい整理の仕方と言えるでしょう。

 
この点、民間医療機関の代表といった立場でワーキングに参加している伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)もこの整理に理解を示した上で、「民間医療機関では、大きな機能転換を予定している場合以外は、将来の事業計画を出すことになっていない。公立・公的医療機関と民間医療機関とが競合している地域では、公立・公的医療機関の改革プランを先に議論し、そこでは民間の事業計画は勘案されないことになりはしないか」との問題提起を行いました。

確かに、民間医療機関が事業計画等を出していなければ、当然「民間医療機関が担っている機能」に関するエビデンスが調整会議に示されず、「当該地域では公立・公的医療機関の機能・規模を先に決める」ことになってしまいそうです。

伊藤委員は、こうした事態を懸念し、「公立・公的医療機関と民間医療機関とが競合している地域では、民間医療機関も速やかに事業計画を示すべき」といった通達を行うべきではないかと要望しました。これに対し、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「大きな機能転換を予定していない民間医療機関であっても、事業計画を作成し調整会議に示すことは禁じていない」と説明した上で、「まず、公立・公的医療機関と民間医療機関とが競合している地域(例えば大阪市や福岡市などが思い浮かびます)で、どのような協議が行われているのかなどを調べ、それを分析し、事例の共有などを行ってはどうか」との考えを示しました。

伊藤構成員の懸念が現実化していれば、民間医療機関に「速やかな事業計画の策定」を促すことも考えられるでしょうし、またそうした懸念が杞憂に終わると見込まれる場合には、国が主導するのではなく、各調整会議の議論に委ねることが好ましいと言えそうです。
 
 
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