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2018年度の病床機能報告に向け、「定量基準」を導入すべきか―地域医療構想ワーキング

2018.3.28.(水)

 一般病床・療養病床を持つすべての病院・有床診療所に義務付けられている病床機能報告制度について、各病棟が高度急性期・急性期・回復期・慢性期のいずれの機能に該当するのかを判断する際の目安となる「定量基準」を設定すべく、議論していく―。

3月28日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織、以下、ワーキング)で、こうした方向が概ね固まりました(導入が決まったわけではない点にご注意を)。

また、高度急性期・急性期と報告しながら、「幅広い手術の実施」や「全身管理」などを全く実施していない病院・病棟については、データをもとに地域医療構想調整会議で状況確認を行うことも了承されています。

3月28日に開催された、「第12回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

3月28日に開催された、「第12回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

奈良県や佐賀県では、「回復期の過不足」を考えるための独自基準を設定

2025年には、いわゆる団塊の世代の方が全員75歳以上となるため、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。このニーズに現在の医療・介護提供体制で効果的かつ効率的に対応することは困難であり、病院・病床の機能分化・連携の推進が進められています。

機能分化に向けては、各都道府県で地域医療構想が策定され、2025年度に必要となる高度急性期・急性期・回復期・慢性期ごとのベッド数が規定されています。一方、病院等は「自院の病棟が高度急性期・急性期・回復期・慢性期のいずれの機能を担っており、また将来担うと考えているか」を毎年度、都道府県に報告することが義務付けられています(病床機能報告制度)。

各地域に設置されている地域医療構想調整会議では「どのようにして地域医療構想を実現するか(機能分化を進めていくか)」を議論しており、その素材の1つが、毎年度の病床機能報告結果です。

ところで、病床機能を報告する際の、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の各機能は定性的に規定されており、「病院が報告するに当たり頭を悩ませることがある(どの機能に該当するのかが判断できない)」「各病院によって判断基準が異なり、同じ機能を担っていてもA病院は『急性期』、B病院は『回復期』と異なる報告をしてしまうケースもある」といった課題があります。

病院が選択する4つの病棟機能、高度急性期について「例示」が付記される

病院が選択する4つの病棟機能、高度急性期について「例示」が付記される

 
このため厚生労働省は、これまでに▼特定入院料と各機能の紐づけ(2016年度報告から、関連記事はこちら)▼一般病棟入院基本料と各機能の紐づけ(2017年度報告から、関連記事はこちら)―などを行い、基準の明確化を図っています。しかし、上記の課題は十分には解決しておらず、厚労省は今般、2018年度報告に向けて「定量基準」を検討してはどうかと考えています。
病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ

病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ

▼7対1は高度急性期または急性期▼10対1は急性期または回復期▼13対1・15対1は回復期または慢性期、一部は急性期—といった基本的な紐づけが行われた。もちろん異なる報告をすることも可能である

▼7対1は高度急性期または急性期▼10対1は急性期または回復期▼13対1・15対1は回復期または慢性期、一部は急性期—といった基本的な紐づけが行われた。もちろん異なる報告をすることも可能である

 
「定量基準」を検討する際に参考となるのが、すでに一部都道府県で実施されている「独自の取り組み」です。

例えば、佐賀県では、▼「地域包括ケア入院医療管理料を算定する病床数」「調整会議で回復期への転換協議が整った病床数」は、回復期とみなす(報告は急性期等で行ってもよく、回復期の過不足を判断する際に回復期とみなす)▼急性期病棟のうち「平均在棟日数22日超」の病棟については、将来の回復期の病床数見込みを判断する際に、参考情報とする―との取り組みを行っています。

また、奈良県では、急性期と報告する病棟について、「50床当たりの手術+救急入院件数が1日2件」という独自基準を設けて、▼これを超過する場合には【重症急性期を中心とする病棟】▼そうでない場合には「軽症急性期を中心とする病棟」―と併せての報告を求めています。奈良県では、「両者の機能が異なるのではないか」と考え、この情報も参考に、地域の医療機能分化・連携の強化を検討していると言います(関連記事はこちら)。

