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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

全身管理や救急医療など実施しない病棟、2018年度以降「急性期等」との報告不可―地域医療構想ワーキング(2)

2018.6.18.(月)

 今年度(2018年度)の病床機能報告より、▼急性期・高度急性期の機能を全く果たしていない病棟については急性期・高度急性期と報告することを認めない▼必ず「2025年度における各病棟の機能」も報告する―ことと運用を改める―。

 6月15日に開催された地域医療構想ワーキンググループ(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こういった方針も固まりました。近く、病床機能報告制度に関する厚生労働省省令の改正などを行い、夏には新たな病床機能報告マニュアルが公表されます。

6月15日に開催された、「第14回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

6月15日に開催された、「第14回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

 

いわば「急性期病棟の外れ値」は、急性期・高度急性期との報告は認めない

 医療提供体制の再構築に向けて、地域医療構想の実現が急務とされています。骨太の方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)では、「個別の病院名・病床数を掲げ、機能転換に向けた具体的対応方針を速やかに策定するため、2017・18年度の2年間程度で集中的な検討を促進する」旨が指示されるなど、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)の議論をいかに活性化させるかが重要課題の1つとなっています(関連記事はこちら)。

6月15日のワーキングでは、調整会議の議論を活性化させるために、「各都道府県において、埼玉県・佐賀県・奈良県などの先行事例も参考に、各医療機能を考える上でも目安・指標(定量的基準とも言える)を定める」ことが固められました。

このほかに、冒頭に述べた、次のような「病床機能報告制度の運用見直し」方向も固まりました。

(1)急性期・高度急性期の機能を全く果たしていない病棟については急性期・高度急性期と報告することを認めない

(2)必ず「2025年度における各病棟の機能」も報告する

 まず(1)では、▼幅広い手術の実施▼がん・脳卒中・心筋梗塞等への治療▼重症患者への対応(救急搬送診療料、観血的肺動脈圧測定、経皮的心肺補助法、頭蓋内圧持続測定など)は▼救急医療の実施▼全身管理(呼吸心拍監視、ドレーン、胸腔・腹腔洗浄、人工呼吸など)—について1項目も該当しない病棟では、「急性期・高度急性期」と報告することを認めないとするものです。

 従前より、こうした「急性期であれば、いずれかは実施するであろう医療行為」を全く行っていない病棟が存在することが知られ、2017年度には1076病棟(急性期等と報告する病棟全体の約5%)が該当します。これまでこうした病棟については、調整会議において「急性期等との報告内容に誤りがないか」「なぜ急性期等と報告しながら、こうした行為が全く行われなかったのか」などを確認するに留められていました。病床機能報告制度は、あくまで「各病院が自主的に機能を判断する」仕組みゆえです(関連記事はこちらこちら)。

急性期病棟として報告している病棟の中には、全身管理を全く行っていないところなどもみられる

急性期病棟として報告している病棟の中には、全身管理を全く行っていないところなどもみられる

 
しかし、こうした「急性期であれば、いずれかは実施するであろう医療行為」を全く行っていないにもかかわらず急性期等と報告している病棟は、いわば「外れ値」と考えることができ、今般、「急性期・高度急性期」との報告を認めないとの厳格なルールが設けられるものです。もっとも、「上記の医療行為は実施していないが、別の報告事項に含まれない急性期医療を提供している」場合には、その内容を自由記載した上で急性期等と報告することが可能です。

厚生労働省は、これまでに「特定入院料と医療機能との紐づけ」(例えば施設基準に照らし「特定集中治療室管理料は高度急性期とする」など)「入院基本料と医療機能との紐づけ」(例えば、診療実態に照らし「旧7対1は高度急性期または急性期とする」など)が行われています。さらに、今般、「急性期・高度急性期から『外れ値』を除外する」ことで、病床機能報告の精緻化を図ります。他方、都道府県ごとに「医療機能を考える上での目安・指標(定量的基準)」を設けて調整会議の議論を活性化する方向も示しており、今後、地域医療構想の実現に向けた動きが加速化すると期待されます。

病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ

病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ

▼7対1は高度急性期または急性期▼10対1は急性期または回復期▼13対1・15対1は回復期または慢性期、一部は急性期—といった基本的な紐づけが行われた。もちろん異なる報告をすることも可能である

