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2018年度からの医療計画、5疾病・5事業などの政策循環を強化し、介護保険計画との整合性確保を—厚労省

2017.4.3.(月)

 2018年度からの次期医療計画を作成するにあたり、▼急性期から回復期、慢性期までを含めた一体的な医療提供体制の構築▼疾病・事業横断的な医療提供体制の構築▼5疾病・5事業および在宅医療に係る指標の見直しなどによる政策循環の仕組みの強化▼介護保険事業(支援)計画などの他計画との整合性の確保―に留意する必要がある。

 厚生労働省は3月31日付けで、都道府県知事宛てにこのような内容の医政局長通知「医療計画について」(以下、局長通知)を発出しました(局長通知はこちら、通知本文新旧対照表)。あわせて、地域医療計画課長通知「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(以下、課長通知)も発出し、医療計画に定める数値目標や、5疾病・5事業および在宅医療についての評価指標例などを明示しています(課長通知はこちら、通知本体医療計画で定める数値目標評価指標例新旧対照表)。

2018年度から、医療計画と介護計画の見直しサイクルが一致

 2018年度から新たな医療計画(第7次医療計画)がスタートするため、都道府県では今年度(2017年度)中に計画を作成する必要があります。今般の通知は、計画作成の拠り所となるもので、「医療計画の見直し等に関する検討会」でまとめられた意見を踏まえて設計されました。

 新たな計画の最重要ポイントは、介護保険事業(支援)計画との整合性確保にあると言えます。2018年度からは医療計画と、介護保険事業(支援)計画のサイクルが揃えられ(医療計画は6年計画で、中間の3年で中間見直しを行う。介護保険計画は3年計画)、両者が一体となって地域包括ケアシステムを構築していく必要があるためです(関連記事はこちら)。

 局長通知では、▼医療計画(都道府県が作成)▼介護保険事業支援計画(同)▼介護保険事業計画(市町村が作成)を「一体的」に作成し、「整合性を確保」できるよう、都道府県担当者・市町村担当者や地域の医療・介護関係者で構成される「協議の場」を設置するよう指示しています。地域医療構想では、医療療養病床に入院する医療区分1の患者の7割などを在宅医療や介護サービスで対応することとしているため、とくに「在宅医療」などの必要量について整合性を確保した計画づくりが不可欠となります。局長通知は「介護保険事業(支援)計画で掲げる介護の整備目標と、医療計画で掲げる在宅医療の整備目標が整合的なものとなるよう、必要な事項についての協議を行う」よう強く求めています。

医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を図るため、都道府県と市町村の関係者で「協議の場」を設ける(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)

医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を図るため、都道府県と市町村の関係者で「協議の場」を設ける(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)

基準病床数の算定式を見直し、人口増加地域では「毎年」の見直しも

 医療計画には、地域におけるベッド数が過剰とならないよう、事実上のベッド数上限となる「基準病床数」を定めます。一般病床と療養病床の算定式は、実状に合わせて次のように見直されています。従前、流出入院患者数>流入入院患者数となっている場合には基準病床数の加算が可能でしたが、2018年度からは「都道府県の間で基準病床数の調整を行う」ことに見直されています。

【一般病床】{(区域の性別・年齢階級別人口)×(区域の性別・年齢階級別一般病床退院率)の総和×平均在院日数+(0~区域への流入入院患者数の範囲内で知事が定める数)-(0~区域からの流出入院患者数の範囲内で知事が定める数)}×(1/病床利用率)

【療養病床】{(区域の性別・年齢階級別人口)×(全国平均の性別・年齢階級別療養病床入院受療率)の総和-(在宅医療などで対応可能な数)+(0~区域への流入入院患者数の範囲内で知事が定める数)-(0~区域からの流出入院患者数の範囲内で知事が定める数)} ×(1/病床利用率)

 このうち「在宅医療などで対応可能な数」については、3年目の中間見直しに向けて、厚労省から追って示されることになります(関連記事はこちら)。

2018年度からの第7次医療計画では、基準病床数の計算式が見直される

2018年度からの第7次医療計画では、基準病床数の計算式が見直される

 

 ところで、都道府県では地域医療構想を策定しており、そこには2025年における▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—の各機能の必要病床数(病床の必要量)が規定されます。この構想に沿って、2025年に向けて病院・病床の機能分化・連携を進めていくことが求められますが、東京都や大阪府など、今後も人口増加が予想される地域では、現在は「基準病床数<既存病床数」となっており、新たな病床整備ができないものの、将来「病床の必要量>基準病床数」となり病床整備が必要になってきます。

 この点について局長通知では、▼人口増加などに伴う医療需要の増加を勘案し、基準病床数を毎年見直す▼基準病床数算定時の特例措置(医療法第30条の4第7項、厚生労働大臣と協議の上、基準病床数を増やせる)―で対応するよう指示しています。もっとも、2025年より先には「人口減少」(つまり病床の必要量の減少)が見込まれることから、慎重な検討が求められます(関連記事はこちらこちら)。

 