奈良県では、急性期と報告した病棟について、一定の基準を設けて「重症急性期病棟」と「軽症急性期病棟」に細分化した報告を求めている

奈良県では、急性期と報告した病棟について、一定の基準を設けて「重症急性期病棟」と「軽症急性期病棟」に細分化した報告を求めている

 
こうした取り組みを精査し、今後、地域医療構想ワーキングで「どのような定量基準が考えられるか」を議論していく方向が概ね固まりました。

定量基準導入で「機能の目安が明らかになる」が、「自由度失わせる」との慎重意見も

この点、今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)や本多伸行構成員(健康保険組合連合会理事)は「定量基準設定」に積極的です。特に今村構成員は「定量基準導入は最初は反対される。しかしさまざまな基準を示し、議論する中で『我が地域では、この定量基準が好ましいのではないか』と決まっていく」と見通し、複数の「定量基準」を準備してはどうかと提案しています。

これに対し、中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「病床機能報告結果は、あくまで傾向を見るもので、過大評価してはいけない。精緻化する意味があるのだろうか」「入院料と機能の紐づけ、急性期で当然行われるべき行為を実施していない病院の確認(後述)については理解できる。しかし、これを超えて定量基準を設ければ、仮に『目安』としても、それが独り歩きし、報告の自由度を狭めることになろう。明らかに問題のある報告内容について各調整会議で状況確認をすることで十分ではないか」と述べ、定量基準導入には難色を示しています。

前述したとおり、地域医療構想調整会議では、地域医療構想の実現に向けて病床機能報告結果等をベースに議論を行っています。ただし、地域医療構想は、将来の推計患者数をもとに「各機能で必要となる病床数(ベッド数)」を規定していますが、病床機能報告は「各病棟が主に担っている機能」を報告するものです。つまり、病床機能報告の中で「A病棟50床が急性期である」と報告したとしても、その50床の中には「回復期患者を診ている病床(ベッド)」もあります。このため、地域医療構想における機能ごとの「病床の必要量」と、病床機能報告制度における機能ごとの「病床数」は、合致しないのです(関連記事はこちら)。中川構成員は、「合致しないものを合わせるためにする努力は、労多くして功少なしである」として、「定量基準」導入に難色を示していると考えられます。

織田正道構成員(全日本病院協会副会長)も同様に「定量基準を示せば、医療現場は混乱するのではないか」と、定量基準導入に慎重な考えを示していますが、「例えば急性期と報告する際に、合わせて『当該病棟には●割程度、post acute(急性期後)の患者がいる』といった付加報告をしてもらってはどうか」との提案も行っています。合理的かつ現実的で、検討に値する提案と言えそうです。

中川構成員のコメントにも頷ける部分が多くあり、一方で「各病院で急性期等の機能の判断が大きく異なってはいけない」という要請もあります。今後、6月までを目安に、地域医療構想ワーキングでさまざまな角度から「定量基準」に関する議論が行われる見込みです。

急性期にもかかわらず手術や全身管理実施していない病棟、調整会議で状況を確認

 病床機能報告制度では、各病棟の「機能」だけでなく、当該病棟の人員配置・構造設備・診療内容なども報告されます。

 厚労省で、各病院が報告した「機能」と、当該病棟の診療内容等を比較したところ、例えば、「循環器内科で、高度急性期と報告している病棟」であるにもかかわらず、一部に「1か月に一度も経皮的冠動脈形成術(PCI)を算定していない」ところがあること、急性期の外科病棟にもかかわらず、「1か月に一度も手術料を算定していない」ところがあること、などが明らかになりました(関連記事はこちらこちら)。

