75歳以上の要介護者などの3割、75歳以上の配偶者が介護する老老介護―2016年国民生活基礎調査
2017.6.29.(木)
2016年、75歳以上の要介護者・要支援者については、主に介護する人の30.2%が「75歳以上の配偶者」であり、いわゆる老老介護の世帯が3割を超えている―。
厚生労働省が27日に公表した2016年の「国民生活基礎調査の概況」から、このような状況が明らかになりました(関連記事はこちら)(厚労省のサイトはこちら)。調査では、要介護度が高くなっても在宅生活を継続するためには「家族介護が不可欠」な状況も明らかになっており、老老介護の進展により在宅生活のハードルが高まってきている(在宅生活の要となる家族介護が難しくなってくる)と考えることもできそうです。
世帯数は頭打ち、世帯人員は減少続く
国民生活基礎調査は、毎年、保健、医療、福祉、年金、所得などの国民生活の基礎的事項を調べるものです。3年に1度、大規模調査が行われ、2016年は大規模調査が実施されました。
まず2016年6月2日現在の全国の世帯総数を見ると、4994万5000世帯(前年に比べて41万6000世帯減)で、平均世帯人員は2.47人(同0.02人減少)となりました。世帯数は増加傾向にありましたが、ここ数年「頭打ち」「微減」の状況です。また世帯人員は逆に減少傾向にあり、我が国の人口規模が減少モードに入っていることがここからも伺えます。
65歳以上の高齢者のいる世帯は2416万5000世帯で、前年に比べて44万1000世帯・1.9%増加しました。全世帯に占める割合は48.4%で、前年に比べて1.3ポイント増加しています。
65歳以上の高齢者のいる世帯について、内訳を見てみると、最も多いのは「夫婦のみの世帯」で31.1%(前年比0.4ポイント減)、次いで「単独世帯」27.1%(同0.8ポイント増)、「親と未婚の子のみの世帯」20.7%(同0.9ポイント増)、「三世代世帯」11.0%(同1.2ポイント減)という状況です。ほぼ6割(58.2%)が「夫婦のみ」「単独」世帯となっており、後述するように「要介護状態となった場合」の受け皿・支援策の整備が急がれます。
また、65歳以上の人は3531万5000人で、前年に比べて65万7000人・1.9%増加しています。
家族形態を見ると、「子と同居」(38.4%、同0.6ポイント減)よりも「夫婦のみの世帯」(38.9%、同増減なし)が多くなりました。前年、メディ・ウォッチでお伝えしたとおり「2016年度調査では、『夫婦のみの世帯』が最多」になっています。
在宅生活を継続するためには「家族介護」が重要な要素
ここで「介護の状況」を眺めてみましょう。
要介護者・要支援者のいる世帯は、「核家族世帯」が37.9%ともっとも多く(3年前の前回調査に比べて2.5ポイント増)、次いで「単独世帯」が28.9%(同1.5ポイント増)、「三世代世帯」が14.9%(同3.5ポイント減)となっています。
単独世帯では比較的要介護度が低く、核家族世帯・三世代世帯では逆に要介護度が高くなっており、重度になっても在宅生活を継続するためには「家族による介護」が重要な要素となっていることが分かります。
主な介護者を見てみると、「要介護者と同居の者」が58.7%(同2.9ポイント減)ともっとも多く、次いで「事業者」13.0%(同1.8ポイント減)、「別居の家族など」12.2%(同2.6ポイント増)と続いています。依然として6割は家族介護が主力となっていることが分かり、上記を裏付けていると言えます。
「同居の者」の内訳は、「配偶者」が25.2%(同1.0ポイント減)ともっとも多く、次いで「子」21.8%(同増減なし)、「子の配偶者」9.7%(同1.5ポイント減)などと続きます。
要介護者などの年齢階級別に、状況を詳しく見てみると、「70-79歳」の要介護者などでは介護者が「70-79歳」である割合が48.4%とほぼ半数ですが、「80-89歳」の要介護者などでは介護者の32.9%は「50-59歳」となっています。80歳を超えると配偶者(とくに夫)が死亡してしまうケースもあり、子供や子供の配偶者に家族介護負担がシフトしていく状況が見えてきます。
なお、75歳以上の要介護者などを75歳以上の配偶者が介護する「老老介護」の割合が30.2%となり、初めて3割の大台に乗りました。
2025年に向けて、状況はますます厳しくなる(老老介護が増えていく)ことから、地域包括ケアシステムの構築が急がれるとともに、そのベースとなる介護人材確保などに思い切った手を打つことが必要と考えられます。
男女とも高血圧による通院が最多
また健康状況に目を移すと、人口1000人当たり通院者(通院者率)は390.2(同11.9ポイント増)で、男性372.5(同13.7ポイント増)、女性406.6(同10.3ポイント増)となりました。年齢階級別に見ると、10歳代、60歳代で増加が目立ちます。
傷病別に見ると、男性では「高血圧症」が120.0(同6.0ポイント増)ともっとも高く、次いで「糖尿病」58.1(同4.0ポイント増)、「歯の病気」47.4(同3.5ポイント増)と続きます。一方、女性でも「高血圧症」が116.1(同1.5ポイント増)でもっとも高く、「眼の病気」59.5(同2.8ポイント増)、「歯の病気」57.3(同4.8ポイント増)と続きます。
児童のいる世帯で、平均所得が減少
最後に所得の状況を眺めてみましょう。
2015年の1世帯当たり平均所得金額は、「全世帯」では545万8000円(同0.7%増)ですが、「高齢者世帯」では308万4000円(同3.7%増)、「児童のいる世帯」では707万8000円(同0.7%減)となりました。児童のいる世帯で減収となっていることが、少子化対策を進める上での懸念材料になりそうです。