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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

がんの罹患率・死亡率は全体として低下傾向にあるが、乳がん・子宮がんでは横ばい—がん対策推進協議会

2020.10.23.(金)

「がん対策推進協議会」が再開され、「第3期がん対策推進基本計画の中間評価」論議が本格スタートしました。

10月16日の会合では「がん予防」の状況が報告され、「全体としてがんの罹患率・死亡率は低下してきているが、乳がんや子宮頸がんなどでは横ばいにとどまっている」ことが明らかになりました。第4期計画に向けて「現行のがん対策(予防・治療・研究開発など)の評価」を行い、改善方策などを探っていきます。

なお、厚労省から「HPVワクチン」(子宮頸がん予防ワクチン)について、接種勧奨は行わないが、希望者に「ワクチン接種の選択肢がある」ことを伝えるために、適切な情報提供を行っていく方針が示されています。

10月16日に開催された、「第74回 がん対策推進協議会」

がんの罹患率・死亡率は低下してきているが、乳がんや子宮頸がんでは「横這い」

我が国のがん対策は、5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に沿って実施され、現在、第3期計画(2017年10月、2018年3月に閣議決定)が稼働しています。第3期計画が終了した後は、次の第4期計画へバトンタッチすることになりますが、「第3期計画が終了してから、その効果等を評価し、第4期計画を策定する」のでは、第3期計画と第4期計画との間に隙間が生じてしまいます。

そこで、第3期計画の途中で「中間評価」を行い、その結果を踏まえて第4期計画策定に向けた議論をしていくこととなっています(医療計画の中間見直しとも歩調を合わせる)。

第4期がん対策推進基本計画策定に向けたスケジュール(がん対策推進協議会1 201016)



協議会では、140項目の「中間評価の指標」をこれまでに決定。その指標と、各種の成果データ(例えば5年生存率や死亡率、拠点病院の整備数、標準治療の実施割合)をもとに、第3期計画の分野別施策(▼予防▼医療▼強制▼基盤整備—)のそれぞれについて「中間評価」を行っていきます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

第3期がん対策推進基本計画の達成状況を評価(中間評価)するために140項目の評価指標が設定された(がん対策推進協議会2 201016)



10月16日の会合では「予防」に関する中間評価が行われました。

まず「がん予防」の全体目標に関しては、第3期計画において「死亡率、罹患率を下げる」という若干定性的な目標設定がなされています。第2期計画では「75歳未満の、がんの年齢調整死亡率を20%減少させる」との目標が立てられましたが、これは未達に終わり、第3期計画では数値目標の設定を避けたものと言えます。

この点、がん登録に関するデータから次のようにな状況が明らかになりました。

▽がんの年齢調整死亡率(人口10万対)
[75歳未満(男女計)] 2017年:73.6 → 2018年:71.6(2ポイント低下)

[全年齢(男女計)] 2017年:116.5 → 2018年:114.0(2.5ポイント低下)

▽がん種別の年齢調整死亡率の変化(人口10万対)
[胃がん(75歳未満)] 2017年:8.2 → 2018年:7.7(0.5ポイント低下)
[大腸がん(同)] 2017年:10.2 → 2018年:10.0(0.2ポイント低下)
[肺がん(同)] 2017年:13.1 → 2018年:12.8(0.3ポイント低下)
[乳がん(同)] 2017年:10.7 → 2018年:10.7(増減なし)
[肝がん(同)] 2017年:4.6 → 2018年:4.2(0.4ポイント低下)

▽がんの年齢調整罹患率(人口10万対)
[全年齢] 2016年:402 → 2017年:389(13ポイント低下、ただし2016年の数字が過大評価(実際よりも罹患率が高い)されている可能性もあり、「減少している」とは評価しきれない)

▽がん種別の年齢調整罹患率の変化(人口10万対)
[胃がん] 2016年:48.2 → 2017年:45.3(2.9ポイント低下)
[大腸がん] 2016年:61.4 → 2017年:58.5(2.9ポイント低下)
[肺がん] 2016年:44.4 → 2017年:43.3(1.1ポイント低下)
[子宮頸がん] 2016年:14.5 → 2017年:14.1(0.4ポイント低下)
[乳がん] 2016年:102.3 → 2017年:97.6(4.7ポイント低下)
[肝がん] 2016年:14.7 → 2017年:13.3(1.4ポイント低下)

