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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

骨太方針2018を閣議決定、公的・公立病院の再編統合、病床のダウンサイジング進めよ

2018.6.18.(月)

 2025年の基礎的財政収支(PB)黒字化を目指し、2019-21年度を「基盤強化期間」と位置づけ、社会保障費の伸びを「高齢化」相当に抑えることとし、健康づくりの推進、地域医療構想の実現、診療報酬・介護報酬におけるアウトカム評価の推進などを行う―。

 安倍晋三内閣は6月15日に、こういった内容を盛り込んだ「経済財政運営と改革の基本方針2018—少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現—」(いわゆる骨太の方針2018)を閣議決定しました(内閣府のサイトはこちら)。社会保障費の伸びに関して具体的な数値は盛り込まれていませんが、2020年度・21年度には高齢化の伸びが鈍化するため、社会保障費の伸びも相当程度抑えられ、厳しい診療報酬・介護報酬改定となりそうです。

 すでにメディ・ウォッチでお伝えした「原案」から大きな見直しはありませんが、改めて社会保障改革に関する事項を眺めてみましょう(関連記事はこちら)。

2019年10月の消費増税に合わせて、介護職員のさらなる処遇改善を行う

 まず、2025年にはいわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護費をはじめとする社会保障費が増大し、財政を強く圧迫するため、「2025年度の基礎的財政収支(PB、「歳入から国債等の借金収入を差し引いた金額」と「歳出から国債費等を差し引いた金額」とのバランス)の黒字化を目指す」との目標を設定。

このため、団塊の世代が75歳に入り始める2022年度の前まで、つまり2019-2021年度を、社会保障改革を軸とする「基盤強化期間」と位置づけ、社会保障関係予算について次のような編成方針を示しています。

▼「社会保障関係費の実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収める」方針を2021年度まで継続する

▼消費増税とあわせ行う増(社会保障の充実、「新しい経済政策パッケージ」で示された介護人材の確保・社会保障4経費に係る公経済負担など)については、別途考慮する

 前者においては数値目標が定められていませんが、2020・21年度は「75歳以上の後期高齢はとなる人口」の伸び率が鈍化するため、社会保障関係費の増加も「小さく抑えられる」ことになるでしょう。2020年度の次期診療報酬改定、21年度の次期介護報酬改定は厳しいものとなりそうです。

 また後者に関連して、「介護人材の処遇改善を消費税率引き上げ日の2019年10月1日に合わせて実施する」方針も示されています。

市町村と都道府県が連携し、健康づくりを推進せよ

具体的な社会保障改革の内容を見ると、▼健康づくり▼効率化・適正化▼生産性の向上―など幅広い項目が盛り込まれています。

「健康づくり」は、「医療・介護費の伸びそのものを抑える」重要なテーマです。「健康寿命を延伸し、平均寿命との差を縮小」することを目指し、例えば次のような方策が掲げられました。

▼生活習慣病等・慢性腎臓病・認知症の予防
糖尿病等の生活習慣病の重症化予防に関して、県・国民健康保険団体連合会・医師会などが連携する「埼玉県の取り組み」などの優良事例の横展開を、今後3年間で徹底して取り組む

▼がん対策
・早期発見・早期治療(がん検診の見直し、膵がんなど難治性がんの早期発見)
・がん治療と仕事の両立(傷病休暇の導入、活用の促進)

▼データヘルス
医療・介護制度におけるデータの整備・分析、保険者機能の強化、科学的根拠に基づいた施策の重点化、予防・健康づくりに頑張った者が報われる制度の整備

▼認知症対策
研究開発の重点的な推進、予防に関する先進・優良事例の横展開、新オレンジプランの実現、容態に応じた適時・適切な医療・介護提供に向けた「認知症疾患医療センターの司令塔としての機能」強化、相談機能の確立、地域包括支援センター等との連携強化

▼介護予防、フレイル対策
 市町村と都道府県の連携による「高齢者の通いの場を中心とした介護予防・フレイル対策」「生活習慣病等の疾病予防・重症化予防」「就労・社会参加支援」の推進

▼アレルギー疾患対策
 アレルギー疾患対策基本指針に基づいた「アレルギー疾患の重症化予防」「症状軽減に向けた対策」の推進

 
健康づくりを進めると同時に、「元気で、働く意欲のある高齢者」には活躍の場を広めてもらうことが重要です。少子化が進む中では、高齢者自身が「社会保障の支え手」となることも期待されるためです。この観点からは、次のような方針が示されています。

▼勤労者が広く被用者保険でカバーされる勤労者皆保険制度の実現を目指した検討(被用者保険の適用拡大と、それが労働者の就業行動に与えた影響についての効果検証を行う)

▼年金受給開始年齢の柔軟化など

▼既存の施策を含め地方自治体への財政的インセンティブを活用し、「元気で働く意欲のある高齢者を介護・保育等の専門職の周辺業務において育成・雇用する」取り組みの全国展開