循環器内科で、高度急性期機能と報告している病院の中には、1か月に1度もPTCAを実施していないところもあることなどが分かった

循環器内科で、高度急性期機能と報告している病院の中には、1か月に1度もPTCAを実施していないところもあることなどが分かった

(高度)急性期の外科病棟であるにもかかわらず、手術を1か月に1件も実施していない病棟がある

(高度)急性期の外科病棟であるにもかかわらず、手術を1か月に1件も実施していない病棟がある

 
病棟の各機能は定性的ですが、例えば「●●診療科の高度急性期であれば、少なくとも□□行為は一定程度行って当然」といった「その機能らしさ」を示す診療行為をピックアップすることができます。地域医療構想ワーキングでは今般、高度急性期・急性期病棟において、▼幅広い手術の実施(全く実施していない病棟は3717、急性期の約18%)▼がん・脳卒中・心筋梗塞等への治療(同5365、約25%)▼重症患者への対応(同1万7595、約83%)▼救急医療の実施(同7343、約35%)▼全身管理(同3693、約17%)―の「いずれも、全く実施していない病棟」を拾い上げ、個別病院名をあげて地域医療構想調整会議において「急性期と報告しているが誤りではないか」「なぜこういった診療行為を全く実施していないのか」などを確認してもらう方針を決定しました。

この枠組み自体は、すでに地域医療構想ワーキングに示されていますが、厚労省から「個別病院のデータ」が各地域医療構想調整会議に示され、2018年度から具体的に確認作業が行われることになります。上記診療行為を「いずれも、全く実施していない病棟数」は、次回会合で示される見込みです。

2017年度には、44の特定機能病院が「すべて高度急性期」と報告

 3月28日の地域医療構想ワーキングには、2017年度の病床機能報告結果(速報値)も報告されました。

 病院の病棟について、各機能の状況を経年的に見てみると、次のようになっており、「回復期が徐々に増加している」ものの、2015年度の制度発足から大きな変化はないことが分かります。
【高度急性期】
▼2015年度:16万8904床・14.4%→▼2016年度:16万9481床・14.4%→▼2017年度:16万2498床・13.9%
【急性期】
▼2015年度:54万6387床・46.7%→▼2016年度:53万7543床・45.8%→▼2017年度:53万4511床・45.6%
【回復期】
▼2015年度:11万5914床・9.9%→▼2016年度:12万5602床・10.7%→▼2017年度:13万8690床・11.8%
【慢性期】
▼2015年度:33万9942床・29.0%→▼2016年度:34万866床・29.0%→▼2017年度:33万6025床・28.7%

 さらに、医療機関の種類別の報告状況も示されています。
【公立病院】▼高度急性期:2万4970床・15%▼急性期:10万4266床・64%▼回復期:1万5081床・9%▼慢性期:1万3033床・8%
【日赤病院】▼高度急性期:1万3689床・39%▼急性期:1万7970床・51%▼回復期:1414床・4%▼慢性期:1425床・4%
【済生会】▼高度急性期:3705床・17%▼急性期:1万3620床・63%▼回復期:2394床・11%▼慢性期:1372床・6%
【特定機能病院】▼高度急性期:5万6972床・85%▼急性期:9502床・14%▼回復期:86床・0%▼慢性期:0床・0%

 このうち特定機能病院については、個別病院の報告内容も明らかにされており、半数超の44病院が「全病棟が高度急性期である」と報告しています。

 厚労省は、「特定機能病院であっても、個々の病棟については必ずしもすべて高度急性期と限らないため、病棟機能の選択にあたって、個々の病棟の役割や入院患者の状態に照らして医療機能を適切に選択してほしい」との考えを明らかにしており、「全病棟が高度急性期」との報告は減っています(2016年度は56病院)。しかし、一部の特定機能病院では、2016年度には「高度急性期と急性期」で報告していますが、2017年度には「すべて高度急性期」での報告となってしまっています。中川構成員はこの点を問題視し、「このデータを見ても病床機能報告結果を過大評価してはいけないことが分かる」とコメントしています。

特定機能病院も地域医療提供体制の一員であり、例えば「全病棟を高度急性期と報告しているが、診療実績等に照らして妥当な報告内容か」といった点が、地域医療構想調整会議で確認・検証されることになります。

 

 

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