2018年度改定で新設された【急性期一般入院料1】を選択する理由はどこにあるのか―入院医療分科会
2018.10.23.(火)
2018年度の診療報酬改定で再編・統合された【急性期一般入院基本料】や【地域包括ケア病棟入院料等】【回復期リハビリテーション病棟入院料】【療養病棟入院基本料】により、医療現場にはどのような影響が出ているのか―。
10月17日に開かれた診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、こういった点を把握するための調査票が概ね固められました(関連記事はこちら)。親組織である中央社会保険医療協議会の了承を待って、近く調査が開始されます。
入院医療に関する診療報酬改定、入院医療分科会の調査・議論がベース
2018年度の診療報酬改定では、さまざまな見直しが行われました。とくに、入院料については、「看護配置などに基づく基本部分」と「重症患者の受け入れ状況などに基づく実績評価部分」を組み合わせた評価体系に再編・統合するなど歴史的な大改定と言えます。
また、急性期病棟における「重症患者」を評価するための「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)についても、▼基準の見直し(認知機能を低下した患者の評価)▼DPCのEF統合ファイルに基づく評価(看護必要度II)の導入—など、大きな見直しが行われています。
こうした入院医療に関する診療報酬の見直しに関しては、中医協で議論を行う前に、入院医療分科会で詳細な調査を行い、技術的な課題の整理等を行っていきます。例えば、上述の看護必要度IIについては、「看護必要度評価票に基づく評価結果」と「EF統合ファイルを用いた評価結果」の突合などを行い、実現可能性を慎重に検討していました。
このように、入院医療に関する診療報酬改定について、入院医療分科会の議論は極めて重いものとなっており、2020年度以降の次期診療報酬改定でも、同様の構図になると考えられます。
10月17日に開催された入院医療分科会では、2018年度改定によって医療現場にどのような影響が出ているのかを把握するために、次の4項目に関する調査(2018年度調査)の調査票が概ね固められました(関連記事はこちら)。
(1)急性期一般入院基本料、地域一般入院基本料等の評価体系の見直しの影響(その1)
(2)地域包括ケア病棟入院料および回復期リハビリテーション病棟入院料の評価体系の見直しの影響
(3)療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響(その1)
(4)医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態
調査内容は多岐にわたりますが、例えば(1)のうち【急性期一般入院基本料】(従前の7対1・10対1一般入院料→新たに7種類の【急性期一般入院料】に再編)を眺めてみると、▼各病棟の届け出内容(急性期一般入院料1-7のいずれか、など)とベッド数、入院患者数▼過去3か月間における新入棟患者数・新退棟患者数と在院患者延日数▼看護必要度の種別(I、IIのいずれか)と選択の理由▼過去3か月間における重症患者割合▼過去3か月間における在宅復帰・病床機能連携率▼改定前後における病床利用率の変化▼夜間の看護体制、看護補助体制▼他病棟への転換意向とその理由▼入退院支援の状況(体制や加算の算定状況、入退院支援が困難なケースなど)▼患者の要介護状態や介護保険の活用状況―などを詳しく調べることになります。
とくにメディ・ウォッチが注目したのは、「7対1一般病棟入院基本料→急性期一般入院料1」という届け出をした病院に対し、「急性期一般入院料1を届け出ている理由」を聞いている点です。
2018年度改定では、いわば「旧7対1と旧10対1の中間に位置する、【急性期一般入院料2】【急性期一般入院料3】」の新設が行われました。7対1からの転換を促すための措置であり、例えば「看護配置を8対1や9対1として、急性期一般入院料2や3に転換する」という選択をした場合、旧7対1相当の【急性期一般入院料1】よりも利益率が向上します。地域での看護職員確保が困難さを増す中では、急性期一般入院料1(旧7対1)への固執は病院運営上、厳しさを増していくため、急性期一般入院料2・3は「極めて魅力的な選択肢」となります。
この点、厚生労働省は、▼7対1看護配置が必要な入院患者が多い(医療需要がある)▼他に転換すると、地域の連携先医療機関からの要請に応えられない▼施設基準を満たしており、転換の必要性がない▼転換した場合、余剰人員が発生してしまう▼収益を上げやすい▼転換した場合、職員のモチベーションが低下する▼転換した場合、職員負担の増加が懸念される―といった選択肢を用意し、【急性期一般入院料2や3】に転換しない理由を探る考えです。
「医師の指示の見直しの頻度」は、患者の状態とは相関しない
また、入院患者の状態については▼疾患▼入院時のADL▼認知機能▼栄養状態▼褥瘡▼医療提供▼手術▼リハビリ▼ケアマネジャーの有無▼今後の見通し―などを調べます。
このうち「医療提供」については、前回改定より「医師による診察(処置、判断含む)の頻度」や「医師の指示の見直しの頻度」が調べられていますが、入院医療分科会委員からは「指示の見直しの頻度は、診察の頻度に包含される。調査する必要はない」との指摘が相次ぎました。
この点については、過去に次のような変遷がありました。
▽2014年度・16年度改定に向けた調査:「医師の指示の見直しの頻度」を調べた
↓
改定論議の中で、「『指示の見直しの頻度が低い患者』=『状態が安定している患者』との誤解を生む。診察の結果、現在の指示を見直す必要はないと判断し、結果、指示の見直しの頻度が低くなるケースは往々にしてある」との指摘
↓
▽2018年度改定に向けた調査:「医師の指示の見直しの頻度」に加え、「医師による診察の頻度」を調べた(関連記事はこちら)
さらに、今般の調査に関しては、神野正博委員(全日本病院協会副会長)や石川広己委員(日本医師会常任理事)らから、上記のような指摘があり、おり、「医師による診察の頻度」に包含して調査されることになったものです。この点、10月19日の日本病院団体協議会・代表者会議でも「指示の見直しの頻度は、決して患者の状態とは相関しない」ことが再確認されています。
調査結果は来年(2019年)6月頃から順次公開される見込みですが、その際の議論に注目が集まります。
なお、入院医療分科会の調査では「回答率が低い」(3割程度のときもある)ことが問題視されており、委員からは「病院団体に早期から調査協力を依頼するべき」「調査項目を精査して負担軽減を図るべき」といった声が出ています。入院医療の診療報酬見直しに向けて、非常に重要な調査であり、多くの病院の協力に期待が集まります。
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地域包括ケア病棟、「自宅からの入棟患者」割合に応じた評価軸などが浮上—入院医療分科会(1)
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