希少がん治療の拠点的病院設置、難治がんの評価指標設定、正しく分かりやすいがん情報提供など推進せよ―がん対策推進協議会(2)
2021.10.13.(水)
希少がん対策、小児がん対策が進められているが、希少がんについては「症例の集約」「拠点的な病院の設置」などを進めていくことが必要ではないか―。
難治性がんについては定義づけすらなされておらず、評価指標設定・対策の実行を阻害している。第4期のがん対策推進基本計画作成に向けて、定義づけ等を急ぎ進める必要があるのではないか―。
がん治療等に関する情報提供が重要であり、とりわけ「この患者にどういった情報が必要かつ重要であるか」という点を踏まえた情報提供を進めていく必要があるのではないか―。
10月7日に開催された「がん対策推進協議会」(以下、協議会)では、こういった議論も行われています。
目次
希少がんの症例集約、難治性がんの定義づけ・指標設定などが第4期計画で重要テーマに
Gem Medでお伝えしているとおり、我が国のがん対策の基礎となる「がん対策推進基本計画」(現在は第3期計画)について、中間評価論議が進められています(関連記事はこちら)。
10月7日の会合では、▼がんとの共生(就労支援など)▼基盤整備(人材育成や研究など)▼がん医療の充実―の各分野について、中間評価に向けた議論を行いました。本稿では、「がん医療の充実」のうち、▼チーム医療▼がんリハビリテーション▼支持療法▼希少がん・小児がん等―に焦点を合わせます(ゲノム医療や医療技術の評価などに関する記事はこちら)。
まず希少がん、小児がん・AYA世代がんに関しては、▼希少がん情報公開専門施設における公開がん種数(2018年度には四肢軟部肉腫と眼腫瘍の2種類)▼初診から診断、診断から治療までの時間▼専門的治療を受けられたと感じる患者割合▼3年生存率▼妊孕性温存に課する説明割合―などが評価指標に据えられました。
概ね「向上」していますが、「まだまだ対策が不十分である」との声が少なくありません。大西啓之委員(キュアサルコーマ理事長、日本希少がん患者会ネットワーク副理事長)は「地域の希少がんセンターの整備が進められており、今後は地域内の希少がん専門医や専門病院との連携強化を重点テーマとしてほしい」と、三上葉子委員(東京女子医科大学病院脳神経外科家族の会「にじいろ電車」代表)は「希少がんについても拠点病院設置などを検討してほしい。また情報を医療関係者間で十分共有し『この症例は、この病院に紹介しよう』とった迅速な専門医療につながる仕組みも整備してほしい」と、今後の対策に期待を寄せています。こうした意見を踏まえて厚生労働省では「がん種に注目することはもちろん、領域でまとめて研究等を進めることも検討していく」考えを示しています。
関連して羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)は「なんといっても症例・情報の集約が希少がんにおいては重要である。日本で不十分であれば、アジア諸国の情報も共有するべきではないか」と提案しています。
なお、長谷川一男委員(肺がん患者のワンステップ理事長、日本肺がん患者連絡会理事長)は「難治性がんについては指標が設けられていない。例えば、▼がん種に関係なく「ステージ4がん」の発見率▼ステージ4がんの5年生存率▼AMED(日本医療研究開発機構)の研究予算確保状況―などを指標として検討してはどうか」と提案しています。
難治性がんについては、ステージ4のがんのほか膵臓癌など、様々なケースがあり、「まず定義を定め、そこから共通指標を検討していく」方針こそ固められていますが、入口となる「難治性がんの定義づけ」で議論・検討が難航しています。厚生労働省や山口健会長(静岡県立がんセンター総長)も「第3期計画の中間指標では、難治性がんの評価指標を設定できていないが、第4期計画に向けて定義づけ・指標設定を行い、対策が前進するように努めたい」との考えを示しています。
緩和ケアチームの設置推進、在宅緩和ケアの推進などもがん対策の重要視点
チーム医療に関しては、▼専門チームを整備し、がん患者に関コンサルテーションを行っている割合▼緩和ケアチームの設置割合▼がん診療を統括する診療部(腫瘍センター)設置割合―といった体制面のほか、「主治医以外にも相談しやすいスタッフがいた患者の割合」などが評価指標に据えられています。
相談しやすいスタッフがいるか否かという患者目線に立つと、成人では48.8%、小児では78.0%の病院で存在が確認されています。「●●の資格を持っていれば相談しやすい」などという公式はなく、スタッフ1人1人が患者の声や顔色にどれだけ意識を向けているかが示される指標と言えるでしょう。
なお、▼緩和ケアチームの設置(拠点病院でも14.8%にとどまっている)をさらに促進すべき(木澤義之委員:神戸大学医学部附属病院特命教授、特定非営利活動法人日本緩和医療学会理事長)▼在宅で療養するがん患者(とりわけ終末期)への在宅医療等も推進していくべきである(小原眞知子委員:日本社会事業大学社会福祉学部教授)―などの意見も出ています。
「患者・家族にとってどういう情報が必要かつ重要なのか」も見極めた情報提供を
また、リハビリ・支持療法については、▼リハ専門医の配置状況▼リハを受けた患者の割合▼支持療法の標準診療(予防的制吐剤処方率やオピオイド処方、せん妄への診療など)実施状況▼支持療法ガイドラインの策定状況▼辛いときにスタッフに相談できている患者の割合▼外見の変化に関する相談ができている患者の割合▼リンパ浮腫外来の設置状況―などが評価項目に設定されています。
こちらも、概ね「向上が認められる」状況ですが、「さらなる推進」を望む声が少なくありません。例えば、▼手術の後遺症といてリンパ浮腫に悩んでいる患者は少なくない。さらなる推進に努めてほしい(長谷川委員)▼長期フォローの充実(例えば医療用ウィッグの補助の充実など)を検討してほしい(池田真実委員:小児がん経験者の会Fellow Tomorrowメンバー)―などの声が目立ちます。がん医療・医学が向上するとともに「サバイバーシップ」の重要性が増していきます。限られた予算の中で、どういった支援をどういった方を対象に行っていくべきか、関係者間でさらに議論を深めていくことが重要でしょう。
なお、こうした事項についても「正確で、かつ分かりやすい情報提供」の重要性を確認できます。例えば「妊孕性温存」や「支持療法」など、患者の知らない重要情報があります。従前は「患者が求める情報を分かりやすく提供する」ことに主眼が置かれていますあ、その一方で「患者には分からない情報も出してほしい」との要望もあります。しかし、情報量が多くなれば「患者に分かりにくくなってしまう」というジレンマもあり、山口会長は「医薬品と同じように、『この情報だけはしっかり把握してほしい』と医療者が患者・家族に伝える、情報処方という考え方が重要ではないか」との考えを示しています。今後の中間評価、第4期計画作成に向けて非常に重要な視点になってきます。
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