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第3期がん対策計画の中間評価に向け、希少がん対策やがん患者の就労支援状況などを把握―がん対策推進協議会

2019.2.1.(金)

 現在の「第3期がん対策推進基本計画」の実施・進捗状況を評価するために、重点項目に盛り込まれた「希少がん対策」や「就労支援」などの状況を評価指標として、調査・分析・評価を行い、その結果を次期「第4期がん対策推進基本計画」につなげる―。

 1月31日に開催された「がん対策推進協議会」(以下、協議会)で、こういった議論が行われました(関連記事はこちらこちら)。

1月31日に開催された、「第72回 がん対策推進協議会」

1月31日に開催された、「第72回 がん対策推進協議会」

 

希少がん患者は、的確に専門的治療を受けられているか

 我が国のがん対策は、5年を一期とする「がん対策推進基本計画」に則って実施され、現在、第3期計画(2017年10月、2018年3月に閣議決定)が稼働しています。当然、第3期計画終了後は、次の第4期計画にバトンタッチされますが、「第3期計画の終了を待って、その効果等を評価し、第4期計画を策定」していたのでは、第3期計画と第4期計画との間に間隙が生じてしまいます。

そこで、第3期計画の中間年となる2020年度に「中間評価」を行い、その結果を踏まえて第4期計画策定に向けた議論をしていくのです(医療計画の中間見直しとも歩調を合わせることになる)。
がん対策推進協議会 180830の図表

  
協議会では、この「中間評価」をする際に、「どういった指標を用いればよいか」という議論を開始しています(関連記事はこちら)。1月31日の会合では、第3期計画の重点分野のうち、(1)がん医療の充実(11月21日の前回会合で一部を議論し、今回は残る部分を議論)(2)がんとの共生—について、中間評価指標を議論しました。今後、「基盤整備」を評価する指標の議論も行ったうえで、評価指標全体を決することになります。項目は膨大なため、ポイントを絞って厚生労働省の提示した評価項目案と、これに対する協議会委員の意見を見ていきましょう。委員からはいくつかの注文が付きましたが、大きな異論・反論は出ていません。

第3期がん対策推進基本計画の概要

第3期がん対策推進基本計画の概要

 
前者の(1)「がん医療の充実」に関しては、分野ごとに次のような評価項目案が厚生労働省から示されました。

希少がん・難治性がん対策:▼希少がん情報公開専門施設での公開がん種数(新規)▼希少がん患者の初診から診断までの時間・診断から治療開始までの時間▼「専門的医療を受けられた」と感じる希少がん患者割合(新規)

 難治性がんについては「がん研究10か年戦略」の中で評価することとなっており、特段の中間評価指標は設定されません。この点、難治性がんの中でも「膵臓がん」などに絞った評価項目を設定してはどうか(村本高史委員:サッポロビール株式会社人事部プランニング・ディレクター)という意見も出ていますが、難治性がんの定義そのものが明確になっておらず、「膵臓がんなど一部のがんを、難治性がんを代表とすることが妥当か」という問題もあります。

病理の第一人者でもある中釜斉委員(日本癌学会理事長、国立がん研究センター理事長)も、いくつかのがん種を取り上げ▼早期発見率▼ステージごとの治療成績―などを指標化することで「目標を立てやすくなるのではないか」との見解を示した上で、「難治性がんとされるものの中には、治療法が未確立のもの、早期発見が困難なものなど、さまざまな病態が含まれており、研究テーマとしても複雑である」とコメントしています。前述した「がん研究10か年戦略」の中での評価が待たれます。

 轟浩美委員(希望の会理事長)は、「難治性がんなどでは、効果的な治療法がなく、それが『怪しげな療法』に頼ることにつながってしまっていると思う。がん診療連携拠点病院などの、治療法開発などに向けた取り組みが『可視化』されることが、患者の希望につながり、適切な治療の促進につながるのではないか」とコメント。11月21日の前回会合で山口建会長(静岡県立静岡がんセンター総長)は「次期計画(第4期計画)では適切な情報提供が最重点事項の一つになる」と見通しており、今後の重要課題の1つと言えそうです。

 
小児・AYA(思春期(Adolescent)と若年成人(Young Adult))・高齢者のがん対策:▼小児がん患者の3年生存率(新規)▼AYA世代がん患者の3年生存率(新規)▼治療開始前に「生殖機能への影響」の説明を受けた患者・家族の割合

 このうち「生殖機能」に関連して、松村淳子委員(京都府健康福祉部長)から京都府による「がん患者生殖機能温存療法助成」制度が紹介されました。がん治療前に精子・卵子を凍結保存等することで、がん治療後にも妊娠等が可能となる処置について、男性では3万円、女性では20万円を上限に費用助成を行うものです。2017年6月のスタートから昨年(2018年)末までの1年半で31名に助成が行われています(10代:4名、20代:16名、30代:11名)。厚労省健康局がん・疾病対策課の佐々木昌弘課長は、「国として、京都府のような好事例・先進事例の情報を各都道府県に紹介し、横展開を図りたい」との考えを示しています。

 また生存率については、データの蓄積を待ち、今後、より信頼性の高い「5年生存率」の把握へ切り替えていく方針です。

 
病理診断:▼常勤病理診断医が1名以上配置されるがん診療連携拠点病院割合

 この点について羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)は、「遠隔病理診断」の実施状況なども見ていってはどうかと提案しています。病理医の確保が課題となる中、高精細画像を遠隔の病院に所在する専門医が診断することで、効果的かつ効率的な病理診断の普及が進むと期待されており、この取り組みの推進も見据えた提案と言えます。

