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連携型の認知症疾患医療センターも認知症専門診断管理料2の対象に加えるなど精神科医療の充実を―中医協総会(2)

2021.11.8.(月)

連携型の認知症疾患医療センターでも、BPSD対応などを積極的に行っており、基幹型や地域型のように【認知症専門診断管理料2】の算定を認めてはどうか―。

在宅療養する精神疾患患者への診療報酬や、児童・思春期の患者への精神医療提供に関する診療報酬等を拡充してはどうか―。

11月5日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった議論も行われています。

連携型の認知症疾患医療センターも認知症専門診断管理料2の対象に加えてはどうか

2022年度の次期診療報酬改定に向け、中医協や社会保障審議会で議論が進められています。

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◆基本方針策定論議に関する記事はこちら(医療部会3)こちら(医療保険部会3)こちら(医療部会2)こちら(医療保険部会2)こちら(医療部会1)こちら(医療保険部会1)



11月5日の中医協では「がん対策(治療・仕事の両立支援など)」のほか、認知症対策を含めた精神医療の診療報酬サポートも議題となっています。

高齢化の進行に伴い、認知症患者も増加し、さらに増加することが見込まれます。2018年には認知症患者数は500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況です。

政府も状況を重く見て、認知症対策の充実・強化に向け、新オレンジプランを大改革した「認知症施策推進大綱」を2019年6月に取りまとめました。そこでは、「認知症の人との共生」「認知症の予防(発症を遅らせる)」を目指し、(1)普及啓発・本人発信支援(2)予防(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援(5)研究開発・産業促進・国際展開―という5つの柱を打ち立てています(関連記事はこちら)。

また認知症では、早期に的確な鑑別診断を行い、適切な治療に結びつけることが極めて重要です。この点を重視し、国は鑑別診断・医療相談・適切な医療提供を行う「認知症疾患医療センター」の整備を進め、今年(2021年)10月時点で全国に488か所が設置されています。

都道府県における認知症診断・医療提供の要となる「基幹型」(総合病院や大学病院)が17か所)、2次医療圏における認知症診断・医療提供を行う「地域型」(病院)が384か所、「連携型」(診療所など)が87か所という内訳です。

認知症疾患医療センターの概要(中医協総会(2)1 211105)



「認知症疾患医療センター」については、その専門性を活かした鑑別診断・医療提供を円滑に行うことが求められるため、次のような診療報酬によるサポートも行われています。

B005-7【認知症専門診断管理料】
1 管理料1

→他医療機関から紹介された「認知症の疑い患者」に対して鑑別診断して療養方針を決定する、認知症患者に対し「認知症療養計画」を患者に説明・文書提供するとともに、地域で療養を担う他医療機関に当該患者に係る診療情報を文書により提供することを評価
イ 基幹型または地域型の場合:700点(1人につき1回)
ロ 連携型の場合:500点(1人につき1回)

2 管理料2
→地域医療機関から紹介された「認知症の症状が増悪した患者」について、診療の上で今後の療養計画等を患者に説明・文書提供するとともに、紹介元医療機関に当該患者に係る診療情報提供を行うことを評価
基幹型または地域型の場合:300点(3か月に1回)

また、紹介元となる地域医療機関では、次の点数算定が可能です。
認知症専門医紹介加算:100点(認知症疑い患者を専門医療機関に紹介した場合の評価、B009【診療情報提供料(I)】の加算)
認知症療養指導料
指導料1:350点(自院からの紹介で専門医療機関において認知症鑑別診断を受け、【認知症専門診断管理料1】を算定した患者について、自院で認知症療養計画に基づいた治療を行うとともに、経過等を専門医療機関に情報提供することを評価)
指導料2:300点(自院からの紹介で認知症対応体制を確保する医療機関において【認知症サポート指導料】(認知症支援体制を強化した医療機関が、他医療機関への助言を行うことを評価)を算定した患者について、認知症療養方針に係る助言を得て、自院で認知症療養計画に基づいた治療を行うとともに、当該助言医療機関に情報提供することを評価)
指導料3:300点(新たに認知症と診断された患者や、病状変化で認知症療養計画の再検討が必要な患者について、認知症支援体制確保に協力している医師が、療養方針を決定し、認知症療養計画を作成の上で治療を行う場合の評価)
認知症専門医療機関連携加算:50点(認知症専門医療機関で既に認知症と診断された患者(入院中以外)について、症状増悪した場合に当該専門医療機関に紹介を行う場合の評価)



