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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

医師・看護師確保策や在宅医療・訪問看護の整備目標など、医療計画に具体的に記載を—厚労省

2017.8.4.(金)

 医師偏在の是正に向けた「当面、まず実行できる」施策を進めるために、医療計画における地域医療支援センター事業などの記載内容について、▼地域枠の入学生は、原則として地元出身者に限定する▼修学資金貸与事業における就業義務年限について、貸与期間の1.5倍とする—ことなどに留意するようを求める。また看護職員の確保に向けて、都道府県ナースセンターによる復職支援や、医療機関の勤務環境改善による離職防止などの取組を推進することを踏まえて、医療計画を作成する必要がある—。

厚生労働省は7月31日に発出した、第7次医療計画作成のための通知(改正通知)を発出し、このような点を明らかにしました(改正局長通知はこちら、通知本文新旧対照表)。あわせて、改正地域医療計画課長通知「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(以下、改正課長通知)も発出し、医療計画に定める数値目標や、5疾病・5事業および在宅医療についての評価指標例などを明示しています(改正課長通知はこちら、通知本体医療計画で定める数値目標評価指標例新旧対照表)。

地域枠を地元出身者に限定、看護師の復職支援策など推進

 2018年度から新たな医療計画(第7次医療計画)がスタートするため、都道府県は今年(2017年)中に医療計画を作成する必要があり、厚労省はその拠り所となる通知を今年(2017年)3月末に発出しています。ただし、医療従事者の確保に関する事項など、厚労省内部で結論が出ていなかった事項については不十分な記載にとどまっていました。

 今般、例えば「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(ビジョン検討会)の報告書が取りまとめられ、これを基にして医師需給分科会での議論が進んだことなどを受け、3月末の通知に加筆・修正が加えられています。すでにメディ・ウォッチでお伝えした内容と重複しますが、加筆・修正部分のポイントを中心に、医療計画作成に向けた重点事項を振り返ってみましょう。

 
 医療計画は6年を1期として(従前は5年を1期)として、地域における医療提供体制の内容と構築スケジュールを明らかにするものです。具体的には、▼地域においてどの程度の病床数が必要となるのか(基準病床数)▼疾病・事業ごとの医療体制(5疾病・5事業及び在宅医療)▼地域医療構想▼医療従事者の確保▼医療の安全の確保―などに関する事項を記載することが求められます。

 このうち医療従事者の確保、とくに医師の確保については「偏在対策」が最重要論点の1つとなっています。前述のようにビジョン検討会の報告書がまとまり、これを受けて医師需給分科会で、まず「当面、実行可能な対策」を固め、加えて年内(2017年内)に法改正も視野にいれた「抜本的な対策」をまとめることが決まりました。今般の改正局長通知では「当面、実行可能な対策」として、例えば都道府県(および都道府県の設置する地域医療支援センター)による医学部の地域枠とキャリア形成プログラム(キャリアを積みながら、偏在解消に資する医師就業を目指すプログラム)について、次のような点を医療計画に記載するよう求めています(関連記事はこちらこちらこちら)。

▼地域医療介護総合確保基金を活用して、都道府県が学生に奨学金を貸与する地域枠については、原則として地元出身者に限定する。その他の地域枠に関しても、他の地域枠医師の定着策を講じている場合を除き、地元出身者に限定することが望ましい

▼修学資金貸与事業における就業義務年限については、自治医科大学と同程度(貸与期間の1.5倍)とする

▼原則として、大学所在都道府県において臨床研修を受けることとするようキャリア形成プログラムに位置づける

▼キャリア形成プログラムにおいて「医師不足地域・診療科の医師を確保する」との医学部定員暫定増の趣旨に鑑み、勤務地や診療科を限定する

▼特段の理由なく、特定の開設主体に派遣先が偏らないようなキャリア形成プログラムとする

▼出産、育児、家族の介護の場合や、事前に想定できないやむを得ない特段の事情が生じた場合には、キャリア形成プログラムの内容変更などに柔軟に対応できるようにする

キャリア形成プログラムの概要

キャリア形成プログラムの概要

同じ地域枠であっても、地元出身者のほうが地域への定着率が高い

同じ地域枠であっても、地元出身者のほうが地域への定着率が高い

 
 このほか、医師の勤務負担軽減(グループ診療が行えるよう、同一医療機関に同時に複数の医師を地域医療支援センター自ら派遣すること、他の病院から代診医師を派遣するよう地域医療支援センターが斡旋あっせんしたりすることなど)、へき地の医師確保(地域医療支援センターによる「へき地医療支援機構」の統合も視野に入れた一体的な医師確保など)について医療計画への記載を求めているほか、2017年度の予算事業で厚労省が作成する予定の「詳細な医師の配置状況が把握できる新たなデータベース」を活用した医師確保などに取り組むよう要請しています。
医師データベース活用のイメージ

医師データベース活用のイメージ

 
また看護師の確保に関しては、▼離職届出を活用した都道府県ナースセンターによる復職支援の推進▼医療機関の勤務環境改善による離職防止の推進▼特定行為研修の地域での受講に向けた「指定研修機関」「実習を行う協力施設」の確保などに関する計画—について、医療計画の中で具体的に記載することが求められます(関連記事はこちら)。
特定行為研修を行う施設(指定研修施設)の整備に関する計画を医療計画に記載する際のイメージ(その1)

