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2021年に医療計画の中間見直し、在宅医療推進が最重要テーマに―地域医療構想・在宅医療ワーキング(2)

2018.3.5.(月)

 2018年度から新たな第7次医療計画がスタートするが、3年後の2021年度に「中間見直し」を行う。そこでは「地域医療構想の実現に向けて、在宅医療等の重要増にどう対応していくか」が極めて重要となるため、在宅医療の整備などの状況を正確に把握した上で、在宅医療をどのように推進していくか具体来な取り組みを今後、練っていく—。

3月2日に開催された、「地域医療構想に関するワーキンググループ」と「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の合同会議(いずれも、医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織)では、こういった方針も固まりました。

3月2日に開催された、「第11回 地域医療構想に関するワーキンググループ」「第3回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の合同会議

3月2日に開催された、「第11回 地域医療構想に関するワーキンググループ」「第3回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の合同会議

2018年度から第7次医療計画がスタート、3年後の2021年度に中間見直し

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、医療・介護ニーズが急増すると見られています。こうしたニーズに効率的・効果的に対応するために「病院・病床の機能分化、強化および連携の強化」「地域包括ケアシステムの構築」を進める必要があります。

 そこで、厚生労働省は地域の医療提供体制のベースとなる「医療計画」と、介護提供体制のベースとなる「介護保険事業(支援)計画」とを連動させる必要があると考え、従前「5年を1期」としていた医療計画を「6年を1期」とし、「3年を1期」とする介護保険事業(支援)計画と足並みを揃えることとしました。▼2018年度から新たな医療計画(第7次)と介護保険事業(支援)計画(第7期、2021年度から第8期)がスタート▼2024年度から新たな医療計画(第8次)と介護保険事業(支援)計画(第9期、2027年度から第10期)がスタート―というスケジュールを描くことができます。

 医療計画は「6年」と長期計画になるため、また期の途中で新たな介護保険事業(支援)計画がスタートするため、3年後に「中間見直し」を行い、状況の変化を踏まえて、また介護保険との間で足並みに乱れがないかを確認し、修正を行うこととされています(関連記事はこちらこちら)。

医療計画の「中間見直し」で特に重要となるのが「在宅医療提供体制」関連事項です。医療計画の中には地域医療構想が包含され、そこでは「地域の一般・療養病棟を高度急性期・急性期・回復期・慢性期に機能分化していく」ことだけでなく、「療養病床に入院する医療区分1患者について、7割は在宅や介護施設へ移行する」ことなどが規定されています(関連記事はこちらこちら)。

地域医療構想では、▼一般病床に入院する医療資源投入量175点未満の患者(C3未満の患者)▼医療療養病床に入院する医療区分1の患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―を「在宅医療などで対応する」こととなっている

地域医療構想では、▼一般病床に入院する医療資源投入量175点未満の患者(C3未満の患者)▼医療療養病床に入院する医療区分1の患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―を「在宅医療などで対応する」こととなっている

 
このため、在宅医療等のニーズは、従前「高齢化の進行などで2025年に約100万人増加する」と見られていますが、地域医療構想を受け「さらに約30万人増加する」と見込まれています。そこで、▼各地域で在宅医療提供体制をこれまで以上に整備する▼在宅医療の整備は、介護施設の整備状況などと整合性をとる―ことが求められ、2018年度からの第7次医療計画では「在宅医療提供体制の整備計画」を、地域の実情を踏まえて精緻に作成することが都道府県に要請されました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。
地域医療構想では、▼一般病床のC3未満の患者▼医療療養病床の医療区分1患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―は、外来・在宅医療・介護サービスのいずれかで対応することとなり、その整備量をどう見込むかが当面の重要課題の1つである

地域医療構想では、▼一般病床のC3未満の患者▼医療療養病床の医療区分1患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―は、外来・在宅医療・介護サービスのいずれかで対応することとなり、その整備量をどう見込むかが当面の重要課題の1つである

 
3月2日の合同会議では、中間見直しに向けて(1)各都道府県において、在宅医療の整備計画をどの程度、精緻に作成したかを把握する(厚労省が把握)(2)「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」において、(1)で把握したデータをもとに在宅医療推進方策を議論していく—方針を確認しました。