 
がん登録:全国がん登録の精度指標としてのMI比・%DC(いわば、診断当初から適切な登録がなされているか)(新規)

 なお檜山英三委員(日本小児血液・がん学会評議員、広島大学自然科学研究支援開発センター教授)は、現在、がん登録に関する国際水準ルールの研究を行っており、今後のがん治療等の重要エビデンスとなる「がん登録」データの質向上に向けた評価項目の設定等も検討すべきと求めています。

 
医薬品・医療機器の早期開発・承認:▼臨床試験・治験に関する相談窓口のあるがん診療連携拠点病院割合(新規)▼抗がん剤の治験数(新規)▼アンメットメディカルニーズ(有効な治療方法の見つかっていない疾病への、新規治療薬等開発要望)に応える新規薬剤開発

がん患者、会社から就労継続に向けたサポートを受けられているか

 また(2)の「がんとの共生」では、次のような評価指標案が提示されました。

全体:▼自分らしい日常生活を送れていると感じる患者割合▼がん診断後、病気・生活について相談できていると感じる患者割合

 
緩和ケアの提供:▼身体的苦痛を抱える患者割合▼精神的苦痛を抱える患者割合▼身体的・精神的苦痛で日常生活に支障を来している患者割合(新規)▼療養生活の最終段階で身体的苦痛を抱える患者割合(新規)▼療養生活の最終段階で精神的苦痛を抱える患者割合(新規)

 
緩和ケア研修会:▼緩和ケア研修修了者数(医師、医師以外)

 
緩和ケアの普及啓発:▼国民の緩和ケアに関する認識▼国民の医療用麻薬に関する認識

 
相談支援:▼家族の悩み・負担を相談できる支援が十分と感じる患者・家族の割合▼がん相談支援センターを知っている患者・家族の割合▼ピアサポーターについて知っているがん患者割合(新規)

 
情報提供:▼がん情報サービス(国立がん研究センター)にアクセスし、必要な情報にたどり着けた人の割合(新規)▼がん情報サービスにおける点字・音声資料数、更新数(新規)

 「がん情報サービス」は、国立がん研究センターによる情報提供サービスで、我が国において「最も信頼できる」情報の1つです。ただし、患者や家族が自らアクセスしなければ情報を入手できません。この点について山口会長も「自院(静岡がんセンター)でもパンフレット等を作成しているが、作成・配置等するだけでは患者・家族に届かない」と情報提供の難しさを指摘。太田圭子委員(島根大学医学部医療サービス課医療ソーシャルワーカー)は、「主治医からがん相談支援センターへの紹介状況」などを見てはどうかと提案しています。

 
拠点病院と地域との連携:▼1拠点病院当たりの「地域連携推進のための多施設合同会議」開催数(新規)▼がん治療前にセカンドオピニオンに関する話を受けたがん患者割合

 
在宅緩和ケア:▼在宅で亡くなったがん患者の医療に関する満足度(新規)▼希望する場所で過ごせたがん患者割合(新規)

 
就労支援:▼治療と仕事両立のための社内制度を活用できたがん患者割合(新規)▼治療と仕事両立のための勤務上の配慮がなされているがん患者割合

 がん治療水準が向上し、予後が改善していく中では、がん治療後の生活基盤確保、とりわけ「がん治療と就労の両立」が極めて重要になってきています。2018年度の診療報酬改定でも【療養・就労両立支援指導料】などが創設されており、羽鳥委員は、これら点数の算定状況も調査・分析すべきと提案(関連記事はこちらこちら)。

 また太田委員や松村委員らは、経済産業省の進める「健康経営優良法人」の認定状況(従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を認定する仕組み)なども評価指標に加えられないか検討してほしいと要望しています。

 さらに檜山委員は、会社から明示・黙示で「退職してほしい」と要望されたがん患者の割合も調べるべきと強調しています。さまざまな角度での調査・評価が期待されます。

 
就労以外の社会的問題:▼外見の変化に関する相談ができた患者割合(新規)▼がん患者の自殺数(新規)

小児がん患者対象の「体験調査」、対面で行うべきか、郵送で調べるべきか

 ところで、がん患者や家族の思いを吸い上げるために、国立がん研究センターでは「患者体験調査」を実施しています。調査結果は、計画の評価にも活用され、現在の第3期計画策定においても極めて重要な基礎資料となりました。今般、小児(0-18歳)を対象とした調査を新たに実施することとなり(2019年度実施予定)、調査の概要や質問項目案などが小川千登世参考人(国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科科長)から報告されました。

 小児がん患者では、成人患者と異なり、自分自身が「がんに罹患しているか知らない」ケースも少なくないため、「調査をどのように行うか」が重要論点となり、とくに「調査票を郵送すべきか、回答者(両親などの代諾者)に対面で調査を行うか」が議論となりました。

この点、山口会長は、「患児名で調査票を郵送すれば、『自分はがんなのか』と衝撃を受ける患児もおり、法律上も問題が生じる。インフォームドコンセントが極めて重要な調査であり、対面形式で実施すべきではないか」と提案。これに対し小川参考人は「例えば、子どもを亡くしたばかりの保護者では、接触しないでほしいとの思いも強い。そうした点にも配慮し、郵送調査が好ましいと考えている」と説明。両意見ともに頷ける部分が大きく、今後、国立がん研究センター内部で再度議論されます。

調査は、今年(2019年)5月頃から行われ、2019年度内に取りまとめがなされる予定です。

 
 
 なお、「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、DPCデータをもと「がん医療の質向上」に向けた研究を行っています(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンがデータ分析等を担当)(関連記事はこちら)。

 
 
 
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