がんの罹患率・死亡率の現況(がん対策推進協議会3 201016)



全体の死亡率・罹患率は下がってきており「目標を達成している」と見ることもできますが、がんの種類別にみると「乳がんなどの死亡率は横ばい」となっている部分もあり、さらに詳しく見ていく必要があるでしょう。

この点、大西啓之委員(日本希少がん患者会ネットワーク副理事長)から「希少がん対策が第3期計画において重要事項に盛り込まれている。希少がんの罹患率・死亡率なども見ていくべきではないか」との要請が出ています。症例数も限られており、どういったデータが存在するのかも含めて検討が進められます。

また乳がんや子宮頸がんの罹患率・死亡率の低下が思うように進まない点に関連して、久村和穂委員(金沢医科大学医学部腫瘍内科学学内講師)は「女性の立場に立った(例えばライフスタイルが非常にバラエティに富んでいる)予防策、治療法などを検討していくべき」と訴えています。



他方、1次予防(生活習慣の改善)に関しては「喫煙率、受動喫煙率などが十分に低下していない」「ハイリスク飲酒者が増加してしまっている」などの課題、2次予防(健診・検診の充実)に関しては「検診受診率は高まってきているが、目標値の5割に届いているがん種は少ない(男性の肺がんのみ)」「精密検査受診率についても向上してきてはいるが、目標値の9割には届いていない」などの課題が確認されています。

厚労省では「たばこ対策やアルコール対策をさらに進めていく」考えを強調しています。

また健診・検診に関しては「乳幼児についてがんの早期スクリーニングが極めて重要であり、検診の充実と、発見技術の向上の双方で進めていく必要がある」旨を中釜斉委員(国立がん研究センター理事長、日本癌学会理事長)が強調しています。

がん検診の現況(がん対策推進協議会4 201016)

HPVワクチンの情報を丁寧に提供し、希望者が「ワクチン接種を選択する機会」を提供

ところで、がんの予防に関しては「HPVワクチンの受診勧奨をどう考えるのか」という重要問題があります。

子宮頸がんの人口10万対の罹患率は14.1(我が国の人口が1億人と仮定すると年間1万4000人程度が罹患する)、死亡率が2.7(同じく年間2700人程度が亡くなる)で、死亡率は横ばいです。子宮頸がんの95%はヒトパリローマウイルス(HPV)への感染が原因と考えられ、諸外国では「ワクチン接種による予防」も行われています。

我が国でもHPVワクチンが薬事承認されていますが、過去に「副作用があるのではないか」との報道がなされ、現在、積極的な接種勧奨は行われていません。

しかし、「子宮頸がん予防のためにワクチンを接種する選択肢がある」ことを周知しなければ国民(とりわけ女性)の健康・生命を守ることはできないため、厚労省は今般、「わかりやすいリーフレット」を作成(従前のものを分かりやすく改訂)し、適切な情報提供を行うこととしています。厚労省健康局健康課予防接種室の林修一郎室長は「接種勧奨こそ行わないものの適切な情報提供を行い、希望者がワクチン接種の機会を逃すことのないように選択肢を提示する」旨を強調しています。

リーフレットでは、「子宮頸がんがどのような病気なのか」「子宮頸がんを予防するためにワクチンがあり、また検診が極めて重要であること」「ワクチンにはリスクもあること」「小学校6年生から高等学校1年生相当の女性は、希望すれば公費で(無料で)ワクチンを受けられること」などを丁寧に説明しています。

●HPVワクチンに関するリーフレットはこちら(概要版)こちら(詳細版)

子宮頸がん・HPVワクチンに関する分かりやすい簡易なリーフレットが用意されている(がん対策推進協議会5 201016)

子宮頸がん・HPVワクチンに関するリーフレットの詳細版も用意されている(がん対策推進協議会6 201016)



この点、羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)は「北欧などではHPVワクチンの有効性に関するエビデンスも出ているという。我が国ではワクチンの接種勧奨を行っていないが、10年後、20年後に『協議会や厚労省は何をしていたのか』と叱られる事態も起こりうる。十分に議論し、第4期計画などに接種勧奨を書き込むべきである」との考えを示しています。今後、どういった議論が行われるのか、こうした点にも注目が集まります。

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