▼7対1は高度急性期または急性期▼10対1は急性期または回復期▼13対1・15対1は回復期または慢性期、一部は急性期—といった基本的な紐づけが行われた。もちろん異なる報告をすることも可能である

 
厚労省は「2018年度中に、地域医療介護総合確保基金を活用する病院はもちろん、そうでない病院も含めて『個別に将来の病床機能を合意できる』ように調整会議での協議を促す」考えを明確にしています。これが実現すれば、一般病床・療養病床を持つ全医療機関に関し「2025年度において●●病院は、高度急性期病棟を○床、急性期病棟は○床・・」といういわば、全国医療提供体制マップが完成することになります。

2018年度以降、「2025年度の機能」を明確にして病床機能報告を行う

ところで、病床機能報告では▼現在の各病棟の機能▼6年後の各病棟の機能―については報告を義務付け、「2025年度の各病棟の機能」は任意報告にとどめています。この点、今年度(2018年度)の報告では▼現在、つまり2018年度の機能▼6年後、つまり2024年度の機能―は報告が必須とされ、2025年度の機能は任意報告となり、報告内容の効率化・病院の負担軽減を考えたとき、「わずか1年間の違いについて、別途報告を求めるべきか」との疑問がわきます。

また実際の2017年度報告結果を見ると、「6年後の機能」は93%の医療機関から報告されていますが、「2025年度の機能」は任意提出ということもあり61%の報告にとどまっています。地域医療構想は「2025年度における医療提供体制マップ」と考えられ、また「2018年度中に具体的な個別病院に関する機能転換方針を定める」と言うスケジュールに鑑みたとき、「2025年度の機能」をベースにした議論が必要不可欠と言えます。

そこで厚労省は(2)のように、今年度(2018年度)以降の病床機能報告制度において「2025年度の各病棟の機能」についても報告を義務付ける(「6年後の機能」報告は不要となる)こととしたものです。あわせて、調整会議の議論に資するよう「将来の病床規模」に関する報告も求めることになります。

調整会議の議長がすべて出席する「都道府県単位の調整会議」設置を推奨

さらに6月15日のワーキングでは、調整会議の議論活性化に向けて「都道府県単位の調整会議」設置に関する詳細が了承されました。「都道府県単位の調整会議」設置は義務ではなく、「推奨」にとどめられていますが、その効果は大きく、未設置都道府県では積極的な検討が期待されます(関連記事はこちら)。

地域医療構想は、主に2次医療圏をベースとする「地域医療構想調整区域」単位で、医療機能の再編を目指すものです。この点、「都道府県全体としての、将来の医療提供体制」を考えることも重要であり、また「各調整会議で共通の課題」「優れた先行事例」があれば、それを共有しておくことが円滑な議論のために有用でしょう。実際に、佐賀県や埼玉県では「管内の全調整会議の議長が参画する、県単位の調整会議」を独自に設け、こうした意見交換を行い、各調整会議の議論を支援し、効果が上がっています。

厚労省の調べでは「20都府県」で県単位の調整会議が設置されていますが、裏を返せば過半数の27自治体では県単位の調整会議は未設置です。厚労省は、各調整会議の議論を支援するために、▼全調整会議の議長▼診療に関する学識経験者団体▼医療関係者▼医療保険者―が参画する「都道府県単位の調整会議」設置を強く推奨しています。なお、新たに調整会議を設けず、既存の会議体を活用することも可能です。

都道府県単位の調整会議では、▼各調整会議の運用(スケジュールや協議事項)▼各調整会議の進捗状況(具体的対応方針の合意状況や再編統合論議の状況など)▼各調整会議の課題解決▼データ分析(医療機能を考える上の目安・指標)▼広域での調整が必要な事項(高度急性期機能など)—を議論し、各調整会議を支援することが求められますが、地域独自の対応を行うことももちろん可能です。

この点、中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「構想区域単位の調整会議では、『A病院は機能転換が必要』と思われても、例えば患者の紹介などを受けているなどの関係があり、言いだしにくいこともある。そういった場合、都道府県の調整会議を活用することも考えられるのではないか」と提案しています。一方、佐賀県では「各区域の議論を縛らないよう、県単位の調整会議では、『方向を揃える』にとどめている」ことが織田正道構成員(全日本病院協会副会長)から紹介されました。都道府県毎に、その有り様はさまざまであってよいのではないでしょうか。
 
 
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