特定行為研修を行う施設(指定研修施設)の整備に関する計画を医療計画に記載する際のイメージ(その1)

地域医療構想の実現に向け、在宅医療・介護施設の整備計画立て直し

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となり医療・介護ニーズが急速に高まることを受け、医療提供体制の見直し(機能分化・連携の推進)が求められており、都道府県では2025年における医療提供体制の姿を描いた「地域医療構想」を策定しています。第7次医療計画には、地域医療構想も包含されており、この実現に向けた取り組みも極めて重要となります。

ところで地域医療構想では、▼一般病床に入院する医療資源投入量175点未満の患者(C3未満の患者)▼医療療養病床に入院する医療区分1の患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―を「在宅医療や介護施設などで対応する」こととしており、人口構造の高齢化を超える、新たな「在宅医療」「介護施設」の整備が求められます(関連記事はこちら)。この点について、今般の改正局長通知では次のように整備量を見込む考えを示しました。「医療計画の見直し等に関する検討会」での議論を踏まえたものです(関連記事はこちらこちらこちら)。

慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する

慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する

地域医療構想では、▼一般病床のC3未満の患者▼医療療養病床の医療区分1患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―は、外来・在宅医療・介護サービスのいずれかで対応することとなり、その整備量をどう見込むかが当面の重要課題の1つである

地域医療構想では、▼一般病床のC3未満の患者▼医療療養病床の医療区分1患者の70%▼医療療養病床における入院受療率の地域差解消分―は、外来・在宅医療・介護サービスのいずれかで対応することとなり、その整備量をどう見込むかが当面の重要課題の1つである

 
▼「介護施設、在宅医療等で対応可能な数」は、▽慢性期入院患者のうち医療区分Iの患者数の70%▽慢性期入院患者のうち、入院受療率の地域差を解消していくことで在宅医療などの医療需要として推計する患者数―の合計を、2023年度末時点から比例的に推計した上で、「療養病床から介護老人保健施設・介護医療院へ転換することが見込まれる病床数」を除いた数とする

在宅医療と介護施設との配分については、別途、具体的な考え方が示されます。

 ここで「一般病床のC3未満の患者数」に関する記述が見当たりない点が気になります。この点については、「医療計画の見直し等に関する検討会」で、C3未満の患者は「退院後に在宅医療や介護施設を利用するケースは少数で、医療機関の外来で対応できる」との見解がまとまったために、在宅医療・介護施設の整備量には含めないこととされています。

 
 なお、基準病床数(事実上の地域における病床数の上限)について改正局長通知では、「療養病床・一般病床の整備を行う際には、地域医療構想の達成に向けた取組と整合的なものとなるよう、既存病床と基準病床数の関係性だけではなく、地域医療構想における将来の病床数の必要量を踏まえて対応すること」との記載が加わりました。例えば、「療養病床は基準病床数を超えて整備されているが、療養・一般の合計病床数は基準病床数を超えていない」という地域がある場合であっても、単純に「合計の基準病床数まで一般病床を新たに整備できる」と考えるのではなく、地域医療構想(2025年の機能別の必要病床数)と照らし「将来、病床過剰にならないか」を勘案するよう求めているものです。

在宅医療や訪問看護、整備の数値目標を医療計画に記載

 また改正課長通知では、5疾病・5事業および在宅医療のうち▼脳卒中▼心筋梗塞等の心血管疾患▼精神疾患▼周産期医療▼在宅医療―などについて、厚労省内部の検討会でまとめられた意見を踏まえて、医療提供体制の構築に関する考え方を一部見直しています。

 たとえば脳卒中や心血管疾患では、「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」(厚労省健康局)のとりまとめを踏まえて、急性期から慢性期までの各ステージで留意しなければいけない点を詳細に記述するとともに、各医療機関の「連携」の重要性を強調しています。

脳卒中にかかる診療提供体制のイメージ

脳卒中にかかる診療提供体制のイメージ

心血管疾患にかかる診療提供体制のイメージ

心血管疾患にかかる診療提供体制のイメージ

 
また在宅医療に関しては、「全国在宅医療会議」(厚労省医政局)の取りまとめや「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の議論などを受けて、▼「退院支援」「急変時の対応」「看取り」の各機能ごとの数値目標▼「訪問看護」「訪問歯科診療」「訪問薬剤管理指導」といった主要な職種についての数値目標―を可能な限り記載する努力義務を課しています(関連記事はこちらこちら )。

例えば、退院支援では「退院支援ルールを設定している2次医療圏数」、急変時の対応では「在宅療養後方支援病院数、在宅療養支援病院数」、看取りでは「在宅看取りを実施している診療所・病院数」、訪問看護では「24時間体制を取っている訪問看護ステーション数、機能強化型訪問看護ステーション数」などを記載することになります。

 
また在宅医療の整備に関しては、介護保険事業(支援)計画との整合性がとりわけ重要なため、▼まず2020年度末における整備目標を設定する(第7期介護保険事業(支援)計画との整合性確保)▼医療計画3年目の中間見直しにおいて2023年度末における整備目標を設定する(第8期介護保険事業(支援)計画との整合性確保)―という2段階で進めることになります。

   
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