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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

かかりつけ医機能を評価する【機能強化加算】、要件を厳格化すべきか―中医協総会

2019.9.11.(水)

 かかりつけ医機能を評価するために、2018年度の前回診療報酬改定で新設された【機能強化加算】(初診料の加算)について、診療所・病院の1割超が届け出を行っている。要件等が「緩すぎる」と考えるべきか―。

 9月11日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった議論が行われました。

9月11日に開催された、「第422回 中央社会保険医療協議会 総会」

 

【機能強化加算】と【地域包括診療加算】との比較、診療側はナンセンスと一蹴

 中医協では、2020年度の次期診療報酬改定に向けて議論を進めています。8月までの第1ラウンドでは、▼患者の年代別の医療課題▼働き方改革など昨今の医療と関連の深いテーマ―について横断的に議論を行い、「すでに一定の方向が見えてきた部分」「今後、さらに議論を深めなければならない部分」が見えてきました(関連記事はこちら)。

 秋以降は、個別テーマ(入院、外来、在宅など)に関する第2ラウンド論議が始まります。厚労省保険局医療課の森光敬子課長は、この第2ラウンド論議を活性化させるため、2018年度の前回改定以降の各診療報酬項目の算定状況等に関する資料を提示しました。2018年度改定の重要事項となった▼入院料の報酬体系組み換え(10対1・7対1一般病棟入院基本料を7つの【急性期一般病棟入院料】に組み換えるなど)▼かかりつけ医機能の評価(初診料の新たな加算である【機能強化加算】の新設など)▼【オンライン診療料】等の新設▼がん治療と仕事の両立の評価―などについて、「2018年5月診療分」(6月審査分)や「2018年7月1日の施設基準届出」をもとに最新の状況が示されています。

例えば、かかりつけ医機能を評価する新たな【機能強化加算】については、2018年5月診療時点で、診療所1万1793施設・病院1048施設が届け出を行い、算定回数は178万3064件に上っています。【機能強化加算】は、「かかりつけ医」機能をもつ医療機関(▼地域包括診療加算▼地域包括診療料▼小児かかりつけ診療料▼在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院に限る)▼施設入居時等医学総合管理料(同)―を届け出ている診療所・200床未満の病院)において、初診時の「患者自身の状態や既往歴、家族構成、服用している医薬品など」を把握する際の負担を考慮し、初診料に80点を加算するものです。

2018年5月末の医療施設動態調査によれば、診療所は10万2057施設、一般病院は7323施設あり(関連記事はこちら(2018年5月))、単純計算で▼診療所の11.6%、病院の14.3%が【機能強化加算】を届け出ており▼1施設当たり139件算定している―格好です。

 
この点について、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合理事)は、同じように「かかりつけ医機能」を評価する【地域包括診療加算】や【地域包括診療料】の届け出・算定状況と比較しました。

【地域包括診療加算】は、主治医機能を持つ診療所の医師が、複数の慢性疾患を抱える患者に対し、継続的かつ全人的な医療を行うことを評価する「再診料の加算」(加算1は25点、加算2は18点)です。こちらは2018年5月診療時点で、5524の診療所が届け出を行い、125万9825件の算定回数があります(加算1:43万277件、加算2:82万9548件)。地域包括診療加算の算定率は医療施設動態調査結果をもとに単純計算すれば、5.4%となります。

 
また【地域包括診療料】は、主治医機能を持つ診療所・200床未満の中小病院の医師が、複数の慢性疾患を抱える患者に対し、継続的かつ全人的な医療を行うことを評価する医学管理料(診療料1:1560点、診療料2:1503点、再診料などが包括評価されており、1か月に1回算定できる)です。2018年5月診療時点で、診療所218施設・病院46施設が届け出を行い、算定回数は7054件です。医療施設動態調査結果をもとに単純計算で算定率を見ると、診療所:0.2%・病院:0.6%となります。

 
幸野委員は「同じかかりつけ医機能を評価する診療報酬でありながら算定率は大きく異なる。【機能強化加算】の算定要件が緩すぎるからではないか」と指摘したのです(関連記事はこちら)。

 
これに対し、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「施設基準や算定要件が大きく異なる。比較そのものがナンセンスである」と一蹴しました。

診療所における【地域包括診療料】を例にとれば、例えば▼【時間外対応加算1】の届出▼医師が常勤換算2名以上(うち1名以上常勤)▼在宅療養支援診療所―のすべてを満たす診療所が、▼高血圧症▼脂質異常症▼糖尿病▼認知症―のいずれか2疾患を抱える患者に対し、「療養上の指導」「他の医療機関での受診状況等の把握」「服薬管理」「在宅医療の提供」「24時間対応」などを継続的に行うことが必要です。