まず在宅医療の整備目標等をどう設定したのか、都道府県計画の実態を把握する

まず(1)で把握されるのは、各都道府県の▼第7次医療計画における在宅医療に係る整備目標▼第7次医療計画に基づく在宅医療に係る取り組み状況—です。

前者の「整備目標」については、上述した「療養病床に入院する医療区分1患者の7割」等について、在宅医療でどの程度受け入れ、介護施設でどの程度受け入れるか、などという配分をどう決定したのかなどを把握します。いわば「ハード」面調査と考えることができそうです。

具体的には、▼在宅医療等のニーズがどの程度増加すると推計したのか▼増加するニーズ等を「在宅医療」「介護施設」のそれぞれでどの程度受け入れる(配分)▼在宅医療(訪問診療等)を実施する医療機関の整備目標をどの程度としたのか▼目標設定の根拠としてどのようなデータ(療養病床から介護医療院への移行に関する意向調査、患者調査、病床機能報告、国保データベース、市町村独自のアンケート調査など)を使用したのか―などです。

合同会議の親組織である「医療計画の見直し等に関する検討会」では、「在宅医療と介護施設との受け入れ配分」について、例えば「患者調査から『医療療養から退院する患者の行先は、在宅医療1:介護施設3という割合』となっていることが分かる」(ただし医療区分は不明で、医療区分2・3の患者も含まれる)、「国保データベース(KDB)から『療養病棟から退院した患者が、どの介護施設に入所したか』などが把握でき、地域独自のデータが合把握できる」(ただし手間は大きい)ことなどを示し、「地域の実情に合わせた配分方法を考えてほしい」としています(関連記事はこちらこちらこちら)。今般の調査で、各都道府県がどのようなデータを選択し、どの程度の在宅医療・介護施設整備量を見込んだのかが明らかになります。

在宅医療の推進に向けて、都道府県が現在何を行っているのかを把握する

後者の「在宅医療に係る取り組み状況」は、いわば「ソフト」面を調査するもので、厚労省は次のような事項について都道府県にアンケートを、毎年度行っていく考えを示しました(関連記事はこちらこちら)。

▽在宅医療提供体制(退院支援ルールを策定しているか、在宅療養支援診療所・病院、訪問看護ステーションなどは地域にどの程度あるか)(例えば、福井県では▼高齢者の入院時に病院側がケアマネに連絡し、ケアマネから情報提供を受ける(ケアマネがいない場合には、病院側が要介護認定申請を支援)▼入院中には病院とケアマネで情報連携する▼退院支援が開始されたら病院からケアマネに連絡し、ケアマネがケアプラン作成などを始める—という退院支援ルールを定めている)

福井県における退院支援ルールの概要

福井県における退院支援ルールの概要

 
▽在宅医療に関する協議体制(在宅医療推進協議会などの協議会・検討会、医療計画・介護保険事業(支援)計画の整合性を図るための「協議の場」(都道府県、市町村、医療・福祉関係者で構成)について、どのようなメンバーで構成し、どの程度の頻度で開催しているか、など)

▽医療計画で設定された目標を実現するために、どのような施策を行うのか

▽目標項目と評価期間(在宅医療を行う医療機関や訪問看護ステーションの数といった「ストラクチャー」にとどまらず、訪問診療・看護を受けた患者数などの「プロセス」、さらにアウトカムについて、どのような指標で測ろうと考えているか)

▽都道府県が把握している「各医療機関等の在宅医療に関する機能」のデータ(在宅療養支援診療所・病院等の届け出状況、在宅医療に従事する職員の数、在宅医療を受けている患者の数や重症度・要介護度、在宅医療を実際に提供した回数、今後の在宅医療サービス実施予定、など)