 なお、▼無菌病室▼集中治療室(ICU)▼心臓病専用病室(CCU)―のベッドについて、これらに収容された患者が利用する他の病床が同一医療機関に確保されているものは、これまで「既存の病床数として算定しない」とされていますが、2018年度からは「これまで既存病床数として算定していなかったものを含めて、すべて既存病床数として算定する」ことになっています(関連記事はこちら)。

5疾病・5事業および在宅医療、PDCAサイクルを回せるよう、指標を見直し

 医療計画には、地域の適切な医療機能を確保するために、5疾病(▼がん▼脳卒中▼急性心筋拘束▼糖尿病▼精神疾患)・5事業(▼救急医療▼災害時医療▼へき地医療▼周産期医療▼小児救急医療を含む小児医療)、および在宅医療について、患者動向・医療の現状を把握し、「必要な医療機能」や「各医療機能を担う医療機関などの名称」「数値目標と必要な施策」なども記載します。

 局長通知では、これらの事業について「施策や事業の結果(アウトプット)のみならず、 住民の健康状態や患者の状態(成果・アウトカム)に対してどれだけの影響(インパクト) を与えたかという観点から施策・事業の評価と改善を行う仕組み(PDCAサイクル)を、政策循環の中に組み込んでいく」ことを強調(関連記事はこちらこちらこちら)。

 また課長通知においては、具体的な整備指針とともに、評価指標の例が詳細に提示されました。事業ごとに「医療体制の政策循環」を実現するため、「指標」を活用し、「必要となる医療機能」を明らかにした上で、▼各医療機能を担う医療機関等の名称▼数値目標―を計画の中に記載することが求められます。政策循環の考え方は現在の医療計画(2013-17年度)にも盛り込まれていますが、「都道府県では把握困難な指標が設定されたため、PDCAサイクルを十分に回し切れていない」との指摘があり、今般、より都道府県が把握しやすい指標例が設定されるに至っています。

 がん医療について見てみると、予防・早期発見に関して▼がん検診受診率▼年齢調整罹患率▼禁煙外来を行っている医療機関数—など、治療に関して▼がん診療連携拠点病院数▼がん患者の年齢調整死亡率▼診療ガイドラインに基づく治療実施割合—など、療養支援に関して▼末期がん患者に対して在宅医療を提供する医療機関数▼肝患者指導の実施件数▼入院・外来緩和ケアの実施件数▼がん性疼痛緩和の実施件数—などといった指標に基づいて現状を把握。それを分析することで、「地域の課題」抽出を行い、その課題克服に向けた「施策」と「数値目標」を明確にします。その上で、少なくとも1年ごとに施策の進捗状況を、少なくとも6年ごとに数値目標の達成状況を評価し、その結果を分かりやすく住民に公表する必要があります。

医療計画の通知1 170331

 

 また生活習慣病である糖尿病の評価指標としては、予防に関して▼特定健診受診率▼特定保健指導実施率—など、初期・安定期の治療に関して▼糖尿病内科医師数▼糖尿病患者の年齢調整外来受療率▼HbA1c検査・尿中アルブミン検査・クレアチニン検査・精密眼底検査・血糖自己測定の実施件数—など、合併症予防を含む専門治療に関して▼教育入院を行う医療機関数▼糖尿病専門医数▼糖尿病透析予防指導の実施件数▼在宅インスリン治療件数—など、合併症治療に関して▼糖尿病性腎症に対する人工透析実施件数▼糖尿病足病変に対する管理▼糖尿病網膜症手術件数—などが例示されています。

医療計画の通知2 170331

病院における高度機器、診療所のCT、MRIの保守点検状況も把握

 ところで2018年度からの医療計画では、医療安全確保の一環として、▼病院における高度な医療機器の配置状況・稼働状況などを確認し、「保守点検」を含めた評価を実施する▼CT、MRIなどの医療機器を有する「診療所」に対する機器の「保守点検」を含めた医療安全の取組状況の定期的な報告を求める―ことになりました。

 我が国では、先進諸国にくらべてCTやMRIの配置が際立って多いことが知られています。これらが「我が国の高い健康水準を維持している」との指摘もありますが、厚労省は「CT、MRI配置が極めて多い地域では、必ずしも効率的な稼働となっていない可能性がある」「診療所では十分な保守点検が行われているか不明である」と考え、こうした評価実施・報告を求めるものです(関連記事はこちら)。

CT・MRI保有台数の多い地域(高知県や鹿児島県など)では、月当たりの撮影患者数が少なく、「非効率的な運用」となっている可能性がある

CT・MRI保有台数の多い地域(高知県や鹿児島県など)では、月当たりの撮影患者数が少なく、「非効率的な運用」となっている可能性がある

 病院・病床の機能分化・連携が進められる中で、高度機器についても集約化と連携が求められる時代に入ってきたようです。

 

 なお良質かつ適切な医療提供のためには、施設や設備の整備だけでなく、人材の配置も重要です。ただし、この点について厚生労働省内の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等 の働き方ビジョン検討会」や「医療従事者の需給に関する検討会」の議論を待ち、別途、考え方が示される模様です。

  
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