一方、【機能強化加算】は、前述のとおりで、松本委員のコメントどおり施設基準・算定要件は大きく異なります。

【機能強化加算】の算定要件等については議論のあるところですが、「かかりつけ医機能」には、さまざまな要素が含まれ、また各要素の実施度合いは医療機関によって濃淡があります。これを一律に「【地域包括診療料】並みの基準を設ける」こととなれば、「かかりつけ医機能の一部のみ」を実施している医療機関は全く評価されなくなってしまいます。

診療報酬は、多種多様な医療機関の取り組みをさまざまな角度から評価するものです。かかりつけ医機能についても、「100からゼロか」ではなく、「極めて積極的な取り組みを行う医療機関は高い点数等(例えば【地域包括診療料】)で、取り組み内容は一部のみであるが、地域において必要とされている医療機関は相対的に低い点数等で評価する」とういう形があっても良いかもしれません。

もっとも幸野委員と松本委員の議論にはかみ合っていない部分もあり、今後の個別テーマ論議の中で改めて火花が飛ぶシーンが出てきそうです。

【小児抗菌薬適正使用支援加算】、1か月当たり24万件超の算定

このほか、森光医療課長の提示した資料を眺めると、次のような項目が目を引きます。

▽認知症患者への全人的・継続的な医療提供を評価する【認知症地域包括診療料】の算定回数は、横ばいから減少傾向にある(2017年5月診療分:1438件→2018年5月診療分:1339件、マイナス7.5%)

 
▽小児への全人的・継続的な医療提供を評価する【小児かかりつけ診療料】の届け出施設数・算定回数ともに大きく増加している(2017年5月診療分:909施設→2018年5月診療分:1409施設、プラス57.2%)

 
▽【7対1一般病棟】の施設数・病床数と、【急性期一般入院料1】の施設数・病床数に大きな差はない(急性期一般入院料2・3への転換はごくごく一部)


 
▽NICU【新生児特定集中治療室管理料】、PICU【小児特定集中治療室管理料】について、算定患者数は減少傾向にある(病床数は横ばい、または増加)


 
▽【往診料】の算定回数は横ばいだが、【在宅患者訪問診療料】の算定回数は増加傾向(2017年5月診療分:141万5875件→2018年5月診療分:145万5629件、プラス2.8%)

 
▽【オンライン診療料】【オンライン医学管理料】【オンライン在宅管理料】【精神科オンライン在宅管理料】の届け出は、905診療所・65病院でなされたが、算定回数は極めて低調

 
▽【緩和ケア病棟入院料】について、届け出医療機関数・病床数ともに増加傾向(2017年7月1日時点の病床数:7229床→2018年7月1日時点の病床数:8363床、プラス15.7%)にあるが、96.9%が入院料1を届け出ている

 
▽【摂食機能療法】について、算定件数が増加傾向にある(医科入院・医科外来・歯科の合計で、2017年5月診療分:72万4807回→2018年5月診療分:74万1291回、プラス2.3%)

 
▽がん治療と仕事との両立に向けた医師の指導等を評価する【療養・就労両立支援指導料】【相談体制充実加算】の届け出・算定状況は、極めて低調である

 
▽入院患者の退院後について、入院医療機関と入院後の在宅医療機関とが共同して指導を行うことを評価する【退院時共同指導料】の算定件数は大幅に増加している(指導料1・指導料2の合計で、2017年5月診療分:4794件→2018年5月診療分:7459件、プラス55.6%)

 
▽歯科における【周術期口腔機能管理】が年々増加している

 
▽小児に対する抗菌薬使用を適正化するための【小児抗菌薬適正使用支援加算】(急性気道感染症・急性下痢症で受診した基礎疾患のない小児患者で、診察の結果、抗菌薬投与の必要がないため抗菌薬を使用しない患者について、家族等に療養上必要な指導・検査結果の説明を行い、文書により説明内容を提供することを評価する)は、2018年5月の1か月診療において24万2576件算定されている

これらデータを眺めていると、「緩和ケア病棟入院料のほとんどは、高点数の入院料1であるな。2020年度改定では入院料1の施設基準厳格化が検討される可能性があるのではないか」「急性期一般2・3への転換が進んでいない。急性期一般1の重症度、医療・看護必要度の厳格化が行われるのではないか」などの考えが浮かんできます。 

2018年度改定の適用から2か月・3か月しか経過しておらず、「改定への対応中」「改定対応を検討中」という医療機関も少なくない状況でのデータであり、その後の算定状況がどうなっているのか、厚労省は各種データを紐解き、今後も逐次中医協に報告する考えです。2020年度改定に向けて熱い議論の火花が飛び散ることでしょう。

【更新履歴】文章が途中で切れてしまっておりました。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。
 
 
 

 

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