ところで、連携型の認知症疾患医療センターでも、身体合併症への対応やBPSD(粗暴行動などの周辺症状)対応を行っていますが、上述したB005-7【認知症専門診断管理料】の「2 認知症専門診断管理料2」を算定することは認められていません(基幹型・地域型のみ)。

連携型の認知症疾患医療センターでは、認知症専門診断管理料2の算定ができない(中医協総会(2)2 211105)



そこで2022年度の次期診療報酬改定に向けて、「認知症専門診断管理料2」を連携型センターでも算定可能とするべきかを検討してはどうか、という論点が浮上したのです。この方向に対する異論・反論は診療側・支払側のいずれからも出ておらず、了承されたと考えて良いでしょう。今後、厚労省で点数・要件等の詳細を詰めていくことになります(連携型センターで、基幹型・地域型と同じ300点の算定が可能になるかは現時点では不明)。

在宅療養する精神疾患患者、児童・思春期の精神医療などの診療報酬を拡充

また、精神科医療の診療報酬については、次のような論点が浮上しています。

▽精神疾患患者の地域移行・地域定着に向けて、多職種が連携して包括的な支援を行う「包括的支援マネジメント」が重要かつ効果的である。2020年度の前回改定でI002【通院・在宅精神療法】に「療養生活環境整備指導加算」(200点)を設け、包括的支援マネジメントの評価が進められているが、算定対象が「精神科退院時共同指導料1を算定した患者」(入院後の患者)に限られている。外来患者についても加算算定を認めることができないか

療養生活環境整備指導加算は、退院患者が算定対象となっている(中医協総会(2)3 211105)



▽引きこもりや医療機関受診を拒否する患者に対し、在宅での精神医療提供が重要となるが、【精神科在宅患者支援管理料】の算定対象は「重症患者等」に限定されている(2020年度改定で「重症患者等以外」の点数項目が廃止された)。重症患者等以外の在宅精神療養が必要な患者(引きこもりなど)への在宅医療提供を改めて評価すべきではないか

在宅で精神医療が必要だが、重症でない患者への評価が廃止されてしまった(中医協総会(2)4 211105)



▽優れた精神医療提供を行う精神科医について精神保健指定医に指定しているが、I002【通院・在宅精神療法】では特段の評価がなされていない。精神保健指定医について特別の評価を行うべきではないか

▽薬物・ギャンブル依存症の治療は、外来における集団療法についてI006-2【依存症集団療法】で評価されている(入院での治療についての評価はなされていない)。ギャンブル依存症の患者が他疾患治療などで入院することもあり、その際に入院において依存症治療を実施できれば効果的であり、診療報酬での評価(入院における個別療法などの評価)を検討すべきではないか

薬物・ギャンブル依存症治療は、入院・個別療法の評価が設けられていない(中医協総会(2)5 211105)



▽I002【通院・在宅精神療法】の「20歳未満の患者への加算」(350点)は初診から1年間まで、16歳未満患者への「児童思春期精神科専門管理加算」(500点)は初診から2年間まで、B001【特定疾患治療管理料】の「4 小児特定疾患カウンセリング料」(医師による場合は月の初回は500点、2回目は400点、公認心理師による場合は200点)は初診から2年間までの算定しか認められていないが、2年を超えて精神科医療を必要とする患者もおり、算定可能期間の延長を検討すべきではないか

児童・思春期の精神医療について、診療報酬上の算定期間制限により、継続治療を受けられないケースも出ている(中医協総会(2)6 211105)



こうした方向に明確な反対意見は出ておらず、例えば診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)から「地域で生活する精神疾患患者では、家族とも疎遠になり、就労できないために経済的に不安定なため、住まい確保、医療提供、生活サポートなどの包括的な支援が必要となる。現時点では病院がサポートを行っているが、公的な支援の拡充が極めて重要である」など、診療報酬の外での対応の重要さを強調。支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)も、こうした考えに賛同しています。



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