▼人生の節目で「人生の最終段階における医療・ケアの在り方」などを本人・家族・医療者等が十分話し合うプロセスの全国展開(関係団体を巻き込んだ取り組み、周知、本人の意思を関係者が随時確認できる仕組みの構築)

▼「住み慣れた場所での在宅看取り」の優良事例の横展開を推進する

公立・公的病院の再編統合、病床のダウンサイジング進め、地域医療構想を実現せよ

 健康づくりによる「社会保障費の伸びの鈍化」効果が現れるには相当の時間がかかります。一方、高齢化の進展による医療・介護費の増加は続いていくため、「効率的・効果的な医療・介護提供体制」の構築が不可欠です。この点いついては、次のような施策の推進が行われます。

▼地域医療構想の実現
・「個別の病院名」「転換する病床数」などの具体的対応方針を集中的に検討し、2018年度中の策定を促進する
・公立・公的医療機関について、「地域の民間医療機関で担うことができない高度急性期・急性期医療や不採算部門、過疎地等の医療提供等に重点化する」よう医療機能を見直し、これを達成するための再編・統合の議論を進める
・病床の機能分化・連携が進まない場合に、都道府県知事が役割を適切に発揮できるような「権限」の在り方の検討促進
・「病床の転換」「介護医療院への移行」などが着実に進むよう、地域医療介護総合確保基金や入院基本料等の見直しなどの効果やコストの検証を行い、必要な対応を検討するとともに、「病床のダウンサイジング」支援の追加的方策を検討する
・高額医療機器について共同利用を推進するなど、効率的な配置、稼働率向上を促進する方策を検討、実施する

▼1人当たり医療費・介護費の地域差縮減
・「1人当たり医療費の地域差半減」「1人当たり介護費の地域差縮減」に向けて、国・都道府県が積極的に「地域別の取組や成果の見える化」「進捗遅れの要因分析」などを行い、保険者機能の一層の強化を含め、更なる対応を検討する

▼地域独自の診療報酬について、都道府県の判断に資する具体的な活用策の在り方を検討する

▼レセプト情報を活用した「医師や薬剤師が投薬歴等を閲覧できる仕組み」の構築、「診療報酬による多剤投与適正化」、「介護予防等への取り組みの見える化」などを推進する

ADL改善などアウトカムに基づく診療報酬や、AI活用したケアプランなど導入せよ

 少子化が進展する中では、医療・介護従事者の「生産性」向上が不可避であり、次のような方向が明確にされました。

▼「予防・健康づくり」「データヘルス」「保健事業」について、多様・包括的な民間委託を推進し、サービスの質と効率性を高める

▼診療報酬・介護報酬においては、適正化・効率化を推進しつつ、安定的に質の高いサービスが提供されるよう、「ADL改善などのアウトカムに基づく支払いの導入」等を引き続き進める

▼被保険者番号の個人単位化とオンライン資格確認を導入するとともに、「保健医療データプラットフォーム」について、2020年度の本格運用開始を目指し取り組む

▼少ない人手で効率的に医療・介護・福祉サービスが提供できるよう「AI実装に向けた取り組みの推進」「ケアの内容等のデータを収集・分析するデータベースの構築」「ロボット・IoT・AI・センサー」の活用を図る

▼「科学的介護」「栄養改善を含めた自立支援・重度化防止等に向けた介護」を推進する。特に、「自立支援・重度化防止等に資するAIも活用した科学的なケアプラン」の実用化に向けた取り組みを推進し、ケアマネジャー業務の在り方を検討する

外来における「受診時定額負担」、薬剤自己負担割合の見直しなど改めて検討せよ

 また保険制度改革に関しては、「必要な保険給付をできるだけ効率的に提供しながら、自助、共助、公助の範囲についても見直していく」ことが必要とし、次のような改革項目が固められました。

▼団塊の世代が後期高齢者入りするまでに、世代間の公平性や制度の持続性確保の観点から、後期高齢者の窓口負担の在り方について検討する

▼介護のケアプラン作成、多床室室料、軽度者への生活援助サービスについて、給付の在り方を検討する。

▼新規医薬品や医療技術の保険収載等に際して、「費用対効果」「財政影響」などの経済性評価や保険外併用療養の活用などを検討する

▼薬剤自己負担の引上げについて、「市販品と医療用医薬品との価格バランス」「医薬品の適正使用の促進」等の観点を踏まえつつ、対象範囲を含め幅広い観点から検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる

▼かかりつけ医・かかりつけ歯科医・かかりつけ薬剤師の普及を進めるとともに、外来受診時等の定額負担導入を検討する

▼勤労世代が減少しその負担能力が低下する中で、社会保障改革に関する国民的理解を形成する観点から「保険給付率(保険料・公費負担)と患者負担率のバランス」等を定期的に見える化しつつ、診療報酬とともに保険料・公費負担、患者負担について総合的な対応を検討する

 
 今後、例えば社会保障制度審議会の医療保険部会や医療部会、中央社会保険医療協議会を中心に、これらの方針・項目の制度化・具現化に向けた検討が進められることになります(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。
 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

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