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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

2018年度改定、医療費の伸び、国民負担など考慮せよ—骨太方針2017を閣議決定、ここでもプラス改定を牽制

2017.6.12.(月)

 2018年度の次期診療報酬・介護報酬においては、「入院基本料の報酬水準や算定要件」を検討し、病床の機能分化・連携を更に後押しすべきである—。

 安倍晋三内閣は9日、このような内容を盛り込んだ骨太方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)を閣議決定しました。

入院基本料の「報酬水準」「算定要件」の見直しを検討せよと、具体的な指示

メディ・ウォッチでは骨太方針2017素案の内容をご紹介しています(関連記事はこちらこちら)。重複部分もありますが、改めて医療・介護分野に関係の深い事項を拾ってみましょう。

まず2018年度に控える、診療報酬・介護報酬の同時改定については、▼人口・高齢化の要因を上回る医療費の伸びが大きい▼保険料などの国民負担▼物価・賃金の動向▼医療機関の収入や経営状況▼保険財政や国の財政に係る状況―などを踏まえて、「診療報酬改定の在り方について検討する」としています。具体的に改定率に言及しているわけではありませんが、文言どおり捉えれば「プラス改定は認められない」という牽制球を投げたものと言えます(関連記事はこちら)。

改定内容に関しては、「地域医療構想の実現に資するよう病床の機能分化・連携を更に後押しするため、患者の状態像に即した適切な医療・介護を提供する観点から、報酬水準、算定要件など入院基本料の在り方や介護医療院の介護報酬・施設基準の在り方等について検討し、介護施設や在宅医療などへの転換などの対応を進める」と指摘。

いくつかのテーマが混在していますが、急性期病院においては「入院基本料の報酬水準・算定要件を検討する」という点に留意が必要です。例えば7対1入院基本料については、重症度、医療・看護必要度を初めとする施設基準の厳格化が続いています。今回の骨太方針では、その点にとどまらず、報酬水準、つまり点数の見直しも検討せよと言及しているのです。中央社会保険医療協議会では「7対1と10対1では、患者像に重複がある一方で、患者1人1日当たりの単価に大きな乖離がある」というデータが示されており、今後の議論やデータにますます注目が集まります(関連記事はこちら)。

また介護報酬改定に向けて、▼自立支援に向けた介護サービス事業者に対するインセンティブ付与のための「アウトカムなどに応じた介護報酬のメリハリ付け」▼生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和やそれに応じた報酬の設定▼通所介護などその他の給付の適正化―を求めています。いずれも、社会保障審議会・介護給付費分科会での検討テーマに盛り込まれており、今後、具体的な議論が行われます。

「個別病院名」を出し、地域医療構想の実現に向けた集中的な検討を

医療提供体制については、地域医療構想の実現に向けて、▼個別の病院名▼転換する病床数―などの具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的な検討を促進するよう指示しました。

すでに「医療計画の見直し等に関する検討会」などで、地域医療構想調整会議の進め方に関する例示を厚生労働省が行っており、そこでは「地域医療介護総合確保基金を活用するために、具体的な医療機関名を提示した議論を行う必要がある」旨が示されています。これには医療提供側委員から強い不満が出ていますが、今回の骨太方針2017によって、介護を進める上での、より具体的な考え方などが示される可能性もあります(関連記事はこちらこちら)。

また、機能分化・連携は医療機関が自主的に進めることが原則ですが、骨太方針2017では「進まない場合には、都道府県知事がその役割を適切に発揮できるよう、権限の在り方について、速やかに関係審議会などで検討を進める」「地域医療介護総合確保基金について、具体的な事業計画を策定した都道府県に対し、重点的に配分する」ことなどを打ち出しています。前者の都道府県知事の権限強化については、憲法第22条などから導かれる「営業の自由」に反しないかなどを慎重に検討する必要があります。

このほか、▼かかりつけ医の普及に向けて、紹介状なしに大病院外来を受診した場合の定額負担の対象見直し▼都道府県のガバナンス強化▼普通調整交付金についての医療費適正化のインセンティブを効かせる観点からの見直し▼医学部入学定員の精査▼看護師の行う特定行為の範囲の拡大などを十分に議論した上での、タスクシフティング(業務の移管)、タスクシェアリング(業務の共同化)の推進▼複数医師によるグループ診療▼遠隔診療支援など、へき地などに勤務する医師の柔軟な働き方支援―などを検討するよう指示しています(関連記事はこちらこちら)。

「都道府県別の診療報酬」に関する検討も指示

また財政再建の中で大きな障壁とされる「医療費」を適正化するために、診療為の地域差を含めたデータの「見える化」を行うよう強く要望。

さらに、高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)第14条に規定される「都道府県別の診療報酬」について、「必要な場合に活用できるよう2017年度中に関係審議会などで検討する」ことを求めています。診療報酬は「全国一律」が基本となっていますが、高齢者医療確保法では「厚生労働大臣が、医療費適正化を推進するために必要があると認めるときは、一の都道府県の区域内における診療報酬について、地域の実情を踏まえつつ、適切な医療を各都道府県間において公平に提供する観点から見て合理的であると認められる範囲内において、他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができる」という特例を認めています。都道府県別に診療報酬が異なった場合には、例えば健康保険組合など加入者が広域に居住し、診療を受ける保険者において、「点数の高い都道府県での診療をどう考えるか」といった問題が、「点数の低い、つまり患者負担の低い地域に患者が多く集まってしまうのではないか」といった問題など、さまざまな課題があり、今後、どういった議論が行われるのか注目する必要があります。

2020年度から、健康・医療・介護のデータベースを本格稼働

 さらに、健康・医療・介護のビッグデータを連結した「保健医療データプラットフォーム」の構築・稼働にも骨太方針2017は言及しています。

このデータプラットフォームを構築・稼働させ、行政や医療機関、保険者、研究者、民間企業などさまざまな場で活用できるようになれば、エビデンスのある治療法や指導法の確立が可能になり、我が国の保健医療水準は飛躍的に向上すると期待されます。社会保障の理念として「ゆりかごから、墓場まで」などと言われますが、「子供の頃、若い頃の生活習慣が、成人になってどういう疾病に結びつき、それに対し、どのような治療法が効果的なのか。また壮年期の生活習慣が、高齢になってどのような身体機能の低下などに影響し、どのような介護方法が効果的なのか」などが明らかになれば、限りある医療・介護資源を集中的に投入し、より高い効果を上げることが可能になります。

骨太方針2017では、「保健医療データプラットフォーム」の構築に向けて、必要なデータを収集・分析するためのデータベースを2020年度から本格運用するとの目標を立てています。

あわせて、がんとの闘いに終止符を打つため、▼がんの一次予防の推進(生活習慣の改善など)▼二次予防であるがん検診の内容の見直しや受診率の向上▼がんのゲノム情報や臨床情報などを集約し、質の高いゲノム医療を提供する体制(がんゲノム医療推進コンソーシアム)の構築による、免疫療法などの革新的治療法・診断技術などの開発―を行うことも打ち出しました(関連記事はこちら第3期がん対策基本計画案を了承、2020年までに受動喫煙をゼロにする—がん対策推進協議会

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