この点、例えば秋田県や栃木県では、すでに独自の詳細調査を行っていることが判明しています。秋田県では、各医療機関に対し「在宅医療を提供しているか、今後、提供する考えはあるか、逆に撤退する考えを持っているか」などを調べ、地図上に記載。これにより「現在、訪問診療が提供されている地域」と「将来(10年後)、訪問診療が提供される地域」が一目で把握できます。医療機関側は、この地図データをみて「将来、この地域では在宅医療が行われなくなるので、この地域に算入・拡大していこう」などの戦略を立てることも可能です。

在宅医療のさらなる推進に向けて、今後、都道府県等が何をすべきかを検討していく

こうしたデータをもとに、上述(2)にあるように「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」で在宅医療の推進方策を議論していきます。

病院・病床の機能分化を進めるための方策(地域医療構想の実現に向けた方策)については、「地域医療構想に関するワーキンググループ」で、▼まず公立病院や公的病院などが、将来どの機能を果たすのかを明確にする▼次に「その他の医療機関」の将来の機能を明確にしていく▼非稼働病棟について病床削減を求めるなどの対応を行う▼新規開設や増床について、地域医療構想とのミスマッチがある場合には機能転換などの条件を付す―といった具合に、議論の進め方、地域医療構想調整会議や都道府県の役割・取り組み内容を非常に細かく例示しました。これにより「我々は何を議論すればよいのか」「重要なメンバーが会議に参画していない可能性はないのか」といった不安が解消され、機能分化に向けた協議が円滑かつ効率的に進むと期待されます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

在宅医療の推進にあたっても、「推進のためにどういった事項を議論すべきか」「協議にはどのようなメンバーが参画すべきか」「協議を行うために、どのような情報・データをメンバー間で共有しておくべきか」などを細かく定めていくことになりそうです。

 
なお、中間見直しを行った、いわば「見直し版・第7次医療計画」は2021年度からスタートすることになります。厚労省は、▼2019年度中に『中間見直しのために必要となる事項』を整理する▼2020年度に都道府県で中間見直しを行う—という大きなスケジュール(ラフスケジュール)を描いていますが、「短期間(2018・19の2年度)で十分なデータを収集できるか」といった問題もあり、今後、データの集積状況や議論の進行状況を踏まえながら柔軟にスケジュールを見直していくことになるでしょう。

医療計画の見直し等に関するラフ・スケジュール

医療計画の見直し等に関するラフ・スケジュール

佐賀県では一部公立病院の改革プランを調整会議で修正、腹を割った議論を

ところで3月2日の合同会議では、昨年(2017年)12月時点での「地域医療構想調整会議の進捗状況」が厚労省から報告されました。

今年(2018年)3月までの調整会議の開催数(予定含む)を見ると、▼山形県:6回▼東京都・佐賀県:5回―と積極的な自治体もあれば、1回開催にとどまっているところ(秋田県、山梨県、奈良県、香川県、大分県)もあり、バラつきがあります。ただし、例えば奈良県では、調整会議とは別に、地域の医療関係者が集う「意見交換会」を数多く開催しており、「調整会議の開催数」のみで都道府県の姿勢を判断することはできないようです。

また調整会議で優先的に議論すべき「新公立病院改革プラン」(各公立病院が将来、どういった機能を持つかなどの計画)に関して、青森県・石川県・山梨県・長野県・岐阜県・奈良県・和歌山県では「県内の全公立病院」について議論を始めていますが、宮城県や神奈川県などでは「まだ議論していない」状況で、こちらもバラつきが大きいようです。

厚労省は「調整会議論議が同レベルで進捗するように、都道府県を支援していく」考えを強調しています。

 
なお厚労省からは、佐賀県における「新公立病院改革プランに関する論議の実例」も報告されました。そこでは、NHO佐賀病院(急性期76床、回復期60床、慢性期165床、休眠55床)から、「休眠している病棟について、民間の回復期転換が進まない場合、回復期として復活させる」との計画が提出されました。しかし、県サイドは「回復期は民間からの転換が進み、充足される」との見通しを示し、調整会議で「復活させず、削減する」とのプラン修正を行うことが決まったと言います。

2017・18の2年度が地域医療構想の実現に向けた集中期間に位置付けられており、こうした率直な議論・腹を割った議論を各調整会議で行っていくことが期待されます。

 
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