DPC対象病院の要件を見直すべきか、入院日数やDPC病床割合などに着目して検討―入院医療分科会(1)
2019.4.25.(木)
DPC対象病院の要件について、「平均入院日数」や「診療密度」、「当該病院におけるDPC病床の構成割合」などに着目した調査分析を行い、見直す必要があるかを検討していく―。
4月25日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で、こういった検討方針が固められました。
著しく平均入院日数が長いDPC病院、DPC病床の構成割合が低いDPC病院も一部ある
診療報酬改定の内容は、最終的には「中央社会保険医療協議会・総会」で決定されます。ただし、その内容は非常に広範なため、分野を絞った調査・分析、技術的課題の整理などを下部組織で行い、それを踏まえて中医協・総会で具体的な改定議論を行うことになっています。
入院医療分科会では、2020年度の次期診療報酬改定に向けて「入院医療」と「DPC制度改革」に関する技術的課題の整理を行います(従前の入院医療分科会とDPC評価分科会を統合した)。さらに、入院医療分科会の下に(1)診療情報・指標等作業グループ(2)DPC/PDPS等作業グループ―の2つのグループを設け、そこで専門的な調査・分析を行うことになっています(作業グループの分析結果を踏まえて入院医療分科会で技術的課題を整理するイメージ)。
4月25日の会合では、2つの作業グループにおいて、次のような分析を行う方針を確認しています。
(1)診療情報・指標等作業グループ
【2020年度の次期診療報酬改定に向けた検討】
▽入院医療調査(入院医療分科会で実施する調査)の結果を踏まえた「入院患者の医療・看護の必要性に係る指標」等についての分析・検討
▽急性期以外の入院医療についての、「退院患者調査における報告内容」設定に係る検討
【中・長期的な検討】
▽2019年度厚生労働科学研究(急性期の入院患者に対する医療・看護の必要性と職員配置等の指標の開発に係る研究)等の研究を踏まえた、急性期から長期療養まで含めた「入院医療機能の適切な評価指標や測定方法」等についての検討
(2)DPC/PDPS等作業グループ
▽「一般的なDPC対象病院」とは異なる診療実態である病院についての分析、および適切な「DPC対象病院の要件」設定のための評価に関する検討
後者の「DPC対象病院の要件」については、2018年度の前回診療報酬改定論議において、DPC病院の中には、一部「極めて平均在院日数が長く、また診療密度が著しく低い病院」があり、これらをどう考えるべきか、という「宿題」が残されていました。
例えばDPC点数は、大まかには「同じ診断群分類の患者について、どのような医療行為が行われたかというデータを集積し、その平均値として設定する」ことになります。その際、著しく診療密度の低い(医療資源投入量の少ない)、つまり検査実施や投薬量などが他院と比べて著しく少ない病院があれば、DPC点数は「低い方向」に引っ張られ、結果として他のDPC病院の収益が減少してしまいます。
またDPC点数は、診断群分類ごとの平均入院日数に応じて、▼期間I(短いほうから25%の入院日数まで):〇点▼期間II(平均入院日数まで):〇点▼期間III(平均入院日数超過分):〇点―と設定されます。その際、著しく入院日数の長い病院があれば、期間IやIIの日数が「長い方向」に引っ張られ、入院日数短縮に積極的に取り組んでいる病院の努力が正しく評価されなくなる恐れがあります。
こうしたことから、2018年度改定論議では「DPC対象病院の要件」を改めて検討すべきとの宿題が出されたのです。
具体的な要件論議は、今後を待つ必要がありますが、厚生労働省は4月25日の入院医療分科会に次のような資料を提示しました。
▽現在のDPC対象病院の要件について、大半の急性期一般病棟入院基本料届出病院(つまり7対1、10対1)が満たしている(例えば、「データ病床比0.875以上」との要件は、急性期一般病棟入院基本料を届け出ている病院の93.4%が満たしている)
▽平均入院日数が極めて長いDPC病院が存在する(DPC病院ごとに各診断群分類の入院日数を相対化して比較した場合、「平均の1.5倍超」となるDPC病院もある)
▽各病院の「全病床に占めるDPC対象病床の割合」を見ると、100%である(全病床が急性期でDPC対象)病院が多いが、中には「DPC対象病床の構成割合が10%未満」という病院も存在する
今後、作業グループにおいて、例えば「平均在院日数が長い理由はどこにあるのか」「DPC対象病床の構成割合が高い病院と低い病院とで診療内容にどういった違いがあるのか」などを分析していくことになると考えられます。
この点について入院医療分科会では、「『DPC対象病床の構成割合が低い』病院は、DPC制度にふさわしくないような資料の作り方であるが、地域医療構想の実現に向けて、一部病棟を回復期などに機能分化している病院もある。そういった点も踏まえた幅広い視点で検討すべき」(神野正博構成員:全日本病院協会副会長)、「入院日数と『DPC対象病床の構成割合』との相関を見るなど、詳細な分析が必要である」(山本修一構成員:千葉大学医学部附属病院長)、「各病棟における診療内容に着目した分析を行うべき」(牧野憲一構成員(日本病院会常任理事)などの注文が相次ぎました。例えば、「当該病院における全病床に占めるDPC対象病床の割合が●%未満」である病院は、DPC対象から除外するとなれば、ケアミクス病院では大きな方針変更を迫られることになるため、構成員間に激震が走ったようです。
一方、DPC制度は、特定機能病院での試行からスタートし、現在では急性期病院の大部分が参加しています。多くの病院が参加する中で、様々なタイプの病院が混在していることから「DPC制度が歪んできてしまっている」と指摘する識者もおられます。
また、地域医療構想との関係では「一部を回復期や慢性期への機能転換しなければならない病院が、真の高度急性期、急性期医療を提供できるのだろうか」と指摘する識者も一部おられます。この識者の言に沿うとすれば、「DPC対象病床の構成割合」が低い病院については、もちろん診療内容を十分に勘案したうえで、「DPC制度からの退出」も選択肢の1つとなってくるかもしれません。
このように今後の検討結果如何によっては、DPC病院の立ち位置が大きく変化していくことも予想されます。具体的には、一定の指標に基づいて、DPC病院を「真の高度急性期、急性期病院のみに限定していく」という方向に舵を切ることも考えられそうです。
作業グループでの調査・分析結果、その後の入院医療分科会の議論に十分に注目する必要があるでしょう。
また(1)の診療情報・指標等作業グループでは、上述のとおり、2020年度の次期改定に向けては「重症度、医療・看護必要度の見直し」等に関する調査分析を、さらに中長期的な課題として「重症度、医療・看護必要度に代わる『入院患者の医療・看護の必要性を評価する指標』」設定に資する調査分析を行うことになります。
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